自然災害
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そのほかの地質災害としては、地下水位低下によって地盤が沈降し浸水などを引き起こす地盤沈下や、石灰岩質の地層中で侵食が進行し突然地表が陥没するシンクホール(ドリーネ)、土壌や地盤などの侵食、深いの底から二酸化炭素が大量に噴出することで広範囲にわたる窒息を引き起こす湖水爆発などがある[17]
気象竜巻で破壊された家と樹木、2010年アメリカ・ミシシッピ州。
風水害

風や降雨による災害は同時に発生することも多く、風水害と総称される。

水害の原因として大きなものには熱帯低気圧がある。熱帯低気圧はその発生する地域によって台風ハリケーンサイクロンと名称が異なるが、強風と豪雨によって居住地域に被害をもたらすことは共通している。台風だけではなく、単に大量の降雨だけでも災害は発生する。非常に多量の雨が一部地域に集中して降る場合は集中豪雨と呼ばれる[18]。集中豪雨の中でも予測不可能な場所で突発的に積乱雲が発生し豪雨となるものをゲリラ豪雨と呼ぶこともあるが、正式な気象用語ではない[19]。豪雨などによって陸地が水没することを洪水と呼び、河川から増水した水が堤防を乗り越え氾濫する外水氾濫と、堤防内部の水が河川に排水できずに内部であふれる内水氾濫の2種類が存在する。こうした内水氾濫は、コンクリートなどで地面が固められ降雨を下水道などで処理せざるを得ない都市において発生することも多く、これを都市型水害という[20]。通常、洪水は増水・減水ともにある程度の時間がかかるが、地面が雨水を吸収するよりはるかに速く大量の降雨があった場合や山崩れで発生した自然ダムが崩壊した場合などに、突然大量の水が押し寄せてすべてを押し流す場合がある。これを鉄砲水と呼び、氾濫の範囲は狭く水の引くのも速いが、前触れなく押し寄せることが多いため大きな被害をもたらす。鉄砲水の被害が特に多いのは一度に大量の降雨のあることが多い砂漠地帯である[21]

風害の原因としては上記の低気圧や台風などの強風のほか、ダウンバースト竜巻などの突風によるものも多い。なかでも竜巻は持続時間こそせいぜい1時間程度と短く被害範囲も狭いが、時速は50km程度と速い上風速は時速400kmにも達するため、進路上にある地域に甚大な被害を与える[22]。竜巻の発生が特に多いのは北アメリカ大陸であるが、それ以外の世界各地でも発生している。こうした低気圧は海にも影響を及ぼし、気圧低下による海面の吸い上げによって高潮を引き起こす。海水面が高くなる高潮と異なり、高波はその名の通りが高くなることで、低気圧による強風によって発生する[23]。高潮や高波、副振動堤防港湾の破壊、侵食浸水、船の座礁を引き起こす[24]。また、海水と風が吹き付けることによる、農作物や植物への塩害も発生する[14]。砂漠の強風は砂塵を伴った砂嵐を発生させ、黄砂などのように遠方にまで砂を降下させる[25]
その他雪崩

による災害は雪害と総称され、吹雪ブリザード)・地吹雪による視程障害(ホワイトアウト)や積雪による交通の支障、落雪、雪の重みによる建造物や物品の損壊、雪崩などが含まれる[26]。多量の降雪・積雪は豪雪と呼ばれ、交通途絶などによる多額の被害が発生する。また、過冷却状態にある雨水が地面や樹木などに衝突するとその衝撃によって雨氷が形成されるが、これも交通や電力網に大きな被害を及ぼす。冬から春にかけて、農作物が凍結したりが降りたりすることを凍霜害と呼ぶ。降は建物の破損や農産物への被害をもたらすほか、大きな雹が人体に直撃した場合死ぬことも珍しくない[27]落雷による直接の死、構造物の破損や火災のほか、主に送電施設への電撃・誘導雷による電気的被害をもたらす[28]

