進路方向を右に取る場合は「面舵(おもかじ)」、左に取る場合は「取舵(とりかじ)」と言う。単に「面舵」なら右に15度、「面舵一杯」となれば民間船では右に30度、軍艦では35度となり、「取舵」、「取舵一杯」ならその反対である。「一杯」という語源は、前述した剥離によってこれ以上の舵角には変角効果がなく、最大舵角であることからきている。
また、船は舵を戻しても惰力により舵を取った方向に動き続ける(大日本帝国海軍と海上自衛隊では「行き脚」という)ため、取った舵と反対方向に舵を切って、船体が振れるのを止める「当舵(あてかじ)」を行う(自動車でいうカウンターステアに似る)。角度は5度が普通だが軍艦の場合だと戦艦は7度、その他輸送船などは10度が多く用いられるように、船体重量によって異なる。“右に当舵”なら航海士は操舵手に対し「面舵に当て」と指示する。
これらの表現は航空機にも共通である。「当て舵」を参照 単独の舵を持たない船舶は、推進力を直接偏向することによって操船を行っている。 典拠管理データベース: 国立図書館
単独の舵を持たない船舶
船外機を動力に用いる船舶では、船外機の向き(スクリュープロペラを含む)を変えることによって船体の進行方向を変える。推進源であるスクリュープロペラ自体が変角出来るので舵が必要ない。アジマススラスター搭載船も同様である。
水上オートバイなどのウォータージェット推進をおこなう船舶は、低速航行用のスクリュープロペラを持つものを除いて舵を備えていない。
ホバークラフトは、前進推力を生むプロペラの後方に航空機に似た操舵機構を持ち、水中には舵を持たない。
タグボートは、機動性を持たせるため舵の機能を持った特殊なスクリュープロペラ(シュナイダープロペラまたはアジマススラスター)を装備しており、単独の舵を装備していない船が多い。
脚注^ 川崎、196-197頁
^ 欧州域で舵が生み出されなかったのは、当時の竜骨を備えた(欧州の)船体構造では中央に舵を取り付け難かったと考えられている。
^ 川崎、162-163頁
参考書籍
川崎豊彦『船舶の基本と仕組み』、秀和システム、2010年6月1日第1版第1刷発行、ISBN 9784798025940
関連項目
方向舵
船
船舶工学
ドイツ