腫瘍学
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ちなみに癌治療成績で使用される5年生存率は、術後5年目の時点において、(再発している、していないにかかわらず)生存している人数の比率をさす。
終末期医療

全ての癌患者のおおよそ50%は完治すると診断されるが、多くの癌患者がこの疾病により死亡する(今日では日本の死因の約30%が、癌である)。終末期治療が大いに尊重され、専門分野として独立してきているが、腫瘍学もまたガイダンスを提供したり、その場に際して終末期治療を施している。往々にして、文章では患者の手助けにならないので、むしろ患者は"生きることと近づきつつある死"について体験する方が励ましになることが多い。その場においては、できうる限りの治療の可能性が試される。

日本においては、またホスピスとして終末期治療を専門とする病床も増加しつつある。またかつては延命の妨げになるという理由でモルヒネによる終末期疼痛治療は忌避されることが普通であったが、今日では終末期疼痛治療はホスピスなどにおいて実践され始めている。

日本における代表的なホスピス施設として外部リンクの ⇒緩和ケア病棟を有する病院一覧(国立がんセンター)を示す。
WHO方式癌疼痛治療ガイドライン

1986年、WHOは癌疼痛治療に関するReport "Cancer Pain Rerief"(癌の痛みからの解放)を報告し、癌疼痛治療に関する新しい考え方を提示した。この考え方を基本とする疼痛治療法はWHO方式癌疼痛治療と呼ばれる。

WHO方式癌疼痛治療は鎮痛薬を鎮痛作用と特性を考慮して三つの種類に分類し、その使用について5つのガイドラインを提示している。

鎮痛剤は
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)- アスピリン、ボルタレン等

弱オピオイド - コデイン等

強オピオイド - MSコンチン等

に区分され、段階をおって選択される。

また、使用ガイドラインは

徐放性を考慮した投薬方法(by Mouth)

一定の間隔での投薬(by the Clock)

段を上るように強い鎮痛剤を選択する(by the ladder)

個々人の疼痛状況に応じて投与量を決定する(for the individual)

作用の補助あるいは副作用管理を詳細に実施する(attention to detail)

である。

WHO以前の鎮痛剤の使用方法は、
痛みが発生してから投薬する。

即効性が重要なので、静脈投与が第一選択。

オピオイドの使用は最終手段。

というものであった。

それに対してWHO方式では以下のような特色を持って疼痛治療がなされる。

痛みが発生する前に投与する。

鎮痛剤の血中濃度を必要量だけを継続的に維持するために、静脈投与を避け、経口あるいは座剤により徐放的に且つ計画的に投与する。

鎮痛剤の作用減弱に合わせて、痛みが消える用量で鎮痛剤を細かく増量して行く。

鎮痛能力に天井をもつ、NSAIDsで不十分になったら即座に鎮痛能力に天井がないオピオイド系鎮痛剤に切り替えてゆく。

吐き気、便秘など鎮痛剤の副作用に対しては、鎮痛剤を減らすのではなく、鎮痛補助剤を使用して鎮痛剤の量を維持しながら副作用を改善する。

WHO方式疼痛治療は末期に限定されるものではなく、早期においても疼痛が発生する場合は適用されるべきものである。
倫理上の問題

oncologistはしばしば、倫理上の疑問やジレンマに遭遇する。例えば、実際の夫あるいは妻の疾病の予後について患者に話すべきかどうか?人体実験的な治療があることを話すべきかどうか?(安楽死とそうでないとにかかわらず)患者が早期の死を望むことにどのように向き合うのが正しいのか?などである。

また、抗癌剤治療を研究する臨床腫瘍医の主な研究対象は抗癌剤の組み合わせ療法にある。また、「既存の化学療法が効果が期待できず、患者の延命に対して多少のリスクは容認する」という考え方により開発途上の治験薬が利用させる場面も多い。これは新しい治療法を開拓するという面だけではなく、製薬会社の臨床試験という一面も持つ。このため、米国臨床腫瘍学会ASCO(American Society of Clinical Oncology)でも製薬会社の巨大資本の影響・介入が避けられない問題がある。
腫瘍学研究と進歩

腫瘍学の最前線で、腫瘍細胞生物学から化学療法の投薬方法あるいは疼痛治療や鎮痛の最適化などの領域に渡って、膨大な量の研究が実践されている。このことにより腫瘍学はエキサイティングで変化し続ける学問領域となっている[要検証ノート]。
代替治療

数多くの治療法が患者に試されている。その中の幾つかは医学界からは疑わしいとされている物もある。例えば、レアトリルRとして知られている、アプリコットの種から抽出されるアミグタリンがある。他にもハーブ製剤など種々の生薬が試行されている。ある外科医は投与方法を改良した、IPTと略すインスリン増強療法で、化学療法が多くの実績を挙げたと主張している。

他にも人体の免疫系を賦活し、癌に対する治癒能力を高めることを原理とする種々の試みがある。あいにくなことに、多くの癌は細胞表面の自己認識抗原は、まったく健康なオリジナルな細胞のものとそっくりなので、ほとんどの免疫療法は大抵の癌には効果がない。

ある患者は、ビジュアル化(自己催眠)といったような補助療法という呼称で知られている方法を試すものもいる。このように広く実践されているが明確な効果がないので、それらの多くは、やっても害がないというだけである。患者が医学的な治療を受けているのであれば、精神の安寧をサポートする意味があるかもしれない。

但し、近年は西洋医学と代替医療を合わせた統合医療によって癌の治療を行うことが盛んになってきており、日本でも一部の医療機関によって始められている。

心理社会腫瘍学、精神神経免疫学に基づいて、カウンセリングにより患者の心理面をサポートすることにより、治癒効果を高めたり生活の質(QOL)を高めることを目的とした治療も行われている。創始者のカール・サイモントンにちなんでサイモントン療法と呼ばれる。

免疫療法も、開発・臨床試験が進んで医療機関で用いられ始めており、高度先進医療に指定されているものもある。
脚注[脚注の使い方]
出典^ 本明寛『中高年のこころの健康学』金子書房、2006年、87頁
^ 2017/4/24付 日本経済新聞 朝刊

参考文献

Vickers, A. Alternative Cancer Cures: "Unproven" or "Disproven"? CA Cancer J Clin 2004 54: 110-118. ⇒
Full text online

関連項目

精神腫瘍学

緩和医療

悪性腫瘍

発癌性

放射線医学

世界対がんデー

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