もともと江戸時代以前より屋敷などに使われた土地ではあるが、あまり人の手を入れていない状態が長く保たれたことで、人口密集地となる以前の東京都区内の自然の姿をうかがい知る貴重な場所となっている。その意味で同じ屋敷地をルーツとする隣地の東京都庭園美術館の手入れの行き届いた庭園としての姿とは好対照をなしている。 園内は「旧白金御料地遺跡」として埋蔵文化財包蔵地化されており[3]、有史以来この地に人が住んでいたことが園内より縄文土器や弥生土器・近世の遺物が発見されたことで確認できる[4]。 室町時代の頃、この地には白金長者(柳下上総介)と呼ばれる豪族が居館(白金長者屋敷)を構えたと伝えられ、その遺構とされる土塁が園内にみられる[5][6]。その後、江戸時代には高松藩主松平頼重の下屋敷として用いられた。明治時代に入ると陸海軍の火薬庫として使用され、一般人の立ち入りが禁止された。1917年(大正6年)に陸軍から宮内省帝室林野局に委譲され、白金御料地となった[6]。戦時中は田畑にされる、防空壕が掘られるなど荒廃が進んだ。戦後、以前から隣接する国立教育研修所が演習林として利用していた経緯などから文部省に移管される[6]。1949年(昭和24年)に全域が「旧白金御料地」として天然記念物および史跡に指定され[1]、同時に「国立自然教育園」として一般公開された。1962年(昭和37年)に国立科学博物館附属自然教育園となった[7]。 大正時代の文献によれば、かつてはモミ、スギ、マツといった針葉樹が林を形成していた。しかし、明治神宮造営のための大規模な移植や、近接道路からの大気汚染などから針葉樹は激減してしまい、現在は落葉広葉樹が主体の森となっている[6]。 出典:[8] 園内では、1473種の植物、約2130種の昆虫、約130種の鳥類が記録されている[12]。 2016年から2018年にかけて、国立科学博物館の研究員により各種の生物相の調査が実施された。調査結果の報告がまとめられ公開されている[13]。
歴史
基本情報
交通 - JR山手線目黒駅 徒歩9分。東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅 徒歩7分
事務所 - 東京都港区白金台五丁目21番5号
入園料 - 一般・大学生320円、高校生以下、65歳以上無料
園内
敷地面積 - 約6万坪(約20万m2)[9]
利用者用施設 - 教育管理棟(自然教育園の自然を紹介した各種展示、休憩スペース、ミュージアムショップ)[10]
植生概況 - シイ林、マツ林、コナラ林、落葉樹林、草原、湿地[11]
生物概況
出版物
自然教育園報告(外部リンク参照)
自然保護教育のためのカリキュラム作成に関する研究 : 自然教育園をフィールドとして - 国立科学博物館付属自然教育園自然保護教育研究班 編、1981年3月[14]
自然保護教育の現状と問題点 : 野外観察会と自然研究路を中心として - 「研究報告」「資料篇」と分冊刊行。1980年3月[15][16]
ギャラリー
遊歩道(2014年4月)
遊歩道(2018年3月)
池(2014年4月)
池(2018年3月)
ショウジョウトンボ(2015年6月)
フシグロセンノウ(2017年8月)
タヌキ(2018年3月)
全景と周辺環境(2012年8月)
園内に残る白金長者屋敷の土塁とされる遺構。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 渋谷区内は「渋谷川」、港区内は「古川」と呼ばれる[2]。
出典^ a b 「旧白金御料地」
^ 「渋谷川・古川の流域」
^ 「東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス」
^ 国立科学博物館附属自然教育園飛び地調査委員会 2021 pp.90-98
^ 平井ほか 1979 pp.244-245
^ a b c d 渡辺一夫 『公園・神社の樹木:樹木の個性と日本の歴史』 築地書館 2011 ISBN 9784806714323 pp.60-74.
^ “附属自然教育園について ≫ 沿革 :: 附属自然教育園 Institute for Nature Study”. ins.kahaku.go.jp. 2024年4月15日閲覧。
^ “利用案内 ≫ アクセス・利用案内 ≫ アクセス・利用案内 :: 附属自然教育園 Institute for Nature Study”. ins.kahaku.go.jp. 2024年4月15日閲覧。
^ “国立科学博物館附属自然教育園” (PDF). 国立科学博物館. 2022年12月23日閲覧。
^ “国立科学博物館附属自然教育園” (PDF). 国立科学博物館. 2022年12月23日閲覧。
^ “国立科学博物館附属自然教育園” (PDF). 国立科学博物館. 2022年12月23日閲覧。
^ “調査研究 :: 附属自然教育園 Institute for Nature Study”. ins.kahaku.go.jp. 2022年12月23日閲覧。
^ “調査研究 :: 附属自然教育園 Institute for Nature Study”. ins.kahaku.go.jp. 2022年12月23日閲覧。
^ 国立科学博物館附属自然教育園 (1981). 自然保護教育のためのカリキュラム作成に関する研究 : 自然教育園をフィールドとして. [東京]: 国立科学博物館付属自然教育園. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I003173562-00
^ 国立科学博物館附属自然教育園 (1980). 自然保護教育の現状と問題点 : 野外観察会と自然研究路を中心として. 東京: 自然教育園. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I003207090-00
^ 国立科学博物館附属自然教育園 (1980). 自然保護教育の現状と問題点 : 野外観察会と自然研究路を中心として. 東京: 自然教育園. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I003352301-00