自由貿易協定
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この中に日英包括的経済連携協定も含まれており、イギリスとEUとの協定も通報された。しかし、2020年1月1日に発効した日米貿易協定、2020年8月1日に発効した日本・ASEAN包括的経済連携協定第一改正議定書、2022年1月1日に発効した地域的な包括的経済連携協定 (RCEP)は、2024年5月7日現在、通報されていない[7]

GATT第24条:338

GATS第5条:208

WTOの授権条項:63

また、2020年11月27日の参議院本会議において、日英包括的経済連携協定の趣旨説明が行われた際の質疑で、立憲民主・社民の白眞勲議員から質問に対して茂木敏充外務大臣は、「WTOのホームページでは、現在、五十四の自由貿易協定がいまだに通報されていないことが公表されており、この中には、香港ASEAN貿易協定やオーストラリア・インドネシア貿易協定も含まれております。」[8]と答弁している。このWTOのHPとは、2020年9月26日のWTO地域貿易委員会の文書[9][10]であるが、このリストには日米貿易協定は含まれていない。
FTAとEPAの違い

「自由貿易協定」 (Free Trade Agreement, FTA) は、特定の国や地域とのあいだでかかる関税や企業への規制を取り払い、物品やサービスの流通を自由に行えるようにする取り決めのこと[11]。通商政策の基本ともいわれる[12]

経済連携協定」 (Economic Partnership Agreement, EPA) は、物品やサービスの流通のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間での親密な関係強化を目指す協定[13][12]

地域間の貿易のルールづくりに関しては、過去世界貿易機関 (WTO) を通した多国間交渉の形が取られていたが、多国間交渉を1つ1つこなすには多くの時間と労力が取られるため、WTOを補う地域間の新しい国際ルールとして、FTAやEPAが注目されている[11]

ただし、日本政府の公式見解では「free trade agreement」について、国際的に確立した定義があるとは承知しておらず[14]としており、従ってEPA、FTAの相違についても国際的に確立した定義によるものは日本国政府としてはあるとはしていない。

日本は東南アジアインドとの経済の連携協定を進めてきたように、FTAだけでなくEPAの締結を求めており、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)およびGATS(サービスの貿易に関する一般協定)に基づくFTAによって自由化される物品やサービス貿易といった分野に加え、締結国と幅広い分野で連携し、締約国・地域との関係緊密化を目指すとしている[11][12][15]。その理由は、関税撤廃だけでなく、投資やサービス面でも、幅広い効果が生まれることを期待していることによる[15]

日本政府は、このようにFTAとEPAを区分けしているが、「一般的な名称ではなく、WTOでも使われていません。FTAは当初は貿易に特化していましたが、その内容は年々幅広くなっていて、もはやほぼ同義で使われています[16]]との「実際、近年世界で締結されているFTAの中には、日本のEPA同様,関税撤廃・削減やサービス貿易の自由化にとどまらない、様々な新しい分野を含むものも見受けられる[11]」との指摘もあり、国によってはFTAとEPAを区別せずに包括的にFTAに区分することも少なくない[注釈 1]。特に米国は、署名・締結した協定において、ほとんどが自由貿易協定[注釈 2]としており、経済連携協定としているものはないが、内容的には関税撤廃・削減やサービス貿易の自由化にとどまらず、環境・労働等の分野を含んでいる[注釈 3]。更に日米貿易協定の国会承認の質疑において、後藤(祐)委員の質問に対して茂木外務大臣「包括的なFTA、ここにおきましては、物品貿易に加えて、サービス全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むこと[17]」と答弁し、更に「FTAについて、国際的に確立した定義も、御案内のとおり、あるわけではありませんが、我が国では、これまで、特定の国や地域との間で物品貿易やサービス貿易全般の自由化を目的とする協定、そういった意味でFTAという語を用いてきた」と付け加えた。また内閣官房澁谷TPP等政府対策本部政策調整統括官は「ガット二十四条に整合的な協定でございますので、経済連携協定だと認識」と答弁したこれはそのあとの答弁にあるように「関税の関係法、国内法でございますけれども、関税暫定措置法の施行令[注釈 4] におきまして経済連携協定という言葉が載っておりまして、経済連携協定で合意された関税率の適用に当たっては、協定が直接適用される[注釈 5]、こういう規定でございます。私ども、TPP、日・EU・EPA、それから今回の日米貿易協定も含めて、この関税法に言うところの経済連携協定だという認識[17]」ということである。

