物語を簡単に紹介したもの。四百字から八百字程度にまとめ、エンディングまで書く。最初に必要なもの。スポンサーやプロデューサーによっては、あらすじがないと脚本を読まないことが多い。一般的にストーリーやプロットと呼ばれることがあるが、これらは別なものになる。企画書とは異なる。 ※「柱」「柱書」などとも呼ぶ。 「ト書き」の言葉の由来は歌舞伎の台本の「…と立ち上がりながら」などの「と」から来ている。文体は「…であった」などの過去形ではなく「…である」などの現在進行形で書くのが一般的である。
ストーリー
物語の表面を浅くなぞったもの。深く掘り下げたものは必要なく、あらすじよりも短く、盛り上がりを誇張して企画書に添付することが多い。
プロット
構成や展開を意識したもの。ストーリーやあらすじよりも掘り下げ、脚本執筆の準備に近いもの。
人物表
脚本・戯曲
脚本の中に登場する人物を主役から端役まで一覧表にしたもの。主要な人物は名前、年齢、性別、人物関係が書き込まれる。名前のつかない人物は、通行人1、若しくは店員Aなどの記号で表記する。
漫画原作
書式は脚本と同じ。身長差や顔の特徴、またキャラクターを立てる行動を要求される。《例:両津勘吉(28)警察署・巡査》など。性別、人間関係は割愛されることが多い。
柱書き
脚本・漫画原作
シーンの最初に書かれ、その場所と時間を示している。柱の頭にはシーンナンバーを振る。シーンナンバーは打ち合わせを円滑に進め、映像の場合は撮影計画、または編集作業に必要とされる。《例:○警察署・外観(夜)》など。原稿を執筆する段階では、シーンナンバーは○で示される。これはシーンが移動する場合があるため。印刷される段階で、初めてシーンナンバーを振ることがほとんどである。英語では、sluglineと呼ぶ。場所の名称の前に、その場所の内側なのか外側なのかを表すために、INT(内)やEXT(外)などの記号を付記するのが、アメリカ映画脚本では一般的である。たとえば、ただ「ジョージの家」と書いてあっても、家の前なのか室内なのかが区別できないからである。
戯曲
舞台装置を転換してシーンを変えることを「場」。幕を下ろすほどの場面転換や休憩を挟む間を「幕」という。したがって戯曲の柱に当たる部分はそれにナンバーを付けたものが書かれる。《例:第一幕 第一場 下町の路上》など。
台詞(セリフ)
脚本
登場人物がしゃべる言葉を「」で括って記述する。「の前に役者の役名を記述する。性別が分かりやすいように男性は名字、女性は名前で書くのが一般的。ナレーションの場合はNと書く。その場にいない(映像では画面に映っていない)人物の台詞は、冒頭に(OFF)《読み:オフ・ボーカル》と書くことで指定する。内心の台詞は(M)《読み:モノローグ》と表記する。《例:両津(OFF)「そんなことが……」》または《例:山田の声「そんなことが……」》など。
戯曲
書式は脚本と同じ。劇場の規模によっては、役者の演技や持ち道具、小道具が見えない場合が多々あるため、または演出家の狙いで状況を台詞で説明する場合が多い。これによって、大怪獣が現れたり、数百人の機動隊に囲まれたりする芝居の世界観を作り出す。台詞の流れを印象付けるため、「倒置法」という台詞回しを使うことがある。《例:「今日はいい天気だね」→「いい天気だね! 今日は」》など。
漫画原作
書式は脚本と同じ。台詞は吹き出しに収まるように要求される。長台詞の場合は三行台詞があって行動(ト書き)し、また三行台詞を繰り返す。基本的にはテキストなので、「強敵(ライバル)」または「友人(ライバル)」などのルビを入れて、二つの意味を持たせることもある。また擬音(オノマトペ)なども原作者の仕事である。語尾などにキャラクターを立てる台詞を要求されることもある。《例:「…だよーん」「…なのだ」》など。
ナレーション
