航空事故
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航空事故を専門に追跡する planecrashinfo.com が1950年から2004年までに起った民間航空事故2147件を元に作った統計によると[13]、事故原因の内訳は以下の通りとなっている。

37% - 操縦ミス

33% - 原因不明

13% - 機械的故障

7% - 天候

5% - 破壊行為(爆破ハイジャック撃墜など)

4% - 操縦以外の人為的ミス(不適切な航空管制・不適切な荷積・不適切な機体整備(英語版)、燃料の汚濁、不適切な言語(言葉の選択、表現)、意思疎通の不良、操縦士間の人間関係の不良など)

1% - その他

またボーイングが行っている航空事故の継続調査によると[14]1996年から2005年までに起こった民間航空機全損事故183件のうち、原因が判明している134件についての内訳は以下の通りとなっている。

55% - 操縦ミス

17% - 機械的故障

13% - 天候

7% - その他

5% - 不適切な航空管制

3% - 不適切な機体整備

なお主要原因を経年で分析すると、「操縦ミス」は1988年 - 1997年期には70%もあり、過去20年間に着実に改善されてきてはいるが、依然として航空事故原因のほぼ半数を占めている。@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .mod-gallery{width:100%!important}}.mw-parser-output .mod-gallery{display:table}.mw-parser-output .mod-gallery-default{background:transparent;margin-top:.3em}.mw-parser-output .mod-gallery-center{margin-left:auto;margin-right:auto}.mw-parser-output .mod-gallery-left{float:left;margin-right:1em}.mw-parser-output .mod-gallery-right{float:right}.mw-parser-output .mod-gallery-none{float:none}.mw-parser-output .mod-gallery-collapsible{width:100%}.mw-parser-output .mod-gallery .title,.mw-parser-output .mod-gallery .main,.mw-parser-output .mod-gallery .footer{display:table-row}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div{display:table-cell;text-align:center;font-weight:bold}.mw-parser-output .mod-gallery .main>div{display:table-cell}.mw-parser-output .mod-gallery .gallery{line-height:1.35em}.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div{display:table-cell;text-align:right;font-size:80%;line-height:1em}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div *,.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div *{overflow:visible}.mw-parser-output .mod-gallery .gallerybox img{background:none!important}.mw-parser-output .mod-gallery .bordered-images .thumb img{outline:solid #eaecf0 1px;border:none}.mw-parser-output .mod-gallery .whitebg .thumb{background:#fff!important}

機械的故障のため前輪が横向きに固定されてしまい、緊急着陸を決行するエアバスA320(詳細は「ジェットブルー航空292便緊急着陸事故」を参照)

部品脱落のため燃料タンクが破損し機体火災を起こしたボーイング737-800(詳細は「チャイナエアライン120便炎上事故」を参照)

製造段階から部品が欠落していたため、車輪が出なくなり胴体着陸を余儀なくされたボンバルディア Q400(詳細は「全日空機高知空港胴体着陸事故」を参照)

事故調査AA191便墜落事故で残骸を調査する事故調査官NTSBによるTWA800便墜落事故では海底から機体残骸破片の大部分を回収して機体を組み立て直した

航空機事故の再発防止のためには、徹底した原因究明が欠かせない。事故によっては、数年の歳月と巨額の資金を費やしてまで「なぜ」が追及される。

中立な立場からの事故調査を徹底するため、多くの国家では専門の事故調査機関を設置している。

調査官は残骸の散乱した現場を歩き回り、証拠品を回収することから『Tin Kincer』とも呼ばれる[15]

国際民間航空機関(ICAO)ではシカゴ条約の批准国に対し、事故調査は再発防止を目的としており明らかな犯罪の証拠を除き事故調査の結果を刑事捜査や裁判に利用することを禁じている[16]
アメリカ合衆国

そうした中でもアメリカ国家運輸安全委員会 (NTSB) は、長年の経験と深い専門知識から航空事故調査の権威として位置づけられており、各国の事故調査や航空行政に対しても大きな影響力を持つ存在となっている。

NTSBによる事故の調査結果は、その信頼性を高めるため報告書として一般公開されることが原則となっており、しかもこれを民事訴訟で証拠として採用することは法律で禁じられている。理由は当事者からの証言を得やすくするためであり、また、NTSBを法廷闘争に巻き込まないようにするためでもある。ただし、事故の分析、原因、勧告などを除いた「事実背景」については証拠採用が認められている。なお刑事訴訟での使用については特に規定がなく、過去には証拠採用された判例もある。

