臼田宇宙空間観測所
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直径10m 開口能率 64%、22GHz 受信機を搭載したカセグレイン方式のパラボラアンテナで、銀河中心の超長基線電波干渉法観測に用いられている[7]。かつては、電波天文衛星はるかの追跡を目的として建設・運用されていた。Ku帯(15GHz, 40GHz)[8]での送受信能力をもつ[7]。また、はるかプロジェクトが2005年11月に終了した後は、ASTRO-Gプロジェクトでの使用を目的として、Ka帯送受信設備としての改修整備が検討されていたが、同プロジェクトは中止された。
54mパラボラアンテナ

老朽化した64mアンテナの後継施設で[9]、長野県佐久市前山字立科1905-1にて2021年4月から定常運用開始[10]。名称は美笹深宇宙探査用地上局(Misasa Deep Space Station)で、より高度な運用を目指し2024年3月までの予定で、深宇宙探査用地上局を開発・整備するプロジェクト(GREAT2:GRound station for deep space Exploration And Telecommunication Phase2)を運用中。有効口径54mで64mアンテナと同じ能力を得るため、構造強化や野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡の様に主鏡面裏のカバーを取り付けての温度管理などが行われる。総重量では2,200トンと64mアンテナの1,800トン以上となる[11]はやぶさ2との通信やみおとの通信にも使用されている。
主要技術仕様(予定)


有効口径:54m

アンテナ方式:鏡面修正カセグレインアンテナ

X帯送信利得:69.62dBi以上

X帯送信電力:20kW以上(EIRPを142.62dBm以上とする)

周波数帯

探査機追跡管制用/For tracking and controlling explorers
X帯送信(7,145MHz-7,235MHz)/X-band transmission(7,145MHz-7,235MHz)X帯受信(8,400MHz-8,500MHz)/X-band reception(8,400MHz-8,500MHz)Ka帯受信(31,800MHz-32,300MHz)/Ka-band reception(31,800MHz-32,300MHz)

測地VLBI用/For geodetic VLBI
X帯受信(8,200MHz-8,700MHz)/X-band reception(8,200MHz-8,700MHz)

受信性能

X帯G/T:53.80dB/K(53.35dB/K)以上@仰角15°-80°
但し、最大瞬間風速10m/sec、日照条件下における性能低下は0.2dB以下であること。

Ka帯G/T:59.63dB/K(59.33dB/K)以上@仰角15°-80°
但し、最大瞬間風速3m/sec、日照条件下においても低下は3dB以下であること。

国際協力

ボイジャー2号天王星海王星探査時において、天王星が北半球側での観測に適していたため、ボイジャー2号との通信の一部を受け持ち[12]、海王星のフライバイ観測時にも運用支援を行っている[2]。現在でも、要請があれば惑星間を飛行する米国・欧州保有の探査機の通信を担うこともある[注 3]。また、同じくして日本の探査機も、米国のディープスペースネットワーク(DSN)などを通じて管制制御を行っている。
周辺地区と見学

長野県佐久市臼田を設営地としたのは、周囲が山に囲まれ電波雑音レベルが低い点と、当時計画中であった北陸新幹線上信越自動車道、建設中の中部横断自動車道などのジャンクションがあり、交通の便が良い点からである。

見学は昼間随時可能であり、JAXAの資料が展示されている展示室などがある。また、広い敷地を利用して、アンテナから20m程の場所を基点に55億分の1の太陽系縮尺モデル(太陽-木星)を展示しており、実際の太陽と惑星の距離感とスケール感を実感できるよう工夫されている。
その他

国立天文台及び国土地理院等において進められている、日本全土を対象とするVLBI観測計画の一部を担うことになった[注 4]

JAXAサイト内で散見される「うすださん」とは、当観測所の64mパラボラアンテナのことを指している(これに対して内之浦宇宙空間観測所の34mアンテナは「うっちーさん」と呼ばれる。)。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 水星探査計画(打ち上げから計画終了まで数年を要する)と次期月探査計画が同時に実行する可能性があることや、その後に予定されている木星探査計画との兼ね合いも考慮すれば、長期間に渡る複数の惑星探査機の管制を行わなければならないということで、既存設備に新たな設備を付加する必要はあるとされている。
^ 海外に別の通信施設を建設することで、通信可能時間の延長が可能であり、実際に計画が進んでいる。また、各種衛星群に観測機器を複数搭載することによる観測データの増大とその送受信の必要性に伴い、受信地点を増やすことによる信頼性の確保は必須となっている。
^ 実績としては、欧州の探査機ユリシーズ
^ 深宇宙通信では、惑星探査機(「のぞみ」や「はやぶさ」および「あかつき」など)のトラッキングデータの受信が主たる任務であり、これは1日数十分の交信で十分である。しかし、各探査機が観測を開始する目標付近では観測装置の観測データの受信量が一気に増えることになるため、このような場合には活用できない。しかしながら「かぐや」との通信では、月が観測できる時間だけのため、余った時間を活用してVLBI観測も行った。

出典^ 臼田宇宙空間観測所水素メーザ標準周波数時刻システム 宇宙科学研究所報告 第110号 2000年8月
^ a b c “JAXA's No.039”. JAXA (2011年7月1日). 2018年11月5日閲覧。
^Haya2NOW
^小惑星探査機はやぶさ2とその通信 航空と宇宙(201601) (PDF)
^ 【JAXA】小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会のライブ中継(19/2/20)
^日本通信機 冷却低雑音増幅器(LNA)
^ a b 臼田64mを利用した電波天文観測の現状 Jaxa 第14回 宇宙科学シンポジウム資料 (PDF)
^ 臼田宇宙空間観測所
^ “次の深宇宙探査の時代に向けて”. ファン!ファン!JAXA!. 宇宙航空研究開発機構 (2016年11月). 2019年7月24日閲覧。
^ 美笹深宇宙探査用地上局の概要 Jaxa. 令和3年8月15日閲覧
^ “深宇宙探査用基地局のすごさ” (PDF). jaxa. 2017年11月10日閲覧。
^ 天文年鑑 -1988年版(昭和63年版)-、誠文堂新光社, 1987. 国立天文台(編),理科年表 -1988年版(昭和63年版)-, 丸善, 1987..他

参考資料

アメリカ航空宇宙局

ヨーロッパ宇宙機関

ロシア連邦宇宙局

国立天文台(編), 理科年表, 丸善

天文年鑑, 誠文堂新光社

V.D.バジャー, M.G.オルソン(共著), 戸田盛和, 田上由起子(共訳), 力学 -新しい視点にたって -, 培風館

別冊「サイエンス」第76号, ボイジャーの惑星探査, 日経サイエンス

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臼田宇宙空間観測所により通信を行った探査機・衛星群


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