腕時計
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イギリスのオイスター社の防水式「オイスターケース」がロレックスの時計に搭載され定番となる。以後、より簡易な方式の防水時計も各国で作られるようになる。

1934年 - スイスで、テンプの芯(天芯)を受石ごとばねによる浮動支持とした腕時計耐震機構「インカブロック」(Incabloc)が実用化。落下などの衝撃による、時計の天芯折れ故障を減らすことに成功。以降、類似の浮動式耐震機構が多くの腕時計に導入される。

1957年 - ハミルトンが世界初の電気式腕時計『ベンチュラ』を発表。

1960年 - ブローバが音叉式腕時計『アキュトロン』を発表。

1961年 - ポレオットの『シュトゥルマンスキー』が宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンによって、史上初の宇宙で使用された腕時計となる。

1969年 - オメガの『スピードマスター』が月で使用され、世界で初めて地球外天体で使用された腕時計となる[3]

12月[6] - 服部時計店が世界初のクォーツ式腕時計『アストロン』を発表。


1970年 - ハミルトンが世界初のデジタル表示の腕時計『パルサー』を発表。

1990年 - ユンハンスが世界初の電波式腕時計『メガ1』を発表[7]

2011年 - シチズンが世界初の衛星電波式腕時計『エコ・ドライブ サテライトウエーブ』を発表[8]

2014年 - カシオが世界初のハイブリッド時刻取得システム(GPS受信+標準電波受信)を搭載した腕時計『G-SHOCK』発表[9]

2017年 - カシオが世界初の3つの時刻取得システム(Connectd エンジン 3-Way)を搭載した腕時計『G-SHOCK』発表[10]

腕時計の誕生

腕時計の最古の記録はジュネーブの時計商ジャケ・ドロー&ルショー1790年のカタログに記載されたものと言われている[2]。また、現存する最古の腕時計はパリの宝石商が1806年に製作した、時計を組み込んだエメラルドのブレスレットとされている。1810年には時計細工師のブレゲがナポリの王妃(カロリーヌ・ミュラ)のために、金髪と金で編んだベルトで腕に装着できるミニッツリピータとバイメタル温度計を備えた卵型の時計を製作して2年後に完成させた(現在は行方不明)。このように宝飾品として製作された例は以前からあったがほとんどが一点物であり、普及したものはなかった。

腕時計が製品化された契機は、からの需要である。懐中時計を片手に砲撃のタイミングを計測していた砲兵が手首に懐中時計をくくりつけて使用する工夫から始まったとされている。ドイツ軍がこのアイデアの製品化を時計メーカーに打診している。1879年ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世ドイツ海軍用としてジラール・ペルゴに腕時計を2,000個製作させたという記録が残っている[11]。この時計は網目状の金属製カバーを備えていた。

その他草創期の使用例としては1899年ボーア戦争でイギリス軍将兵が懐中時計を手首に革ベルトで装着した例がある。当時はホレイショ・キッチナーの名を取り「キッチナー・ベルト」と呼ばれた。
初期の腕時計

オメガは世界に先駆けて1900年に腕時計を商品化し、1902年には広告を打っている。しかし当時は女性用懐中時計の竜頭位置を横に変えて革ベルトに固定しただけのものでデザインの無骨さから、一般に普及することはなかった。その後腕時計専用のケースとムーブメント開発が行われるようになったが、依然として男性用は懐中時計が主流で、腕時計は正式な存在とは見なされなかった。

特定ブランドの腕時計として最初に人気製品となったのは1911年にフランスのカルティエが発売した角形ケースの紳士時計「サントス」である。「サントス」の原型は、ルイ・カルティエが友人の飛行家で富豪のアルベルト・サントス・デュモンに依頼され、飛行船操縦中の使用に適した腕時計を製作したものであった。後年その洗練されたデザインがパリの社交界で話題となり、市販されるに至った。「サントス」はスポーツ・ウォッチの古典となり、21世紀に入った現在でもカルティエの代表的な製品の一つとして市販されている。

第一次世界大戦は腕時計の普及を促す契機となった。ハミルトンブライトリングが軍用腕時計を大量生産するようになり[12]、男性の携帯する時計は懐中時計から腕時計へと完全に移行した。戦後には多くの懐中時計メーカーが腕時計の分野へ転身した。

第二次世界大戦以前からの主要な腕時計生産国としては、懐中時計の時代から大量生産技術と部品互換システムが発展していたアメリカ合衆国のほか、古くから時計産業が発達したスイスイギリスドイツなどがあげられるが、後にイギリスのメーカーは旧弊な生産体制が時流に追いつかず市場から脱落し、ドイツのメーカーは廉価帯の製品を主体とするようになった。アメリカのメーカーも1960年代以降に高級品メーカーが衰亡してブランド名のみの切り売りを行う事態となり、正確な意味で存続するメーカーは大衆向けブランドのタイメックスのみとなった。