更に日本の外務省は、公的報告書である外交青書において、2020年版[18]においては「経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)」と記述し、脚注で「EPA:Economic Partnership Agreement (貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素などを含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定): FTA:Free Trade Agreement(特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定)」としていたが、最新版である2021年版[19]においては、「経済連携協定(EPA/FTA)」と記載し、脚注においても「EPA:Economic Partnership Agreement  FTA:Free Trade Agreement」のみ記載しそれぞれの説明や訳語は記載していない。従って日本においてもFTAとEPAを区分けしないのが外務省の公的な見解となっている。

2022年9月時点で日本政府が外国又は特定地域と締結した協定(発効ずみのもの)は、2018年12月に発効した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)及び2020年1月に発効した日米貿易協定を除き、すべてEPA(経済連携協定)となっている。CPTPPと2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、いずれも内容的にはEPAであるが、協定名は「パートナーシップ協定」となっている。日本・ASEAN包括的経済連携協定は、名称はEPAであるが、サービス貿易及び投資について規定する日本・ASEAN包括的経済連携協定第一改正議定書が、2020年8月1日に発効するまでは、関税関係のみに留まっていた。日米貿易協定は、関税撤廃・削減だけ規定している。
EUによるFTAの分類

EUは、その公式HPに、 ⇒新しい機会を提供するEUの自由貿易協定という記事を掲載しているが、このなかでEUが世界各国・地域で結んでいる自由貿易協定には、次の4種類があるとしている。

1. 第一世代協定(First generation agreements)

主に2006年以前に締結され、関税撤廃に焦点が置かれている。スイス、ノルウェー、地中海・中東諸国、メキシコ、チリとの協定やトルコとの関税同盟、また、西バルカン諸国との「安定化・連合協定(Stabilisation and Association agreements)」が含まれる。

2. 第二世代協定(Second generation agreements)

韓国、コロンビア、エクアドル、ペルーのほか中米などが対象。ここでは知的財産権やサービス、持続可能な開発への取り組みも含まれる。日・EU経済連携協定(EPA)は、名称は異なるがこの種類に該当する 。

3. 深化した包括的自由貿易地域(Deep and Comprehensive Free Trade Areas=DCFTA)

EUとジョージア、モルドバ、ウクライナといった近隣諸国の間で、より強い経済関係を創出する。

4. 経済連携協定(Economic Partnership Agreements=EPA)

アフリカ、カリブ諸国、太平洋地域の開発需要に焦点を当てたもの。日・EU間のEPAはこれに該当しない。

上記のように、EUは、一般的にはEPAは「開発需要に焦点を当てたもの」を意味し、日EUEPAは、関税に加えて知的財産権やサービス、持続可能な開発への取り組みも含まれる第二世代協定と理解している。
TAG

2018年9月26日の日米共同声明[20]において、日米両国は「日米物品貿易協定 (TAG)[21]について」交渉を開始すると発表した。これについて安倍総理は、記者会見において「今回の、日米の物品貿易に関するTAG交渉は、これまで日本が結んできた包括的なFTAとは、全く異なるもの」、「今回合意を致しましたTAG、これはFTAとは違いますが、しかし、正に物品貿易に関する交渉であります」と発言[22]しているが、TAGは、GATT第24条に定義する自由貿易協定そのものであり、サービス分野その他の分野を含まない物品貿易に限定した自由貿易協定ということになる。協定の性格は名称でなく、実質決まるものであり、「北米自由貿易協定」 (North American Free Trade Agreement, NAFTA) の再交渉の結果として合意された協定は、「米国・メキシコ・カナダ協定」 (United States-Mexico-Canada Agreement, USMCA) と「自由貿易」 (Free Trade) を含まない名称となったが、これにより自由貿易協定でなくなったわけではない。

また、物品貿易協定 (TAG) という用語は「日米共同声明に存在しない」との指摘がある[23]。共同声明は英語が正文[24]とされそこには for a Japan-United States Trade Agreement on goods,as well as on other key areas including services, that can produce early achievements とあり、日本の外務省の訳[20]は「日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについて」としている。しかし、在日米国大使館の訳文[25]では「早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉」とあり、物品とサービスを含むその他重要分野が並列で日米貿易協定を修飾している。


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