2011年(平成23年)4月からは国土地理院では全地球型のシステム(全地球航法衛星システム)を、GNSS(Global Navigation Satellite System)と呼称することになった[8]。よく誤解されるが、GPSはあくまでも衛星測位システムの中の1つ(固有名詞)であり、一般の衛星測位システムそのものを指すものではない。また一般の航法衛星を指して「GPS衛星」と呼ぶことも誤用である。日本の政府文書や産業文書では、「測位衛星」と呼ばれている。
衛星航法のシステムを指す一般的な用語としては「航法衛星システム」"Navigation Satellite System" (NSS) が用いられることがある。英語圏では、その衛星を「航法衛星」"navigation satellite" と呼ぶ。日本では「衛星航法システム」"satellite navigation system" も使用される。
また、衛星システムとは、「人工衛星」(宇宙セグメント)および「地上系」(管制セグメント)からなるもので、利用者セグメントは含まれないのが通常である。そのため、「航法衛星システム」には、利用者セグメントが含まれず、インフラ側のシステムを指している。
これに対して、「衛星測位システム」には、利用者セグメントが含まれている。2000年代以降、インフラ側は政府や特定企業が構築することが多くなり、産業上の責任を明確にするため、「衛星システム」と「利用者セグメント」を区別することが重要になってきた。「衛星システム」と「利用者セグメント」を合わせたものが「衛星測位システム」である。 Global Navigation Satellite System (GNSS、全地球航法衛星システム) という用語が国際的に用いられている。 米国政府は、全地球航法衛星システム(A Global Navigation Satellite System of Systems)を特定地域向けの衛星系も含めた包括的システムと定義し[9]、さらに下記のように分類している: これは、QZSSが日本のGNSSである、とする日本の規定とも整合している(「地域衛星系」に属する)[要出典]。 国土地理院が定める公共測量に係る作業規程の準則においては、従来の「GPS測量」の用語に代えて、2011年4月からは「GNSS測量」の用語を使用するように改訂された[10][11]。 なお、Global を「全地球」よりも「全球」などと訳すべきとの異論が出ている[要出典]。その理由は、globe/global の本義が「球」であり、その意味で Global Surveyer など火星や月の衛星型測量機の名称にも使用されているからである[要出典]。 対象範囲による分類は、米国の国務省[12]や航空宇宙局(NASA)[13]による分類、中国や欧州による分類の2つがあり、全世界的には統一されていない。米国は、GNSSのリーダーシップをとる政策をかかげて、前述のとおり、GNSSを1つのシステム・オブ・システムズとよんでいる[14]。これに対して、中国や欧州は、GNSSとは、GPS・GLONASS・Galileo・BDS の4つとし、常に複数形を用いている[15][16]。 なお国際標準規格(ISO)は、GNSSは、Global Navigation Satellite System としており、複数形ではない。 GNSS を GPS・GLONASS・Galileo・BDS の4つとし、特定地域向けのシステムを「地域航法衛星システム」(RNSS) と呼ぶ立場からすると「日本の準天頂衛星システムは、GNSS ではない」ことになる。これにより、数多くの重要な国際文書や規定において、準天頂衛星システムが GNSS から除外されている[要出典]。日本国内の多くのサイトや技術資料においても、準天頂衛星システムを RNSS と記載しているものがある。 ここで、RNSS (地域航法衛星システム)という用語は、ITU の国際標準において、RNSS は RadioNavigation Satellite System と規定されており、この規定と矛盾している。また、航空分野も ICAO 条約に基づき、SBAS は GNSS の一部と位置づけられている。 インドのモディ首相は、2016年4月に航法衛星システムに関して IRNSS : Indian Regional Navigation Satellite System と呼んでいたものを NavIC : Navigation Indian Constellation と変更すると発表した[17]。つまり「インドの RNSS」 と呼んでいたのを「インドの Constellation」と変更した。しかし、ISRO[18]等では IRNSS という名称を使用している。 日本では、産業輸出団体が問合せを受け、日本の航法衛星を Regional Navigation Satellite System と呼ばずに米国務省と同一の表現とし、既存の文書における記載を修正するのがよいことの指摘があった。この動向は、2018年にワッセナー・アレンジメントにおけるGNSSに関する文書案が、電子・電機業界に回覧されたことに端を発したもので、2018年5月以降の関連業界の会合で問題となり、GNSSに関する文書案に反対がある[19][要ページ番号]。 全地球衛星系では、地球上空の中軌道すなわち地上高度2万 km前後の赤道面に対して55度から65度ほどの傾斜を持ったほぼ円形の3つや6つなどの軌道状に等間隔になるよう衛星が配置されている[注 3]。
全地球航法衛星システム
全地球を利用可能範囲とする衛星系を「全地球衛星系」(Global Constellation)
特定地域向けに限定したコンステレーションを持つ衛星系を「地域衛星系」(Regional Constellation)
衛星を用いて航法を補強するシステムを「衛星型補強系」(Satellite-Based Augmentation)
分類「GNSSの定義をめぐる国際論争」も参照
対象範囲による分類
軌道による分類
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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