航空母艦
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飛行の障害物となるような突出物は極力排除され、日本の空母の場合、探照灯などは全て電動昇降式(隠顕式)として、そのレセスの上には蓋が設けられた[15]

またこの方針を追求した結果、最初期には、艦橋構造物を廃止して昇降式の小型指揮所にとどめ、煙突も廃止して艦尾排気とした平甲板型も試みられたが、操艦や飛行甲板の指揮などの観点からは不利が指摘された。このことから、後には、小型艦では平甲板型とする一方、大型艦では、煙突や艦橋をまとめて舷側に寄せた上部構造物(アイランド)を設ける島型が常識となった。また小型艦でも、小さい艦橋構造物を飛行甲板の側方に設けるのが普通となった[16][注 3]

なお、1920年代のイギリス海軍の「フューリアス」(大改装後)と準同型艦(グローリアス級)や、大日本帝国海軍の「赤城」と「加賀」は、両国の従来空母と比較しても大型艦であったこともから、複数の飛行甲板を上下に積み重ねる多段式が試みられた。しかしこの方式では、実際には下部飛行甲板での航空機の運用は困難であり、また上部飛行甲板は長さが短くなって小型空母と同程度の性能まで低下してしまうという問題があり、実用性が低かった。アメリカ海軍のレキシントン級空母や、フランス共和国の「ベアルン」は当初から広い一枚甲板を採用しており、後にイギリスや日本も航空機の大型化に伴い一段甲板に統一された[16]
発艦装置[ソースを編集]
カタパルト[ソースを編集]カタパルトを使い発艦するスーパーホーネット(奥)、ジェット・ブラスト・ディフレクターが起立したスタートポイントで待機するスーパーホーネット(手前)詳細は「カタパルト」を参照

航空母艦が実用化された直後は、まだ航空機が軽かったため、艦上機自身が飛行甲板上を滑走して得た力と、母艦が風上に突進することで生じる力とをあわせた合成風力だけでも、十分に発艦することができた。[17]その後、第二次世界大戦期になると、航空機の重量が増して、発艦を補助する手段が求められるようになったため、カタパルトが用いられるようになった[18]

カタパルトは、1915年にアメリカ海軍の装甲巡洋艦ノースカロライナ」に搭載されたのを皮切りに、まず水上戦闘艦に搭載された水上機の発進のために用いられていたが[19]1920年代中盤には航空母艦での採用も試みられるようになっており、イギリス海軍では2代目「アーク・ロイヤル」、アメリカ海軍では「レンジャー」より装備されてその実用性を立証した。一方、大日本帝国海軍でも艦発促進装置として開発を進め、空母の多くに後日装備余地を確保していたものの、装備化には至らなかった[20]

従来のカタパルトは油圧式が主流だったが、出力向上に限度があり、航空機の大型化に対応できるような強力なものは極めて大掛かりで構造複雑なものとなった。この問題に対して、イギリスでは蒸気式カタパルトを開発して「アーク・ロイヤル」で装備化した。またその技術提供を受けたアメリカ海軍でもフォレスタル級より装備化し、既存の艦でも逐次に換装した[21]。また艦上機のジェット化が進むと、その排気による甲板への影響が無視できなくなったことから、カタパルトやスキージャンプなどのスタートポイント直後には、起倒式のスクリーン(ジェット・ブラスト・ディフレクター)が設置されるようになった[15]

その後、21世紀に入ると、リニアモーターを用いた電磁式カタパルトが開発され、アメリカ海軍ではジェラルド・R・フォード級から装備化された[22]。これは出力的には従来の蒸気式カタパルトと同程度ながら、機体の特性にあわせて加速度を調整できることから機体への荷重を軽減でき、また小型軽量化および整備性の向上も実現された[23]

なお、初期のカタパルトでは、シャトルと航空機の接続のためにブライドル・ワイヤーと呼ばれる鋼索を使用していた。これは機体の胴体下面などに設置されたフックと、カタパルトのシャトルとをワイヤーロープでつなぎ、機体を引っ張って射出する方式である。このワイヤーは射出と同時に機体から分離するため、当初は発艦ごとの使い捨てだったが、のちには回収して再利用することになった。そのために、カタパルト延長線上の飛行甲板前縁斜め下方に角のように突き出した構造(ホーン)が設けられ、ブライドル・レトリーバーと呼ばれた。しかし後には、艦上機の主脚にカタパルトのシャトルと直接接続できる機構を備えるようになり、ブライドル・ワイヤーが不要となったため、このような新世代機が増えるにつれて、ブライドル・レトリーバーも撤去されていった[24]
スキージャンプ[ソースを編集]カヴール」のスキージャンプから発艦するハリアーIIヴィクラント」のスキージャンプから発艦するMiG-29K詳細は「スキージャンプ (航空)」を参照

1960年代より、イギリスのホーカー・シドレー ハリアーを端緒として、固定翼機としての垂直離着陸機(VTOL機)が登場しはじめた。


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