チューブレスは2006年以降に普及しつつある第3のタイプで、およそクリンチャーからチューブを排したものと言ってよい。クリンチャーと異なる点として、空気が漏れないようにリムの裏側にはスポーク穴が一切無く、バルブはリムに直接装着され密封されている。チューブレスタイヤはクリンチャータイヤと見た目がよく似てはいるが、一番内側には空気を保持するためチューブに相当するブチルゴムの層が追加されており、ビード部分がより密閉性の高い形状になっている。しかし基本的な構造はクリンチャーと大差ないため、多くのチューブレス用ホイールは、バルブを外し中にチューブを入れてクリンチャーとして使用することが出来る(このタイプのホイールは2WAY-FITと呼ばれる)。
チューブレスタイヤの最大のメリットは対パンク性能の高さである。具体的には、構造上リム打ちパンクは発生しない。異物が刺さってパンクした場合にも、クリンチャーのチューブのように大きな穴や裂け目が開きにくく急激な減圧が起こらないので、数kmはそのまま走行することが出来る。タイヤの内側はチューブと同じ素材なので、パッチを直接貼ってパンク修理することも可能。またチューブが無いことによって、わずかだが走行抵抗が小さくなる。デメリットとしては、製品のラインナップがまだ少ないためにホイール、タイヤともに選択肢が少ない。チューブレス対応ホイールは一般的に高価である。ビードが硬くタイヤの脱着に多少慣れが必要である点が挙げられる。
リム打ちパンクが起こらないという特性から、クリンチャータイヤでは不可能だった低圧での走行が可能になり、このメリットを活かせるマウンテンバイク競技においてシェアを広げ、主流になりつつある。低圧にできるチューブレスタイヤでは従来のクリンチャータイヤよりグリップが向上する。近年、ロードバイク用のチューブレスタイヤも市販されるようになった。2010年8月時点では対応ホイールはシマノ、カンパニョーロ、フルクラム、ケインクリーク
、コリマ、エークラスから、タイヤはIRCとハッチンソン[4]から発売されている。自転車用のタイヤは、折り畳み自転車で使われる6インチサイズから36インチサイズまで40種類以上存在する。
タイヤサイズは外径とタイヤ幅で表記される。たとえば26×1 3/8と表記されたタイヤは英国規格の26インチサイズでタイヤ幅が1 3/8インチ(約35mm)となる。26インチサイズとはタイヤ外径が26インチということではなく、呼び径である。HEタイヤはタイヤ幅が小数点表記される。たとえば、26×1.75というタイヤは、HE規格の26インチサイズ(英国規格より外径で40mmほど小さい)でタイヤ幅が1.75インチということになる。
分数表記、小数表記での区別は日本国内で見かける主要な製品だけに適用される。欧州の一部(ドイツ、オランダ)では小数点表記が英国規格、分数表記が米国規格である。 26インチから28インチまでの フランス規格はタイヤ外径をミリメートルで表示し[注 1]、対応するタイヤの太さを示す記号A・B・Cという添え字をつけて表記する[5]。添え字は分類の都合でつけられるもので、概ね「1 3/8がAサイズ、1 1/2がBサイズ、1 3/4がCサイズ[注 2]」とされているのだが、例外的にAサイズが何ミリという決まりは外形ごとに異なる例も幾つかある[6]。イギリス式のインチ表示と同じく先にタイヤ外径を決めてあるので表記A→B→Cと太くなるにつれてリムの外径およびタイヤビード径が小さくなる。たとえば28インチ≒711.2ミリメートルすなわち(28×25ミリメートルで)外形700の場合を例にすると、(1 3/8インチ相当)Aサイズのビード径642ミリメートル、(1 1/2インチ相当)Bサイズのビード径635ミリメートル、(1 3/4あるいは1 5/8インチ相当)Cサイズのビード径622ミリメートルというぐあいになっている[5]。というのが基本的な考え方である。しかし(NaCoR 1988;鈴木邦友 1989, p. 45)の表によれば、欧州諸国においても700のAサイズの使用例は皆無であり、同Bサイズの使用例も一部の国を除いてほとんどなくなっている。そしてCサイズ用リムに対して細いタイヤや太いタイヤが使われるようになったこともあり、さらに太さの数字を添えて表記する。たとえば700×23C(700C-23と表記することもある)という表示は700Cサイズ(リムの嵌合部径が622mm)でタイヤ幅23mmということになる。 自転車用タイヤの規格は乱立しているため、どのタイヤがどのリムに適合するか、表記だけで判別することが難しくなった。そこでクリンチャータイヤにおいてはETRTO (エトルト、European Tyre and Rim Technical Organisation
