脳波
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一側性に出現しないときはその部の半球が異常[5]
睡眠賦活法
睡眠によって突発波誘発させる方法である。自然睡眠で行う場合と薬物により睡眠を導入する場合もある。棘波が賦活されやすい[5]
音刺激
背景脳波の変化などを見る。脳死判定の時に行う(右耳、左耳、それぞれに、3回以上、大声で耳元に近接して名前を呼ぶ)。
痛み刺激
意識障害、脳死判定の時に行う(顔面への疼痛刺激)。
意識障害の脳波

脳波所見と意識障害の程度に関してはある程度の相関が認められる。

障害の程度刺激への脳波反応基本所見
軽度あり正常基礎律動あり
  正常基礎律動の徐波化
  びまん性間欠性徐波の出現
  IRDA (intermittent rhythmic dekta activity)
  三相波
  びまん性持続性多形性徐波
  周期性パターン
  α昏睡
  低振幅持続性徐波
  burst suppression
  background suppression pattern(<10μl)
高度消失電気的大脳無活動(electrocerebral inactivity)(<2μl)

目安としては以下のように評価することもある。

程度状態
軽度の意識障害意識が清明な場合は開眼によってα波が抑制されるが、眠気があり軽い意識混濁が認められると開眼してもα波は持続して現れる。
中等度の意識障害低振幅脳波や広汎性徐波を示す。音刺激などで脳波が反応することがあり、この場合は回復の可能性がある
高度の意識障害θ波などの他に、三相波、PLEDs、supression-burst,α-comaなどが認められる。

意識障害で特徴的な波形

延髄障害では脳波は正常であるが橋や中脳の障害では紡錘波や高振幅不規則徐波が出現する。間脳障害では高振幅不規則徐波が出現する。
α昏睡
脳幹障害、低酸素脳症、薬物中毒で認められる。8?12Hzのα波が優位であり昏睡初期に見られることが多い。脳幹障害によるものは後頭優位にα波が出現するが低酸素脳症では広汎性かつ前頭部優位の傾向がある。予後が不良な例が多い
β昏睡
全誘導にわたる低振幅速波が特徴的である。椎骨脳底動脈の閉塞、脳幹部の出血の際に認められる。薬物中毒での出現例の報告もある。病変部位はα昏睡と同様であり、なぜ脳波所見が異なるのかは不明。
θ昏睡
意識障害時に前頭部または前頭、中心部優位に出現するθ波を主成分とした脳波所見である。視床網様体と脳幹網様体の一方または両方の破壊で出現すると考えられている。
δ昏睡
このパターンの脳波が最もよく認められる。脳波所見と意識障害の程度が相関する。脳炎、代謝障害、中毒、低酸素の場合は脳幹網様体の直接障害により、占拠性病変の場合は脳圧亢進による二次的な網様体の機能異常でおこるとされている。
三相波
当初は肝性脳症で認められると報告されたが、その他の病態でも出現する。徐波が主体の脳波であり、陰?陽?陰の三相の波がほぼ同期し、頭部前方優勢に現れる。頭部前方から後方にかけて波に時間のずれが見られる。またバーストや群として現れ、振幅の減衰や抑圧が認められることもある。
PLEDs
棘波、鋭波、あるいは複合波が1秒 - 2秒の間隔で片側性に繰り返し現れる場合をPLEDs(プレズ)という。両側に認められる場合をBiPLEDsという。
てんかんの脳波

てんかんの研究は臨床脳波学における中心課題の一つであり脳波が最も威力を発揮するのも、てんかんの領域である。国際抗てんかん連盟(ILAE)のてんかんおよびてんかん症候群の1989年分類で本稿は説明する。1989年分類では、てんかんをまず全般てんかん(全般発作をもつてんかん)と局在関連(部分、焦点)てんかん(部分発作あるいは焦点発作をもつてんかん)に分ける。他方、病因によって本態性(原発性)てんかん、症候性てんかん、潜在性てんかんに分け、両要因を組み合わせて診断する。
部分発作

部分発作とは最初に現れる臨床的ならびに脳波的変化が、一側あるいは両側半球の一部に限局した解剖学的あるいは機能的ニューロン系の賦活が起こっていることを示している発作である。意識が障害されないときは単純部分発作に分類し、意識が障害されるときは複雑部分発作に分類する。
単純部分発作

