消滅時効に係る債務については、消滅時効を援用した債務者がこれを任意に弁済した場合について、消滅時効の援用により実体法上も債務は消滅し、援用後の弁済は非債弁済に当たるとする説(実体法説)と、消滅時効の援用は訴訟における訴求力、執行力を消滅させるに過ぎず、弁済の給付保持力までも消滅させないとし、時効援用後の弁済は自然債務の弁済とする説(訴訟法説)がある。判例通説は、実体法説に立つ。
不法原因給付による債務は、自然債務と言うよりはむしろ、民法第708条の反射的効果として被給付者に所有権が移転すると言う説が判例上も有力である。[7]
破産決定により免責された個人の金銭債務は、消滅するのではなく自然債務として残存すると言うのが通説である。よって破産決定後に債務者が自発的に支払った債務は、自然債務の残存する範囲内において充当され、不当利得としての返還請求をする事ができない。破産法人に対する場合はこの限りでない。 訴求力も執行力も持たないが給付保持力のみを持つと言うのが自然債務の概念である。判例でもしばしば伝統的に、かかる弁済の給付保持力が認められており、近年は下級審判決にも自然債務と言う文言すら見受けられるが、そもそも給付保持力の法源と、その及ぶ範囲(例えば相続、除斥期間)についてどのように説明するのか批判がある。 任意弁済を一律に非債弁済とする場合、訴求力または執行力を欠く主債務に対する任意弁済を根拠として保証債務や物上保証の担保物権などを縮小することができなくなる。 消滅時効にかかった債務については相殺において自働債権となりうること(民法508条 自然債務とは異なり、訴求力、給付保持力はあるが執行力のみを欠く債権を、講学上、責任なき債務と言う。 典型的な例として、強制執行不執行特約付きの債務があげられる。また、限定承認において被相続人の債権者が相続財産または残余財産から回収できない被相続人の債務についても、相続人に相続されるが相続人に対する執行力を持たないため、責任なき債務に当たる。 ちなみに、講学上、「債務なき責任」とは、物上保証人に設定された物権(抵当権等)を言う。 典拠管理データベース: 国立図書館
批判
自然債務概念説
自然債務否定説
責任なき債務
脚注^ 裁判外の任意履行を求める事ができる法源である。ただし、逸脱や濫用のある場合、別途法律による規制(貸金業法、迷惑防止条例など)がある場合はこの限りでない。
^ 内田貴著 『民法V 第3版 債権総論・担保物権』 東京大学出版会、2005年9月、114頁
^ 遠藤浩編著 『基本法コンメンタール 債権総論 平成16年民法現代語化新条文対照補訂版』 日本評論社〈別冊法学セミナー〉、2005年7月、28頁
^ 給付保持力までも欠くものとする説もあるが、その場合には不当利得返還請求を認める余地が出てくると言う批判がある。
^ 慣習法、判例法、条理に属さないもの
^ 強行法規がこれを許さない場合は、この限りでない
^ 最大判昭和45年10月21日民集24巻11号1560頁
^ 川島武宜著 『債権法総則講義 第1』 岩波書店、1949年、53頁以下
関連項目
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