そもそもアメリカでは「故意の破壊行為」またはそれに近い「認識ある過失」がない限り、事故機の操縦や整備に関わっていた個人に対しては刑事責任民事責任を問わないことが原則となっている。これも(自己負罪拒否特権を外すことにより)当事者からの証言を得やすくするためである。

ただし、事故を起こした航空会社が司法による犯罪捜査から免責されているわけではない。また、個人に刑事責任を問わないのは雇用者である航空会社が個人の責任と補償を請け負うことがそもそもの前提になっているからであり、原因究明と再発防止こそが至上課題という姿勢が明確に現れている。また個人に対して刑事責任が問われないといっても、問題を起こした個人が当該職務から外されることはありうる。
日本

日本では、1974年から国土交通省審議会のひとつである航空・鉄道事故調査委員会(事故調)が、事故原因の究明や事故防止に必要な研究を行ってきたが、2008年10月1日に旧来の海難審判庁の船舶事故の原因究明事務と統合されて、新たに国土交通省の外局である運輸安全委員会が発足した。

その目的は、航空事故等の原因並びに航空事故に伴い発生した被害の原因を究明するための調査を適確に行うとともに、これらの調査の結果に基づき国土交通大臣又は原因関係者に対し必要な施策又は措置の実施を求めることである(運輸安全委員会設置法第1条)。

運輸安全委員会は調査官を派遣して、航空機の使用者・搭乗員・事故における救助者など航空事故における関係者から事情を聴取・質問し、関係物件等の留置・保全、立ち入りの禁止などの措置をとることができる(運輸安全委員会設置法13条)。運輸安全委員会の調査と、警察官・検察官による捜査は、通常同時並行的に行われるが、法制度上はそれぞれ目的を異にする独立の手続である。

刑事責任を追及するための事故調査を主導するのは警察検察であり、調査対象は事故機の操縦や整備に関わっていた個人が、業務上過失致死罪業務上過失傷害罪重過失致死傷罪など、刑事処罰の対象になるか否かという点に重点を置くため、当事者や関係者の黙秘権が行使されやすい。日本はICAO批准国でありながら、警察主導の捜査や事故報告書の目的外使用などにより、事故原因の究明や再発防止に支障来していると指摘されている[16]

これに対し、運輸安全委員会の調査は、事故の再発防止などに重点を置く行政手続であるため、調査官の処分権限は「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」と法律で明記されている(運輸安全委員会設置法第13条5項)。

航空事故調査には欠かせないフライトデータレコーダー(飛行状況記録機、FDR)と コックピットボイスレコーダー(操縦室音声記録機、CVR)は、日本では1966年全日空羽田沖墜落事故の際に、経路追跡などができず原因不明となったことを教訓に、全ての旅客機に搭載が義務づけられた。
航空事故の再現実験1984年12月1日NASAドライデン飛行研究センターによるボーイング720を使った制御された衝撃実演ボーイング720の座席に置かれたダミー人形

政府専門機関、軍や航空機製造元が行う航空機事故の再現検証は物理的範囲で材質と機体など機器構造に機体内部の環境などといった限定範囲か局部的で、大型旅客機実機を用いて地上か空中で行う場合は機体から旅客脱出の実地、空港の環境、飛行特性や気象条件などのデータ収集を中心に行うことが多い。

人為的操縦ミスを飛行中など検証する研究についてここでは割愛し[注釈 1]、飛行運用から事故を検証する問題点を幾つか挙げると事故経過は気象状況など千差万別であること、パイロットや調査員などスタッフの安全条件と自動操縦飛行には法律の制限があること、廃棄前提であっても証明書類などを完備した飛行許可を取得した機体という条件のため型落ち旧式中古機でも高価なこと、離着陸などを想定した検証の場合は機体サイズによっては広い場所を確保する必要があり多角的な観察と測定できる環境範囲空間が必須など、多数の制約から自動車の衝突安全テストのような実験が難しいため、発生した重大事故の状況や残骸を調査し内容を分析する方法が主流である。

日本の場合、前項の事故調査に加えて人的被害や物損に及ばなかった危険事態を事故に準じた扱いの「重大なインシデント」に指定して状況の報告を義務付け、調査と分析を行っている。

1954年4月コメット連続墜落事故ではイギリス政府直轄の調査委員会は回収した残骸から原因を推定し実際に飛行させるかわりに巨大な水槽を用いた画期的な構造検証実験許可を行った。これは事故原因究明の再現実験に留まらず様々な分野の学術研究から注目された。


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