気温や降水が例年に比べ著しく異常を示すことも災害の1つである。異常高温熱波猛暑と呼ばれ、夏季中心に発生し、熱中症などを引き起こす。冬季の異常高温は暖冬と呼ばれ、スキー場など降雪の必要な産業に大きな被害を与える。異常低温が冬季に起こった場合は厳冬となり、低体温症が発生しやすくなるほか、上記の雪害が発生しやすくなる。夏季の異常低温は冷夏と呼ばれ、冷害を引き起こして主に農作物の生育不良をもたらす[29]。降水が異常に多い場合は上記のように洪水を引き起こすが、異常少雨の場合は干ばつとなり、水不足による生活・産業への被害や生態系への影響をもたらす。冷害や干ばつは農作物の収量を激減させ、歴史上しばしば飢饉の引き金となってきた[29]

異常乾燥や落雷によって山火事が発生すると、生態系や人命、産業に大きな被害を与える。山火事は湿潤な日本でも平成26年?平成30年の5年平均で年間約1300件ほど発生しており[30]、世界中で発生しているが、なかでもカリフォルニアやオーストラリアといった乾燥の激しい地域では多く発生する。山火事は長期化することもあり、2019年9月に発生したオーストラリア森林火災は2020年2月に起きた豪雨によって消し止められるまで、半年にわたって燃え続けた[31]
生物トリインフルエンザウイルス(A H5N1)

生物災害としては、生物の異常発生によるさまざまな被害が挙げられる。なかでもトノサマバッタサバクトビバッタといった一部のバッタ類が相変異を起こし大発生すると数千億匹を超えるような大群となり、時には数千km以上の距離を移動してその地域の草本性のものすべてを食べ尽くしてしまう[32]。これは蝗害と呼ばれ、農業や経済に巨大な被害を与える。

また疫病の発生による被害も生物に起因する自然災害と受け止められる。ペスト麻疹(はしか)、結核などは歴史的にも幾度となく流行期を惹き起こしてきた。またスペインかぜ新型コロナウイルスなどもウイルスによる疫病の流行である。厳密には現時点ではウイルスは生物ではなく「非細胞性生物」あるいは「生物学的存在」とみなされているが、ミミウイルスなどの細菌との類似性のあるウイルスや、レトロウイルスとトランスポゾンの類似性の指摘もあり、ウイルスと生物のボーダーは非常に曖昧であり、またウイルスそのものは人為的分類である可能性が高い。また発症による社会への影響度も含め、生物による自然災害とみなされる。

地球温暖化に伴い、日本近海における海水温の上昇や気候変動などを経て、蚊の媒介とするウイルスや原虫による疾患も危惧されている。
天文現象隕石の衝撃波で壁と屋根の一部が破壊された亜鉛工場。2013年、ロシア・チェリャビンスク州太陽フレアによる磁気嵐が地球を襲う想像図。電子機器やコンピュータシステムが障害を起こし社会に損害を与えることが懸念される。

天文現象による自然災害としては、小天体の落下・衝突がまず挙げられる。巨大隕石が衝突すると、小天体の大気中通過時や分解時に衝撃波が発生し、落下時には巨大な隕石孔クレーターができる。この衝撃によって大量の塵の巻き上げやそれによる太陽光の遮断と気候の急変が起き、いわゆる隕石の冬がもたらされる他、海に落ちた場合には津波も発生する。例としては、6600万年前の白亜紀には巨大隕石の衝突によって寒冷化が起き、恐竜の絶滅が起きたとの説が有力である[33]。このほか、太陽面での爆発(太陽フレア)の強力なものはコロナ質量放出(CME)や太陽嵐を引き起こし、これにより放出される電磁波粒子線太陽エネルギー粒子線によって宇宙滞在者への影響が懸念される他、通信障害(デリンジャー現象)や磁気嵐も発生する[34]


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