フランス規格
規格対比(鈴木邦友 1989)インチ表示フランス式国際式
(ETRTO)ビード
径
26×1 3/8650A590590
26×1 1/2650B584584
26×1 3/4650C571571
27×1 1/4none630630
28×1 3/8700A642642
28×1 1/2700B635635
28×1 3/4
(28×1 5/8)700C622622
ETRTO
ETRTO表記ではタイヤ幅を前に、タイヤのビード径(リムにはまり込む部分の直径)をハイフンで区切って表記する。前述のWO 26×1 3/8はETRTOでは37-590、26インチHE 26×1.75は47-559、700×23cは23-622となる。
自転車のタイヤを交換するとき、ETRTO表記が同じであれば交換することが可能である。製造メーカーによっては、ビード径の表記が1mm程度異なる場合も(16インチHEでの305と306)装着可能である場合も多い。ただし、リムの形状がHEかWOかで引っ掛け部の形状が異なるので注意は必要である。詳細は「ISO 5775(英語版、スペイン語版、朝鮮語版、ヨルバ語版)」を参照
トレッドパターンブロックタイヤセミスリックタイヤ (KENDA)
路面に直接触れるタイヤの表層部分には濡れていたり、ぬかるんでいる路面とタイヤの間の水分を排出して滑りにくくするための溝がある。この溝をトレッドと呼び、この部分の突起や溝の有無で以下のように分類できる。
ブロックタイヤ
表面に大きめの突起が多数ついているゴツゴツした見た目のタイヤ。オフロード用であり、主にマウンテンバイクに使用する。土や石のコースでは圧倒的なグリップを発揮する。しかし表面の凸凹によって転がり抵抗が大きくなり、ペダリングのエネルギーが奪われて漕ぎが重くなる。また、スリックタイヤと比較したとき、ブロックの重量のためタイヤが重くなる。
スリックタイヤ
表面の凹凸が無いなめらかなタイヤ。多少の模様がついているものもスリックタイヤに含む。晴れている時の舗装路用で、主にロードバイクやクロスバイクに見られる。転がり抵抗が小さいため、漕ぎが軽い。溝がないため、雨天での使用は非常に危険であることに留意されたい。
セミスリックタイヤ
センタースリックタイヤともいう。ブロックとスリックの中間のタイヤ。オフロードと舗装路両方を走ることを想定している。主にマウンテンバイクに使用する。トレッド中央はスリックかごく浅いパターンで舗装路直進時の転がり抵抗を抑え、サイドはブロックタイヤ同様に突起が配置されており、悪路でのコーナリングに対応している。デュアルパーパスタイヤ(トレールタイヤ)とも呼ばれる。
チューブチューブ
チューブはクリンチャータイヤ特有の部品で、タイヤ内の空気を保持するための浮き輪と同じドーナッツ状のゴム風船のようなものである。
チューブにはバルブがあり、弁機構により空気が充填できる。チューブはブチルゴム、ラテックス、ポリウレタンなどで作られる。チューブはタイヤ側とリム側に接しているが、リム側のスポークなどの突起物で穴が開きパンクを起こす場合がある。これを防ぐため、リム側にはリムテープ(「リムフラップ」「ふんどし」とも呼ばれる)を張りパンクを防止する。
空気保持力が高く安価で耐寒性も高いブチルゴムが、材質としてもっとも普及しているが、競技用自転車では、より軽量なラテックスゴムが用いられることも多く、ポリウレタン樹脂も用いられる。これらのチューブは、軽量でしなやかだが空気が抜けやすく、空気圧のこまめな点検が必要である。また、耐久性もブチルゴムに劣る。
チューブは自転車の走行で磨り減る消耗品である。タイヤが転がると接地面でタイヤが変形し、内部のチューブとタイヤとがこすれあう。タイヤが転がるとタイヤ内面がチューブを削り、薄くなることで空気漏れを起こしたりパンクを起こすのである。これを防ぐために、タイヤ内面にタルクの粉末(タルカムパウダー)を塗りすべりをよくすることもある。空気圧が低ければタイヤの変形量が大きくなりチューブの減りが早くなる。