単純部分発作は焦点局在部位によって、運動徴候をともなうもの、自律神経症状をともなうもの、体性感覚症状あるいは特殊感覚症状を伴うもの、精神症状を伴うものに分類される。単純部分発作の発作時脳波は対応する皮質機能局在領野に始発する局在性反対側性発射であるが頭皮上から常に記録できるとは限らない。発作発射(seizure discharge)は棘波の律動的発射の場合もあり、それより遅い種々の周波数の突発性律動波であることもありえる。臨床上単純部分発作であっても発作時あるいは発作間欠時に脳波上に焦点性突発波がみられない場合は少なくない。単純部分発作の間欠期の脳波は簡単にいうと局在性反対側発射である。焦点発作の部位別の出現頻度では側頭前部焦点、半球性、側頭部、多発性、後頭部、頭頂部、前頭部の順に認められる。

Jasperによる1954年の検討では単純部分発作の焦点性発作性脳波異常は3つに分類することができる。
局在性表在性皮質焦点
頭皮上長径3?4cmの範囲内に散発性の持続の短い棘波が出現し、他の領域にはほぼ正常な脳波が認められる場合には表在性の皮質焦点が想定される。
埋没焦点と二次性両側同期
傍矢状焦点(一側大脳半球の内側)、基底部焦点(大脳半球の下面)、大脳内焦点などが知られている。
広汎性てんかん原領域

複雑部分発作

複雑部分発作は意識障害を伴い、あとに健忘を残す発作である。単純部分発作ではじまり、途中から意識障害を起こす場合と最初から意識障害を伴う場合がある。精神運動発作とほぼ同義であるが一部重ならない点もある。複雑部分発作はふつうは側頭部あるいは前頭、側頭部の皮質、皮質下領域(嗅脳、辺縁系を含む)の一側性または両側性の損傷によっておこる。側頭葉てんかんとの関連が重要である。側頭葉てんかんでは発作発射が側頭葉皮質、島などの皮質から辺縁系(海馬、扁桃体)にいたる投射路を限局性に侵襲すると単純部分発作、すなわち精神発作(錯覚、幻覚)などが出現する。これを外側側頭葉発作という。発射が辺縁系に広がると複雑部分発作とくに自動症を伴うことになる。これを扁桃体・海馬発作という。複雑部分発作の発作間欠期の脳波は一側性あるいは両側性の、ふつうは非同期性の焦点があり、焦点はふつうは側頭部あるいは前頭部に出現する。発作時脳波は一側性の、あるいは両側性の発射で広汎性あるいは側頭部、側頭・前頭部に焦点性に出現する。
二次性全般化

二次性全般化発作は部分発作から二次的に全般化した発作であり、主に現れる発作は強直間代発作である。二次性全般化発作は単純部分発作から強直間代発作が起こる場合、複雑部分発作から強直間代発作が起こる場合、単純部分発作から複雑部分発作を経て強直間代発作となる場合の3パターンが考えられる。単純部分発作か複雑部分発作か明確に区別できない場合もある。
全般発作

全般発作は最初の臨床的徴候が、発作開始時に両側の半球が侵襲されていることを示す発作である。意識は障害されることがあり、この意識障害が発作開始時の症状であることもある。運動現象は両側性である。発作時脳波像は発作開始時両側性であり、これはおそらく両側半球に広汎に広がっているニューロン発射を反映している。全般性てんかんは、てんかんの国際分類では特発性で発症が年齢依存性のもの、潜在性あるいは症候性のもの、症候性のものの3つに分かれる。特発性で発症が年齢依存性のものには欠神てんかん、若年欠神てんかん、ミオクロニーてんかん、大発作てんかんなどが含まれる。症候性のものにはウエスト症候群、レノックス症候群、ミオクロニー・失立てんかん、ミオクロニー欠神てんかんが含まれる。てんかん発作の国際分類では全般発作は欠神発作(定型、非定型)、ミオクロニー発作、間代発作、強直発作、強直間代発作、失立発作に分類できる。本稿ではてんかん発作の分類に従い解説する。
欠神発作

欠神発作の純粋な型は、前兆なく突然始まり数秒から20秒ほど持続し、突然終了する。それまで行なっていた諸活動の中断、空虚な凝視、場合によっては短時間の眼球上転が認められる。患者が話をしていれば話しは中断され、歩行中ならばその場に立ちすくみ、食事中ならば食物が口に運ばれる途中で止まる。発作中に話しかけると場合によってはぶつぶつとつぶやくことはあるが普通は応答できない。


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