脱毛症
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これらの薬品は薬品付属の文書、および担当医などの診断による助言を守れば、とくに早期の男性型脱毛症においては効果が認められている。一般に育毛剤の効果を判断するには最低半年程度、同じ薬剤を適切な状態で使い続けることが必要である。この二種類の薬剤が世界的な販売実績と評判を得た事で、さらに効果の高い発毛剤と認められる薬剤が世界的に研究されるようになった。

医薬品ではない育毛剤では、薬機法上、発毛効果を広告で表現できないため、注意が必要である。[9]
外科的手法

美容外科手術の一種で、自毛植毛と呼ばれているものである。
人工毛移植手術

頭皮に人工毛を挿入する美容外科手術である。自毛移植手術と異なり、移植本数に制限がなく、全禿げでも施術可能という利点はあるが、人体に異物を挿入する手術であるため、免疫拒絶反応により頭皮が炎症を起こすことがある。当然ながら人工毛は成長せず、生えかわることもないので、抜け落ちてしまえば再手術が必要である。副作用が多く報告されたため、現在アメリカでは行われていない。また、日本皮膚科学会から発表された男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)でも推奨度D(行わないよう勧められる:無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)になっている。
自毛植毛

自分自身の毛髪を脱毛箇所に移植する美容外科手術である。自分自身の組織を移植するため、免疫拒絶反応が起こらない安全性の高い手術である。また、本物の生きた毛髪であるため、日々成長し続け、抜けてもまた生えかわり、一度手術をした後はメンテナンスは不要である。

男性型脱毛症では、脱毛を起こすのは頭頂部と前頭部であり、後頭部の毛髪は生涯脱毛を起こすことは少ない。この毛根の性質は遺伝子的に決まっているものであるため、人体の他の場所に移植しても変わることがなく、毛を生やし続ける。このような皮膚の特性は奥田庄二医師が1939年に発見した。この性質を利用して、後頭部の毛髪を、毛根と周囲の皮膚ごと脱毛箇所に移植すると、移植した毛髪は生涯毛を生やし続ける。これが自毛移植手術である。

このような手術は米国では1970年代から広く実施されてきた。しかし初期の移植技術では、髪と皮膚の色の違いが大きい黄色人種に施術すると移植した毛が不自然に見えてしまったため、自毛移植手術の原理を発見したのが日本人であるにもかかわらず、日本ではほとんど実施されることがなかった。

しかし近年、移植元となる毛髪がある皮膚(ドナー)を毛髪2?3本ごとの小片(グラフト)に株分けして、禿げている箇所に分散配置するマイクログラフト法が開発された。この方法では、ドナーの皮膚で脱毛箇所を置き換えるというよりも、グラフトの毛髪を成長させて脱毛箇所を覆い隠すという考え方になる。さらに数千本の毛髪を一度の手術で移植するメガセッションが可能になったことで十分な密度を得ることができるようになり、黄色人種への施術ができるようになった。現在の医学では、自毛移植手術が脱毛症の最終的解決手段と考えられるが、以下のような問題点がある。

費用が高額
移植毛の株分けや、移植箇所への植え込みには、特別な訓練を積んだ医師と看護師のチームが必要であり、人件費からして高額にならざるを得ない。また、病気の治療ではないため健康保険は適用されず、全額自己負担の自由診療になる。しかし、一旦手術をすればそれ以降の出費は一切ないため、長期的に見るとかつらや増毛よりも割安であると言われている。

頭皮に傷がつく
移植元の頭皮はドナーを切除した後に縫合し、移植先の頭皮には器具で穴をあけてグラフトを挿入する。つまり刃物で頭皮を傷つけるので、ドナーを切除した箇所は線状痕に、グラフトを挿入した箇所は凸凹になる。手術技術が向上したため、見た目にもわかるほどの傷や凸凹ができることはなくなったが、触れば判る程度の凸凹ができることは避けられない。このため、頭垢がたまりやすくなる、スキンヘッドにはできなくなる、といった問題がある。

手術可能な毛髪量が限られる
ドナーを切除した箇所は縫合するため、ドナーを取りすぎると頭皮が突っ張ってしまう。ドナーにできる毛髪量は体質によって異なるが、生涯で約1万2千本と言われている。

ショックロスが起こる可能性がある
植毛手術後に、もともと生えている毛が抜け落ちる場合がある。明確な原因は解明されていないが、術後の炎症反応や麻酔による副作用、人為的なミス、移植したことで髪全体に栄養が行き届かなくなったなど、さまざまな説がある。基本的にショックロスは一時的なものであり、早ければ3ヶ月、遅くとも1年ほどで元の状態に戻るケースがほとんどである[10]

全禿げ(丸禿げ)や、禿が非常に広い場合には適用できない

なお、費用以外の問題は、幹細胞培養による毛髪のクローニングが実用化されれば解決されると言われている。

男性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)[11]でも推奨度B(おこなうよう勧められる:少なくとも1つ以上の有効性を示す質の劣るレベルIIか良質のレベルIIIあるいは非常に良質のIVのエビデンスがあること)になっている。つまり、自毛植毛は勧められる薄毛治療であるが、技術の熟達した医師のもとで行うべきであるとしている。

自毛植毛をしてもフィナステリドやデュタステリドの内服を一生涯続ける必要がある。植毛で定着した毛は生涯AGAに侵される事は無い。しかし、前頭部から頭頂部にもともと生えている毛はフィナステリドやデュタステリドを内服しなければAGAの進行とともに弱毛化しやがて抜けて生えなくなる。植毛をして5α-リダクターゼ阻害薬を内服しなければ、将来植毛した毛だけが残っているという状態になりかねない。しかし、フィナステリドの内服等だけで薄毛を完全に治療する事は現時点では困難であり、どうしても自毛植毛に頼らざるを得ない事も確かである。内服薬、外用薬、注射、レーザーと自毛植毛を組み合わせて多角的に薄毛を治療するクリニックも出現している。

脚注[脚注の使い方]^ “FAGA(女性男性型脱毛症)の原因と対策”. 2020年2月12日閲覧。
^ 世界で最も薄毛の国民は?原因は何?
^ 毎日新聞 2010年5月12日  ⇒育毛剤:毎日新聞記者が体験…生える場所は選べず
^ 毎日新聞 2010年4月13日  ⇒脱毛症:育毛成分など対症法5段階評価…学会が診療指針
^NHK NEWS web 年齢とともに髪の毛が薄くなる仕組み 解明 2016年(平成28年)2月5日 4時00分
^ “薄毛の方も利用しやすい薄毛専門美容室で、さまざまな髪型を楽しもう!”. 2023年3月30日閲覧。
^ “増毛の方法とメンテナンスについて|植毛との違いやメリット・デメリットとともに解説|男性ホルモン研究所”. 男性ホルモン研究所. 2022年6月9日閲覧。
^ “プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意喚起について”. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1a.html 2013年12月15日閲覧。 
^ 薬機法で育毛剤ができる広告表現は?発毛剤や養毛剤との違い
^ “植毛は2週間で抜ける?寿命や効果の持続期間・伸びるまでの経過を徹底解説!”. MOTEO. 2022年6月9日閲覧。
^ 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版 日本皮膚科学会ガイドライン

関連項目

脱毛

男性型脱毛症

脱毛の治療

かつら (装身具)

典拠管理データベース: 国立図書館

ドイツ

ラトビア

日本


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