自尊心
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セルフヘルプ詳細は「セルフヘルプ」を参照

何も心理療法を受けなくとも、自己イメージは自分で育てることが可能であり、『自信を育てる心理学 「自己評価」入門』のようなセルフヘルプのための本が出版されている[5]。自分の感情や望みや考えに気づくこと、自己受容すること、自己表現や自己主張を学ぶことは、自尊心のための最も重要な3つである[6]

自分の行動や価値観や目標に気づこうとし、それに従って生きることは、自信と自尊の感情を生み出し、意識のはたらかせ方から生まれる[7]

自己の受容は、変化のための条件であり、善悪といった判断をはなれ、事実を事実として受け入れ、恐れがあることを受容し、あまりにも受け入れられない時には受け入れられないことを受け入れるということである[8]。存在を認めていない恐れは、解決も克服もできないからである[9]。悲しみや喜びだけでなく、才能といった長所も、挑戦のための責任や他者からの敵意のために受け入れにくいことがある[10]。罪悪感については、怒りを自分のものとして認め、憤りを無視する、自己主張を恐れるといったもっと深い問題に直面する必要がある[11]。行ったことを認め、与えた危害を認め、償い、理由を探り、繰り返さないための決意を行う[12]。大人の自分と子供の自分の対立の解決も重要であり、同様に当時はそれが精いっぱいであったこと、同様に感情などを受け入れていく[13]

または英語でマインドフルネスとは、ただありのままに注意を向けるということであるが[14]、417人の質問回答の分析から、マインドフルネスが自尊心や不安や抑うつとの関係を示し、自尊心が不安と抑うつの軽減、抑止に対し、有益であるという役割を裏付けた[15]。「アクセプタンス」も参照
心理的支援

自尊心の形成をサポートする際に支援者は、本人の存在自体の価値をまるごと認め、本人に対して否定をせず根拠のある積極的な肯定をすることが大切であり、そのうえで、何かをすることができた際にそれがどのようなものでも一つ一つの達成を本人の心に届く形で肯定・称賛することが重要である[16]
自尊心に関する批判
自尊心に関する初期の研究

自尊心研究の初期の第一人者の1人であるロイ・バウマイスター(英語版)によると、バウマイスターが社会心理学者として研究を始めた1970年代には、自分の能力と価値観に自信がある人ほど幸福になって成功するという研究があったため、自尊心関連の研究は当時の主流であった[17]

またその頃の研究では、いずれも相関関係は大きくなかったが統計的には有意なレベルで[18]、自尊心が高い生徒は学校の成績がよく、低い生徒は学校で苦労しているという調査結果や、未婚の母親や薬物依存症患者、犯罪者などは自尊心が低いことを示した研究があった。そのため、ナサニエル・ブランデン(英語版)は自尊心に関して「心理的な問題のもとをたどればすべて、自尊心の低さにつながると思われる」と言及すること[19]や、カリフォルニア州で自尊心についての特別調査委員会委員長であるアンドリュー・メッカは「事実上すべての社会問題の根は、自分を好きになれないことに帰結すると考えられる」と言及すること[20]、報告書をまとめたカリフォルニア大学バークレー校の社会学者ニール・スメルサー(英語版)は「ほとんどとは言わないまでも、社会に蔓延している問題の多くの根は、この社会を構成する人たちの自尊心の低さにある」と言及すること[21]があった。
自尊心の定説を覆した研究

なお、上記のカリフォルニア州での研究では確実な科学的根拠は見つからず、その点についてスメルサーは「残念だ」と述べている[21]。しかし、自尊心関連の研究については期待がなされており、もう一度研究がなされればもっと良い結果が出るものとされ、後に科学的な機関である心理科学協会で研究が行われた。この研究[22]では何千という研究の中から高い研究水準を満たすものを選び出して研究が行われ、自尊心のもつ様々な性質が明らかになった。その結果、自尊心に関する定説を覆すものになった。また、科学論文を審査した調査委員会の心理学者たちによると、少なくともアメリカ、カナダ、西ヨーロッパでは自尊心の低い人が満ちているという考えは間違いで、特に子どもたちは最初からとても自信を持っているものだと結論した[23]
自尊心と学業成績との関係

自尊心と成績の相関関係はあり、確かに自尊心の高い生徒は成績が良かった[22]。だが、その因果関係は、10年生(日本の高校1年生)で成績がよかった生徒は12年生(日本の高校3年生)の時点で高い自尊心を持っていたが、逆に10年生の時に高い自尊心を持っていた生徒は、12年生で成績が良いということはなかったため、成績が先に高いことによって自尊心が高まるというものである。

自尊心と成績に関しては、別の研究も行われている。ドナルド・フォーサイスは、自身が担当する心理学のクラスで学生たちの自尊心を高めるため、成績がC以下の学生を2つに分け、毎週、自尊心を刺激するメッセージと事務的なメッセージを送る比較研究を行った[24]。その結果、自尊心を刺激するメッセージを受け取った学生は、対照群の学生たちよりも成績が悪く、さらに前回の試験のときよりも成績が下がってしまった。また、国際的な学力調査で8年生(日本の中学2年生)の数学の成績を比較した研究[25]によると、自分の能力に強い自信を持つアメリカ人の生徒は、日本や韓国といったアメリカに比べて自尊心の低い国の生徒よりもはるかに成績が悪かった。
自尊心と諸問題との関係

自尊心の高さは、飲酒・喫煙・薬物・未成年の性行為を防ぐことはなかった[22]。確かに自尊心の低さと薬物依存や10代での妊娠などの問題に相関関係はあるかもしれないが、低い自尊心がその問題を引き起こしているのではなく、逆因果の関係にあり、低年齢で薬物依存状態にあり妊娠をしていることで自尊心が低くなるという指摘がある。


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