膵癌(すいがん、英: Pancreatic cancer)は、膵臓に発生した上皮由来の悪性腫瘍(癌)である。膵臓癌、膵臓がん(すいぞうがん)とも呼ぶ。 膵癌の自覚症状としては腹痛や体重減少などがあるが、特異的な症状はなく、早期の場合はほとんどは無症状で、多くは進行してから発見されることが多い。人間ドックや、偶然CTや超音波検査の画像検査によって発見される以外では、膵鉤部・膵頭部癌では、腫瘍が総胆管を閉塞して黄疸を生じたり、酸素欠乏によるランゲルハンス島の活動低下により糖尿病が悪化したり、血糖値やアミラーゼ値が上昇したりするといった形を呈することがある。 厚生労働省の統計では日本において膵癌死亡者数は毎年約22,000人以上であり、癌死亡順位で男性で5位、女性で6位で年々増加傾向にある。 日本のがん統計[2]死亡数 (2017年)罹患数 (2014年) 膵癌は肝臓、肺、骨によく転移する[3]。また、骨転移の頻度は1 - 3%である[3]。 日本の熊本大学などの研究チームは2023年、膵がんの転移や再発を引き起こすがん幹細胞を発見したと発表した[4][5]。 発症の危険因子としては以下がある[6]。 遺伝的症候群とその関連した遺伝子 遺伝性膵炎、家族性大腸線種ポリポーシス、FAMMM、ポイツ・ジェガーズ症候群などの遺伝性疾患では膵癌発生率が高く、遺伝性膵癌症候群とも呼ばれる。 日本人においては、糖尿病と膵癌のリスク増加は関連がある。糖尿病と癌罹患に共通する危険因子(加齢、肥満、不適切な食事、運動不足)により関連している可能性がある。糖尿病により膵癌リスクが高まる機序としては、高インスリン血症、高血糖、炎症などが考えられる[14] 膵臓癌における糖尿病の有病率は68%。糖尿病とがんに関する委員会による日本における8つのコホート研究を用いた大規模なプール解析では、糖尿病でない者に対する糖尿病患者の膵臓癌の発症率は1.8倍である。また、新規に発症した糖尿病を合併した膵臓癌は、膵頭十二指腸 発生する部位によって以下の通りに分類される。 膵癌は膵臓のいずれの組織からも発生しうるが、それぞれ全く異なる性質を示す腫瘍となる。 以下の画像検査を行うことで評価を行う。
臨床像
疫学2004年における10万人毎の膵癌による死亡者数(年齢標準化済み)[1] body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%} .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{} データなし 1人以下 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人 10人以上
男女男女男女男女
1位肺大腸肺胃乳房大腸
2位胃肺大腸肺大腸胃
3位大腸膵臓
4位肝臓胃膵臓前立腺肺乳房
5位膵臓乳房肝臓肝臓子宮前立腺
転移
がん幹細胞
リスクファクター
喫煙:非喫煙者と比べリスクが2倍から3倍[7]
飲酒:5年間飲酒習慣が一定の男性で、飲酒量が多いほど膵がんの罹患リスクが高くなることが示された[8]。
肥満・運動不足:リスクが2倍[9]
長期にわたる糖尿病:2倍。血糖コントロール悪化で入院した糖尿病患者の1.14%に新規に膵癌が指摘された[10]。
ソフトドリンクと100%果汁ジュース:これらの消費量と膵がん発生は関連する[11]。
非遺伝性の慢性膵炎:2倍から6倍
O型以外の血液型:1倍から2倍
遺伝性膵炎(PRSS1, SPINK1):約50%が発症する[12]。
家族性異型多発母斑黒色腫症候群(Familial atypical multiple mole and melanoma syndrome、略称:FAMMM)(p16):10%から20%[13]
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(BRCA1, BRCA2, PALB2):1%から2%
ポイツ・ジェガーズ症候群(Peutz-Jegher's Syndrome):30%から40%
遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (Hereditary non-polyposis colon cancer、略称:HNPCC、Lynch syndrome)(MLH1, MSH2, MSH6):4%
毛細血管拡張性運動失調症(Ataxia Telangiectasia):合併率不明。
リ・フラウメニ(Li-Fraumeni)症候群:合併率不明。
糖尿病との関係
分類
膵鉤部癌
膵頭部癌 - 膵癌のうち60%は膵頭部に発生する[16]。
膵体部癌
膵尾部癌
病理
浸潤性膵管癌(Invasive ductal carcinoma) - 膵癌の約90%を占める代表的な組織型で、通常型膵癌とも呼ばれる。膵管に由来する。
膵内分泌腫瘍(pancreatic endocrine tumor[17]) - 内分泌腺(ランゲルハンス島)に由来し、約8割が何らかのホルモンを産生する。通常型膵癌と比較して抗剤が効きにくいが進行も緩やかである。
膵管内乳頭粘液性腫瘍(英語: intraductal papillary-mucinous neoplasms、略称:IPMNs)[18] - 膵管上皮から発生する腫瘍で、膵管内発育と粘液産生を特徴とする。一般に悪性度が低く経過観察が可能であるが、悪性化の所見があるものは手術治療の対象となる。
粘液性嚢胞腫瘍(英語: mucinous cystic tumors、略称:MCTs) - 粘液を有する大型・多房性の嚢胞性病変で、中年女性に好発する。悪性度が高く、通常型膵癌に準じた治療が行われる。
腺房細胞癌 - 腺房に由来する比較的稀な腫瘍である。
そのほか稀な組織型 - Solid-pseudopapillary carcinoma、未分化癌、漿液性嚢胞腺癌(きわめて稀)、転移性膵癌など。
検査
血液検査
腫瘍マーカー:以下の値が高値を示すことで指標として用いられる。
CA 19-9
DUPAN-2
SPAN-1
エラスターゼ 1
NCC-ST-439
SLX
miRNA[19]
画像検査
超音波検査
一般に検診にて用いられる。典型的な膵管癌は境界不明瞭で不整形の低エコー域として描出される。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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