登場人物の心象や内心、人間関係の説明。状況、事情などを語るときに使われる。登場人物自らがナレーションする場合と、別にナレーターを立てる場合がある。多用すると、映像作品としての意味を問われる場合があるので、あまり好まれないが、見せたいシーンの構成や、込み入ったストーリーでは物語の整理をつけ、分かりやすくするために使われる。同じような意味で、物語の冒頭でテキストされることもある。
ト書き
脚本
登場人物の動作や、照明、演出の大まかな指示を記述する。目に見える具体的な動作を書くことが必須とされており、人物の心理描写や抽象的な表現を書くことは通常は行われない。また、必要ならば映像効果を指定する。最終的には監督、演出家の采配に委ねるが、これは台詞で人物の性格を浮き彫りにすると同様、映像描写に関わることは脚本家の仕事である。また、男女の絡み、いわゆる濡れ場やアクションなどはストーリーの流れだけ書き、具体的なことは書かない。この長さで全体の尺の長さが左右されることが多く、アクションは特に殺陣師の領域になるためである。
戯曲
舞台上に何があるか。役者は板付きか。上手、下手どちらから出るかが中心になる。舞台装置との絡みがあればそれも書くが、重要でなければ書かない。台詞よりも映像、作画で見せる脚本または漫画原作とはここが大きく違う。台詞だけでストーリーが分かり、役者、演出家が自由に表現できる「遊び」がある。様式が決まっている歌舞伎台本と戯曲とは、今日では大きな隔たりがある。
漫画原作
美術、小道具、衣装などのスタッフがいないためト書きの他、必要ならば設定書を作成し全て書く(主人公はタバコを吸うか。吸うなら銘柄は何か。マッチかライターか。ライターなら?など)。時代や年代が大きく分かれる場合は、そのストーリーの年表も作成する。また原作を書く上で収集した資料など、作画にも必要なものは揃える場合もある。濡れ場、アクション・シーンもできるだけ具体的に、なおかつ荒唐無稽に作りこむ。ストーリーの構成も起承転結ではなく、「起承転」までで、引きを作る。これは連載でも読み切りでも同じだが、ストーリーの内容によってはラスト・シーンに作画を見せる余韻を作る。1ページの大ゴマや見開きなどの指定も要求される場合もある。梶原一騎は少年小説出身なので、原作は小説式で書いていた。
ハコ書き
脚本・戯曲
テーマの訴求。尺(時間)の制限。シーンとシークエンスの整理などの作業。例えば起承転結を四つのハコに見立てたものを、大バコと言い、さらに具体的に構成したものを小バコという。台詞まで書かない、ト書きの積み重ねが多い。この時点で制作者や演出部との打合わせをする。
大バコ
大まかな構成。ここではトーンを統一するが具体的なことは書かない。テーマを「起承転結」に落とし込んでいく作業のみに限られる。「結」、落としどころ(ラスト・シーン)を決めてから、ストーリーの雰囲気を掴む「起」(ファースト・シーン)を考え、「承」でストーリーを転がして「転」でサプライズを作る場合が多い。
中バコ
シークエンスの考え方。大バコで作った「起」(ファースト・シーン)の中にも「起承転結」がある。ここで主要人物をどう紹介するかなどを作る。「承」の中での起承転結は、主要人物の葛藤、絶望、新たなる希望などでドラマを作る。後半にサプライズがあれば、ここで伏線を張る。ストーリーで一番長く面白く見せる場所。「転」の中での起承転結では、今までの「起」「承」が助走であれば、ここでジャンプし高く跳躍する場所。サプライズがあれば先に作ってから「承」に伏線を張る場合が多い。高いジャンプが着地した場所が、「結」の中での「起」になり、テンポのよい「承転結」(ラスト・シーン)を作っていく。
小バコ
シーンの考え方。必要ならばカット・バックやモンタージュなどを挿入し、シークエンスをさらに細かく作り込む。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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