航空機エンジン
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レシプロエンジンディーゼルエンジンを搭載したダイアモンド DA40(英語版)

ピストン機関を利用したエンジン。基本的には自動車用などと共通し、個人レベルでも製作できることから、動力付き航空機の誕生時から使用されてきた。

多くは回転軸にプロペラが取り付けられるが、O-300のように減速ギアボックスを介するエンジンも存在する。

第二次世界大戦中には軍用機向けとして開発が進み飛躍的に発展、2,000馬力超のエンジンが実用化され、3,500馬力を発揮するエンジンまで出現し[2]、航空機に搭載できる小型軽量な過給機インタークーラー水メタノール噴射装置などの補機類も多数開発された。

第二次世界大戦終結後は、ジェットエンジンの発達とターボプロップエンジンの小型化に加え、音速を超えると推力が著しく低下するので、プロペラ機は時速750km程度が限界[3]であることから、20世紀後半以降は150-300馬力の軽飛行機向けが中心である。このため多数存在したレシプロエンジンのメーカーは廃業や統合が相次いだ。戦後の新規参入として1980年代にポルシェ911のエンジンをベースにしたPFM3200を販売したが、参入時期が小型機市場の停滞期に重なり、80基あまりを製造したのみで1991年に撤退、これ以降はライカミング・エンジンズコンチネンタル・モータースがシェアを二分している。

軽量スポーツ航空機 (light-sport aircraft (LSA)) などの軽量機向けとしてロータックスが80-100馬力の軽量エンジンを生産している。超軽量動力機モーターグライダーなどは100馬力未満で十分なため、ロータックスのほか、SOLO社 (de) やフレッシュブリーズ社 (Fresh Breeze) などの専門メーカーが、10-50馬力の小型エンジンを製造している。無人航空機用としては斎藤製作所など模型航空機用のエンジンメーカーの製品が利用されている。

アメリカではエクスペリメンタル・カテゴリーで登録すると型式認定を受けていないエンジンでも使用出来ることから、ホームビルト機の愛好家は信頼性と性能が高く安価で部品の流通量も多い日本車のエンジンを流用しており、トランスミッションFADECなど航空機へ搭載するためのパーツを販売する会社や、自社で改造したエンジンを完成品として販売するメーカーも存在する[4]

初期にはロータリー式の星形が使われていたが、次第に空冷では星型液冷ではV型が主流となった。現代では軽量で振動の少ない空冷の水平対向が主流である。倒立V型など特定機種(戦闘機)にとってメリットが大きい形式も存在する。少数ながら、ヴァンケルロータリーエンジンを搭載したモーターグライダーが存在する。

点火装置は信頼性が高く、バッテリーが不用なマグネトー式が主流である。エンジンオイルの循環方法は、ごく一部を除き、重力加速の影響が少ないドライサンプを使う。

燃料は航空用ガソリンを使用するガソリンエンジンが主流であるが、より安価なジェット燃料 (JET-A1) を使用する航空用ディーゼルエンジン(英語版)[5]も存在する。また、代替燃料の研究も行われている。自動車エンジンでは通常のガソリンが利用できるため維持費も安くなる[4]

過給器(ターボチャージャースーパーチャージャー)の有無、ガソリンかディーゼルにかかわらず操縦士整備士の資格は「ピストン」に分類される。なお、ピストンとなっているがヴァンケルロータリーエンジンも含まれる。
ジェットエンジン

操縦士や整備士の資格では、圧縮にタービンで駆動する圧縮機の回転を使うもの(ターボジェットエンジンターボファンエンジンターボプロップエンジンターボシャフトエンジン)は『タービン』に分類される。詳細は「ジェットエンジン」を参照
その他空中蒸気運搬車が飛ぶ様子を仮想して描いた、エリアル・トランジット・カンパニー (Aerial Transit Company) の1843年の広告イラストレーション。描いたのは発明家にして同社の共同経営者の一人でもあるフレデリック・マリオット

現在の航空法では航空機のエンジンはレシプロとタービンのみが想定され、これ以外の動力について法的な区分は明確にされていない。飛行させる際には実験機扱いとなり、試験飛行等の許可で個別に審査される。
蒸気機関

世界初の動力飛行は、アンリ・ジファールが開発して1852年9月24日に初飛行を果たした軟式飛行船で、3馬力の蒸気エンジンを搭載していた。

飛行機の黎明期には内燃機関の性能が低く、既に実用化されていた蒸気機関の使用が検討された。しかし、内燃機関の性能が向上すると、パワーウェイトレシオがより優れている内燃機関が選択され、蒸気機関は用いられなくなった。飛行機への採用例は、ジョン・ストリングフェローウィリアム・ヘンソンによる空中蒸気運搬車(英語版) (aerial steam carriage) (エリアルスチームキャリッジ)や、エアロドロームの無人実験機など、数例しかない。
ラムジェット

ラムジェットエンジンはターボジェットに比べ構造が単純で軽量であり超音速での効率が高い利点があるが、静止状態から始動できない(単独で離陸できない)ため補助用や他のエンジンと組み合わせた統合型の実験が行われている。
パルスジェット

パルスジェットは構造が単純なため量産のハードルが低かったが、性能が高度に影響されやすいなどの問題から実験のみで終了した。

構造が単純で市販レベルの材料でも制作できるため、個人の趣味や原理を学ぶための教材として製作されている。
ロケット

ロケットエンジンを利用する飛行機である「ロケット飛行機」は、航空機の黎明期に存在したが、ジェットエンジンに置き換えられた。

離陸時の補助として使うJATO用として一部に使われていた。
原子力

原子力エンジンを動力源とする飛行機は「原子力飛行機」と呼ばれ、アメリカ合衆国ソビエト連邦で研究されていた。

X-6計画では、機内に小型原子炉を搭載し、取り出した熱で原子力ターボジェットエンジン4基を駆動し、推進する予定であった。また、ラムジェットエンジンの熱源に原子力を用いる計画も存在した。

ソ連の流れを汲むロシアは、原子力推進巡航ミサイル無人機)を開発中である。
電動機

プロペラは電動機で回転させることも可能であるため、内燃機関の代わりに電動機を使用する電動航空機の実験が行われている。

モーターグライダーには電動機でプロペラを回す機種が存在する(免許は内燃機関と共通)。超軽量動力機にも電動機を搭載することがある。


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