脚本
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脚本は、小説とは異なり、複数の人によって書かれることがそれなりにある。テレビドラマシリーズでは、執筆作業の負荷の大きさや放送スケジュールを考慮して、数名交代で担当することもある。テレビドラマシリーズで視聴率が低迷すれば、途中で脚本家が交代することもある。また一話の中でも複数名が関与する場合もある。

なお戯曲を除き、脚本は単独で発表されることは基本的にない。建物や船などの設計図と同じであり、あくまで映像化・漫画化することによってようやく一つの作品とみなされることが多い。このため、どうしても脚本の存在感が弱くなり、監督やプロデューサーによる無断改変が行われてトラブルにつながる場合が時折見られる。戯曲の場合は脚本のみで発表されることも多々ある。

なお日本で脚本に用いられていた原稿用紙は基本的に200字詰め(20字×10行)で、この原稿用紙状態の脚本は「ペラ」とも呼ばれる。近年ではワープロを用いることも多い。役者に渡す前に印刷・製本するので、製本した状態にすると「台本」(ほん)と呼ぶ。
種類
台本
もともとは脚本を台本と言っていたが、現在では、演者に使われる台詞を特に中心としたものを指していることが多い。
台帳あるいは正本(しょうほん)、根本(ねほん)[1]
歌舞伎の脚本の古い呼び方[1]。歌舞伎では近頃は脚本と呼ぶという[1]
シナリオ。
シナリオは映画の脚本、台本[2]。scenarioはアメリカの映画用語である。scenarioという表現を、その語源から説明すると、もとはラテン語のscena(舞台、場面 という意味の言葉)から派生した言葉であり[2]、イタリアではイタリア語で演劇やオペラの "場面(シエーナ)をつないだ筋書き" という意味で使われていた(もともとは即興劇用のおおまかな筋を書いたものを意味していた[3]とも)、それが転じてアメリカで映画用語として使われるようになった。日本でアメリカの映画用語の「シナリオ」を使い始めた経緯は、1920年松竹映画事業に乗り出すため、アメリカから招聘したヘンリー・小谷がアメリカの映画用語のsecenarioを使ったことに始まる。それまでは日本では「台本」という言い方をしていたという[4]。「シナリオ」の辞書に載るような基本的な用法としては、映像劇の脚本を舞台の脚本から区別するために使われる。なお「シナリオ」という用語は今ではコンピュータゲームを制作するために時代・場所・人物(キャラクター)の設定やセリフなどを書いたテキストを指すためにも使われる。
映像脚本
編集により撮影時から前後の不要な部分が切られた一つの動画をカットという。カットとは「屋外の昼の光のもと少女の顔が上を見上げる」などの単一の映像である。このカットが集まって「昼間の草原で。少女が空を見上げる。眩しい太陽に目を細める。母の呼ぶ声が聞こえ振り向く、母がやってくる」などの同一の場所と同じ時間の流れで一つの場面を作り、これをシーンという。シーンが集まって「少女と母の再会」などの単一のストーリー(エピソード)になり、これをシークエンスという。さらにそのシークエンスが集まり「父母の離婚で母と別れた少女が数年後にまた同居する」などの大きなストーリー(エピソード)になる。そしてさらにこのパターンが集まったものが作品である。つまりカットの集合はシーンを形成し、それの集合はシークエンスを形成し、それの集合は作品を形成する。その設計図である脚本では作品が最終的にはカットの集合で表現されることを意識しつつも同一の場所・時間ごとであるシーン毎にその場面の内容を記述する。脚本は関係者全員が作品とその内容について統一されたイメージを持つための唯一の基礎になる。作品の中核となるアイデアとストーリー、登場人物達の性格付け、物語の整合性が脚本で完成していなければならない。また、脚本は作品の規模や完成までの作業期間、必要な予算を見積もるためにも必要である。関係者は脚本に基づいてそれぞれの担当分野でのプランを作成する。役者は脚本に基づいて役の肉付けを考え、照明スタッフは照明プランを、美術スタッフはセットや衣装のプランを、音響スタッフは音響プランを、特撮スタッフはまた特撮カットのプランを練り上げていく。よって、そこには一定の文法なり、書式が存在する。かつて溝口健二が、修行時代の新藤兼人の脚本を一読し、「これは脚本ではなくストーリーだ」とコメントしたことに象徴される。ただし最近[いつ?]では、漫画風の絵コンテとアバウトな説明だけを用意する岩井俊二や、登場人物の台詞を全て役者のアドリブに任せる石川寛など、従来のスタイルとは異なる脚本を使用する監督も少数ながらいる。
演劇(舞台作品)の脚本
稽古の段階で演出家の演技指導が細かく入る場合が多く、したがってト書きは極端に少なく、台詞だけで構成されることが多い。美術、舞台監督は本番に近い舞台装置を稽古場に仮設し、音響、照明スタッフは芝居が作られるにしたがって、演出家がねらった効果を作り上げていく。
戯曲
舞台演劇の脚本のなかでも、テキスト(読み物)として鑑賞できるものは戯曲とも呼ばれる。通常「戯曲」と言うと、印刷されたテキスト自体を独立した作品として読んで鑑賞することができる水準の作品だということも意味する。なおシェークスピアの作品群は、すぐれた古典戯曲であり(つまり、印刷された古典文学作品として楽しめ)、同時にそのままで特上の演劇台本(演劇脚本)である[1](つまり舞台上演用の脚本として用いても最上級のものである)。


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