自傷行為
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『自傷行為治療ガイド』に、特に救急医療の医療従事者に向けての「自傷する人々のための権利章典」が掲載されている[30][31]。自傷者には、叱責されず思いやりのある治療を受ける権利があることが記されており、他に傷がないか強制的に検査することは発見されにくい部位に傷を隠すようになるため禁じられるとともに、決めつけをもった態度で接しないよう注意が促されている[30]
心理社会的支援

認知行動療法が一般的である。家族療法などを用いることもある。英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは、3-12セッションの心理療法を提案している[32]

『自傷行為治療ガイド』では、マーシャ・リネハンの開発した弁証法的行動療法(DBT)の境界性パーソナリティ障害への有効性に言及されている。リネハンの技法ではマインドフルネスが中核的な要素とされており、落ち着いていながら集中しているマインドフルネスの技法を用いるジョン・カバット・ジンや仏教僧のティク・ナット・ハンなどにも言及され、深呼吸から10まで数える瞑想など様々な瞑想法を紹介している[33]。毎日15?20分の練習で、1?2か月後には実用レベルにまで上達し、数か月後には相当興奮していても効果を発揮するまでになるとしている[34]

他にもいくつか自傷行為の代わりとなる置換行動を紹介しており、赤いペンで線を引いたり傷のつかない刺激を与えるといった、自傷行為自体につながりかねないので最小限に用いるべき置換行動や、運動をする・芸術創作を行う・音楽を聴いたり演奏したりする・友人や家族など誰かとコミュニケーションする・気分転換を通して気を紛らわすといった置換行動を、組み合わせることを提唱している[34]

PTSDのようにトラウマが原因となっている場合には、そのトラウマの解消に向けた認知行動療法を行うことも有効である(詳細は、「PTSD#心理療法」を参照)[35]

また、自傷したことを責めることなく自傷行為に至った苦しさに耳を傾けていく中で、その苦しさが少しでも楽になるための方法や環境を本人と一緒に考えて支援していく[36]。同時に、自傷行為はすぐにやめなくてもよいことや、自傷したくなったらそれを信頼できる人にいつでも言ってよいことなどを伝え、本人を責めたり孤立させたりすることなく温かくサポートする[36]
薬物使用の方針

自傷行為自体を減らすことを目的としての薬物療法は、行ってはならないとNICEは勧告している[37]。抗うつ薬や抗不安薬の服用が自傷行為の回数を増加させることもあるし、こうした薬物の過剰摂取を引き起こすこともある。併存疾患の治療のために薬物を処方する際には、過剰摂取の毒性を検討し[19][38]、例えば抗うつ薬では三環系は毒性が高いため処方すべきではなくSSRIが好まれる[38]

境界性パーソナリティ障害に対する2009年のNICEガイドラインでは、自殺企図や自殺念慮の強い傾向がある場合には薬物療法を用いず、もし用いるとしても相対的に安全な薬で1週間をめどにし、効果がなければ中止することを推奨している[39]。2008年の日本のガイドラインも、そうした患者に対し、抗うつ薬と抗精神病薬のような併用療法の有効性を支持する証拠もなく、同種類の薬を複数処方することにも注意し処方するとしても単剤とし、過量服薬の危険性にも注意し、特にベンゾジアゼピン系抗不安薬を避けることを推奨している[40]
疫学世界の自傷行為による人口10万人あたりDALY(2004年)[41].mw-parser-output .refbegin{margin-bottom:0.5em}.mw-parser-output .refbegin-hanging-indents>ul{margin-left:0}.mw-parser-output .refbegin-hanging-indents>ul>li{margin-left:0;padding-left:3.2em;text-indent:-3.2em}.mw-parser-output .refbegin-hanging-indents ul,.mw-parser-output .refbegin-hanging-indents ul li{list-style:none}@media(max-width:720px){.mw-parser-output .refbegin-hanging-indents>ul>li{padding-left:1.6em;text-indent:-1.6em}}.mw-parser-output .refbegin-100{font-size:100%}.mw-parser-output .refbegin-columns{margin-top:0.3em}.mw-parser-output .refbegin-columns ul{margin-top:0}.mw-parser-output .refbegin-columns li{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column} .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  no data   less than 80   80?160   160?240   240?320   320?400   400?480   480?560   560?640   640?720   720?800   800?850   more than 850

リストカットは1960年代に主としてアメリカの女性に見られ、社会問題となった。自傷行為経験者は若い未婚の女性に多く、男性にも一定数存在する。常習性が高く、周囲の理解も得られにくいために長期間苦しむことも多い。カナダ放送協会 (CBC) が500人のスクールカウンセラーに過去1年間に診た自傷者数を尋ねてみたところ、各校に2?3人いるという回答結果が得られ、非公式な調査結果ではあったが、その発症率は女子250人に1人とされた。

1990年代後半より、精神障害の診断を受けないような一般人口の間での自傷行為が出現しており、トラウマとなるような体験がない場合が多い[42]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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