臨床心理士
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1996年度には、臨床心理士養成体制の充実のため臨床心理士資格審査規程が改正され、大学院指定審査委員会の設置と臨床心理士養成大学院指定制度の導入が始まり、臨床心理士養成におけるさらなる大学院教育の重点化と、その基盤となる全国の各臨床心理士指定大学院における教育水準の一定化が図られた[21]

また、2003年度には、学校教育法の改正によって高度専門職業人養成のため専門職大学院が創設され、それを受け2005年度からは、臨床心理分野に特化した臨床心理専門職大学院が順次開設された。その後、経過措置を踏まえたうえで、2007年度からの臨床心理士資格審査の受験資格は「第1種指定大学院修了者」「第2種指定大学院修了者」「専門職大学院修了者」「医師免許取得者」に高度集約化された[21]。詳細は「#臨床心理士資格審査」のセクションを参照
専門業務

臨床心理士に求められる固有な専門業務は、「臨床心理士資格審査規程」第11条において下記の4種類と記されている[22][23]
査定

臨床心理査定は、おもに臨床心理面接を用いた各種本人情報のヒアリングや、クライエント-臨床心理士間や社会的場面における臨床像の分析・考察、および各種心理検査の結果などによる、当該事例に対する見立て・アセスメント業務を指す。初回インテークにおいて見立てられる所見や、継続的に臨床心理面接を重ねる過程で徐々に得られる所見なども含め、当該事例に関わるすべての情報を統合したうえで導かれる臨床心理学に依拠したアセスメントであり、主訴とともに臨床心理面接や臨床心理学的地域援助を行う際の方向性を定めるものである[22][23]
臨床心理面接

おもに、各種心理療法(心理セラピー)技法を用いて自己理解や自発的洞察に導く心理カウンセリングのほか、主訴・状態・環境によってはクライエントへ心理学術的情報を適宜提供する心理教育なども含め、当該事例における相談業務全般を指す。

心理療法が立脚する学派は、深層心理学系、行動理論系、人間性心理学系が現代心理学における三大潮流とされているが、それぞれ手段は違えど、認知情緒行動などに適応的な変容を図る目的は共有している。また、性格傾向・病理水準・発達水準などにより向き不向きがあるため、主訴や各水準の臨床心理査定と照らし合わせ、クライエントとの共通理解のもとで、当該事例に適した心理療法が選択・折衷され用いられる。

したがって、臨床心理面接は、クライエント-臨床心理士間の信頼関係に基づく治療同盟や、適切な臨床心理査定と不可分な関係にあり、「対話」を用いて行われる臨床心理士の中核的専門業務である[22][23]
臨床心理学的地域援助

臨床心理学における「地域」とは、個々人によって構成される「コミュニティ」を指し、コミュニティには「家族」「友人」「学校」「職場」「社会」などさまざまな次元の社会的集団がある。すなわち、クライエント-臨床心理士間という二者関係における個人援助業務と並行して、当該事例に関わる各コミュニティという集団に対し、おもに心理コンサルテーションや心理教育などを用いて行われるコミュニティ援助業務が臨床心理学的地域援助である。

臨床心理学的地域援助が立脚するコミュニティ心理学や一般システム理論は、個人に注目すると同時に、各コミュニティが本来持っているシステムとしての機能や、さまざまな次元のコミュニティ間の相互関係性を重視している。そのため、コミュニティを構成する個々人や各コミュニティ自体が当該事例へ主体的・支持的に相対し、個人間・コミュニティ間が相互肯定的に影響し合うことによる治療的・予防的機能の回復・維持・向上に主眼を置く。

したがって、臨床心理士は、自らが専門家として前面に出るのではなく、個人間・コミュニティ間において自然にやり取りされるセルフケアとしてのソーシャルサポートの賦活を最優先に考え、臨床心理士自身は連携支援や後方支援を担う社会資源のひとつにしか過ぎないという立場を取る[22][23]
臨床心理学調査・研究

主に、職能団体日本臨床心理士会都道府県臨床心理士会)、学術研究団体、各種研修会などにおいての研究活動全般を指す。臨床心理学には、多数のサンプルに統計学的処理を施す定量的研究と、個々の事例研究を蓄積する定性的研究があり、研究活動に際しては学際的な観点が要求される。

また、臨床心理士資格は、「臨床心理士資格審査規程」第5条、ならびに「臨床心理士教育研修規程別項」第2条において満5年ごとの資格更新を義務づける更新制度をとる。したがって、資格の保持のためには、日々の臨床活動と並行して職能団体や学術研究団体などにおいて継続的な研究活動を行うことが不可欠であり、臨床心理学調査・研究は、有資格者自身の自己研鑽と臨床心理士資格の保持の双方ともに関わる基盤的業務である[22][23]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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