6週間程度で脳神経伝達物質の代謝は正常化するが、正常化後も「注意・集中力の低下」「記憶障害」等の神経心理学的症状(認知機能障害)や目眩、疲労感、頭痛、睡眠障害などさまざまな脳震盪後症候群症状 (ICD-10) が現れることがある[10][2]。
脳震盪を繰り返すことでダメージが累積され、数年後に慢性外傷性脳症 (chronic traumatic encephalopathy, CTE) に至ることがある[2]。若年性痴呆、高次脳機能障害、運動ニューロン疾患との関連性が報告されている[11][12]。 後述の外見的所見による診断では患者の主観的な訴えに頼るため、診断の正確性に欠け数時間の状態観察が行われることが多いが、診断および治療開始の遅れにより慢性的な不定愁訴や身体障害の後遺症に進展することもある。このような事情を背景として、血液検査により脳の損傷程度を把握する手法が 2016年に報告され[13]実用化に向けた研究が進められている[14][11]。 「脳震盪を起こした場合」「脳震盪の疑いのある場合」「バランステストの異常」のいずれかひとつに該当する競技者(選手)は、即刻退場となり競技および練習を継続することはできない。また、医師の診察や医療機関受診が必須となる。更に、受傷後最低14日間は、いかなる運動も禁止して安静する。アスピリン・鎮痛剤なども使用しないこと[15][16]などがガイドラインとして発表されている。 また、競技に復帰する際は、段階的競技復帰プロトコル (GRTP) に従って復帰することが求められている[17]。 脳震盪の疑いの所見とは、 脳震盪の疑いの症状とは、 バランステストとは、「利き足でないほうの足を後ろにして、そのつま先に反対側の足の踵をつけて一直線上に立つ。両足に体重を均等にかけ、手を腰にして、目を閉じて20秒間じっと立つ。もしバランスを崩したら、目を開けて元の姿勢に戻してまた、目を閉じて続ける」ことを行う。 このとき、20秒間で、6回以上バランスを崩したら(下記のようなことが起こったら)、退場 野球においては、頭部への死球または打球の直撃や選手同士の交錯などで脳震盪を発症する事例があり得る。また、練習中においても頭部へ受傷する可能性はあり、実例として2020年2月の春季キャンプ中に、東北楽天ゴールデンイーグルスの打撃投手であった戸村健次が、防球ネットの縁に当たって跳ね返った打球を頭部に受け、頭蓋骨多発骨折と前頭葉に軽度の脳挫傷を負っており、この事態を受け、球団は打撃投手へのヘルメット着用を義務付けた。また、脳震盪によるセカンドインパクト症候群の危険性を配慮し、戸村をスコアラーに転属させる措置も取られている[18][19]。 日本野球機構(NPB)においては、2016年のシーズンより出場選手登録の特例措置として「脳振盪登録抹消特例措置」のプロトコルを導入している[20]。詳細は「出場選手登録#脳震盪登録抹消特例措置」を参照 頭部への衝撃を緩和するための「ヘルメット」「ヘッドギア」「マウスガード」[21]などの装具装着は一定の効果があると報告されている[8]。また、頸部筋肉の強化もリスク軽減に効果があるとされている[8]。更に、指導者に対する講習会や知識の普及や啓発活動は有用である[22]。
診断
鑑別診断
スポーツにおいて
フットボール・ラグビーにおける脳震盪の扱い
意識消失
ぼんやりする
嘔吐
不適切なプレーをする
ふらつく
反応が遅い
感情の変化(興奮状態、怒りやすい、神経質、不安)
頭痛(プレーを続けることができない程度)
ふらつき
霧の中にいる感じ
以下の質問に正しく答えられない(見当識障害・記憶障害)
「自分のチーム名を言いなさい」「今日は何月何日ですか」「ここはどこの競技場ですか」「今は、前半と後半のどちらですか」
手が腰から離れる
目を開ける
よろめく
5秒以上、元の姿勢に戻れない
日本プロ野球における脳震盪の扱い
予防
脚注[脚注の使い方]^ a b c 青村茂「脳震盪およびDAIにみる頭部外傷メカニズムの解明(キーノートスピーチ)
^ a b c d e f g 永廣信治、溝渕佳史、スポーツ頭部外傷を可視化する
^ 「脳損傷の生成機序に関する最近の進歩