スイスでは時計産業が膨大な中小零細企業群による分業制に基づいて形成されており、廉価品から高級品まで広い価格帯の製品を供給することができた。業界全体の連携が進み、1920年代以降は産業防衛目的のカルテル構築が本格化、1934年にはスイス連邦政府が政令による時計産業保護(ムーブメント部分のみの輸出に起因する国内時計産業の空洞化防止や、他国の時計産業伸長を防ぐ目的の時計製造機械の輸出管理など)に乗り出した。スイス時計産業の独特な構造は1960年代までスイス時計の国際競争力を維持し、最盛期には自社でムーブメントを製造できる一貫生産メーカー(マニュファクチュール)のほか、多数のムーブメント専業メーカーに支えられた有名無名の膨大な時計ブランド(エタブリスール)を擁した一方、業界全体の近代化では後れを取る結果となった。

なお、スイスメーカーのムーブメントを部品として輸入して、ケース製作と最終組み立てのみ輸入国で行うノックダウン生産手法の一種「シャブロナージュ」(chablonnage)は、関税抑制の目的で懐中時計時代の19世紀末から見られ、腕時計主流の時代になっても盛んに行われた。20世紀に入ってからはアメリカの大手時計メーカーの一部が、スイスに自社現地工場を置いてムーブメント生産を行い、人件費を抑制(当時、大量生産技術をもってしてもアメリカ本国の人件費はすでに高くついていた)しつつスイス時計業界・スイス政府の利益逸出政策を回避する動きも生じた。ジャガー・ルクルト製自動巻腕時計の内部
自動巻腕時計セイコー・プレスマチックのムーブメント。上部に回転式ローターが見える

自動巻腕時計(Automatic watch)とは、時計内部に半円形の錘(ローター)が組み込まれており、装着者が腕を振ることにより錘が回転し動力のぜんまいを巻き上げるものである。錘を仕込んだ自動巻機構自体は懐中時計用としてスイスのアブラアン=ルイ・ペルレ(英語版)により1770年ごろに発案されていたが、ポケットに収まった安定状態で持ち運ばれる懐中時計よりも、手首で振られて慣性の働きやすい腕時計によりなじむ技術であった。それに対してブレゲは振り子による自動巻き「ペルペチュエル」を開発したが、構造が複雑だったため一般には普及せず、19世紀の懐中時計のほとんどは鍵巻きおよび、パテック・フィリップの創始者の一人であるアドリアン・フィリップ(英語版)が1842年に発明した竜頭による手巻きであった。

最初の実用的な自動巻腕時計となったのはイギリスのジョン・ハーウッド(英語版)が開発した半回転ローター式(ローターの片方向回転時のみでぜんまいを巻き上げる)で、1926年にスイスのフォルティスから発売された。続いてより効率に優れる全回転式ローター自動巻(ローターの回転方向を問わず歯車機構の組み合わせで一定方向の回転力を取り出し、ぜんまいを巻き上げられる)がスイスのロレックスで1931年に開発され、同社は「パーペチュアル」の名で市販、オイスターケースと呼ばれる防水機構とともにロレックスの名を広めた。

初期のロレックス自動巻に代表される手法の弱点は、ローターの存在する分、手巻式ムーブメントに比して厚手でかさばってしまうことで、主要な時計メーカーは自動巻ムーブメントの改良過程で、薄型化と簡略化、効率良い動力の取り出し方を試行錯誤した。片方向回転式や、オメガの一部機種のようにローターの回転幅を制限した過渡的なモデルなども見られたが、1950年代以降は大幅に薄型化された両方向全回転式ローターの自動巻が本命となって普及、現在の自動巻腕時計では全回転ローター式が一般化している。また、ローターの形状もペルレの時代の半円状から、外周部になどの重金属を使用したり中抜きした形状にするなどして回転効率を向上させている。

自動巻腕時計の多くは竜頭を用いてぜんまいを手巻きすることもできるが、構造を簡素化する目的で自動巻専用としたものもある。自動巻は装着されている間ぜんまいの力が適度な程度に蓄えられ、手巻き式に比べて精度が高くなる傾向がある。身に付けていない場合にはワインディングマシーンにセットしておくことでぜんまいを巻き上げておけるため、機械式腕時計の収集家がその種の装置を用いる例が見られる。
日本の腕時計

日本では1913年服部時計店が国産初の腕時計「ローレル」を発売しているが、その7石ムーブメントは懐中時計との共用品であった。サイズの制約が厳しい腕時計の技術でスイスやアメリカの製品に比肩することは容易でなく、日本製腕時計への評価は当の日本でも第二次世界大戦後まで決して高くなかった。


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