次に、自殺願望をもたらす背景要因に共感的に耳を傾けた上で、その背景要因へのアプローチを行っていく[22]。精神医学的要因にとどまらず、心理社会的ならびに経済的要因まで含めて広範なアセスメントを行い、必要なソーシャルワーク(社会的支援)を試みる。たとえば、背景要因として多重債務や家庭内における暴力被害が見出された場合、司法書士や配偶者暴力相談支援センター、福祉事務所等の適切な支援資源につなげていく[22]。この際に支援者は、支援機関へ同行する、家族などに同行を依頼する、支援機関に連絡して確実に対応してもらえるよう日程を押さえる等、支援資源に確実につなぐための配慮をすることが重要である[22]。
予防の取り組み
世界的な取り組み「en:List of suicide crisis lines」、「世界の自殺防止相談窓口一覧」、「全米自殺予防ライフライン」、および「en:National Suicide Prevention Lifeline」を参照
世界保健機関(WHO)の自殺予防に関する特別専門家会議によると、自殺の原因は個人や社会に内在する多くの複雑な原因によって引き起こされるものの、自殺は予防できることを知ることが大切で、自殺手段の入手が自殺の最大の危険因子で自殺を決定づける、とした。毎年9月10日は「世界自殺予防デー」として、WHOと国際自殺防止協会( IASP=The International Association for Suicide prevention)、その他の非政府組織によって、世界保健機関加盟各国で自殺防止への呼びかけやシンポジウムが行われている。日本でも2007年から、16日までの1週間を自殺予防週間と定めており、地方自治体や関係機関が9月に各種啓蒙運動を行っている。
アメリカ合衆国政府は自殺につながるような自殺防止のための無料電話を、かつての10桁番号から、2022年7月に3桁(988)に短縮するなど相談しやすくしたが、差し迫った自殺の危険があると判断された場合に警察に通報されかねないことへの警戒・反発も起きている[23]。世界の自殺防止相談窓口一覧(英語版) 日本における自殺対策としては相談室の設置、カウンセラーの増強などの対策が取られている地域がある(各都道府県・都市の相談窓口一覧(外部リンク:自殺総合対策推進センター(JSSC)) WHOのデータによると、宗教で自殺をタブーとしている宗教での自殺率は低く、タブーとしていない仏教などの宗教、そして無宗教と順に自殺率が高くなっている。これら宗教での自殺率が低い理由として、仏教を含めて、宗教関係者がカウンセラーとして相談窓口を提供し、自殺防止に貢献していることが考えられる。窓口としては、各宗派の宗教施設、仏教テレフォン相談[25]などがある。 自殺予防に向けて悩み相談に乗る者は、ゲートキーパーと呼ばれる。これは特別な人ではなく、相手を心配して相談に乗りたいと思う全ての人がゲートキーパーである。その相談や気付きの方法としては、以下の取り組みが推奨されている。 日本では、厚生労働省から公開されており印刷してポケットに入れられる『誰でもゲートキーパー手帳』、研修用の『ゲートキーパー養成研修用テキスト』で誰でもゲートキーパーの知識を習得可能となっている[26]。カウンセラーやゲートキーパーらは「TALKの原則」で相談に乗るようにとされている。日本で行われる「TALKの原則」とは、誠実に自殺したいという気持ちを否定せず思いやりを持って話しかける(Tell)、自殺についてはっきりと尋ねる(Ask)、相手の話に傾聴する(Listen)、安全を確保する(Keep safe)の頭文字から来ている[27]。 英語圏のゲートキーパーは、Question(質問)、Persuade(説得)、Refer(医師などの専門家を紹介する)の頭文字からQPRで対応を行っている。このQPR Gatekeeperは習得が容易で、1 - 2時間程度で習得でき、オンラインの講義も可能で多くの人が履修できるようになっている[28][29]。また、自殺念慮を有するクライエントへのアプローチの一つとして、問題解決技法がある[30]。これは、クライエントのつらさに共感した上で、死ぬことを考えた原因や背景にある問題に耳を傾け、その問題を解決する方法をクライエントと支援者が協同で模索し実行することで、希死念慮を引き起こす問題の解決を支援する技法である。問題解決をサポートするにあたって、共感的・支持的な関係性を形成しておくことがポイントとなる[30]。同時に、困難や苦痛を感じながらも生きてこられている、クライエントの強さを認めていくことも大切である。ここまで生きてこられているのは、生きる上で大切な考え方やストレス対処方略などを持てているためであり、そのような肯定的な側面に光を当てていくことで、自己肯定感の形成をサポートすることができる[31]。 ストレスへの対処や逆境の時の対応など、自殺を抑制するように報道することで、自殺を抑制するパパゲーノ効果が現れる。WHOから自殺を誘発させるウェルテル効果が起きないよう『自殺報道ガイドライン』が公布されており、厚生労働省からもガイドラインに従うよう メディア関係者の方へ GoogleやYouTubeを運営しているAlphabetでは、「自殺と自傷行為に関するポリシー」を掲げており、相談窓口のリスト提供や配信動画への対応を行う。実際に、違反する動画の削除を行うほか、医療関係者などの関連動画や検索結果については配信前に注意文が掲載されるようになっている[33]。 FacebookやInstagramを提供しているMetaでは、「自殺や自傷行為に関する投稿を見かけた場合の対応策」をサポートチームが提供しており、サポートを行える情報提供を行っている[34]。 Wikipediaを運営しているウィキメディア財団の信頼と安全
日本の取り組み
宗教の取り組み
まわりの人やカウンセラーの取り組み
マスメディアなどの企業の取り組み詳細は「自殺報道ガイドライン」を参照