脊髄
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レクセドはネコの脊髄を使って灰白質をIからXまでの10層に分類した[1][2][3]

白質は大きく前索、側索、後索に分けられる。それぞれ、前索は前根の間、側索は前根と後根の間、後索は後根の間に概ね相当する。前索には上行路として前脊髄視床路、下行路として内側縦束、前皮質脊髄路、視蓋脊髄路、橋網様体脊髄路、前庭脊髄路、延髄網様体脊髄路がある。側索には上行路として脊髄視蓋路、脊髄オリーブ路、外側脊髄視床路、前脊髄小脳路、後脊髄小脳路が、下行路として赤核脊髄路、外側皮質脊髄路がある。後索には上行路として薄束、楔状束が、下行路として半円束、中間縁束がある。また、前索、側索、後索のいずれの部分でも、灰白質と接した部位は脊髄内の上下の連絡を行う神経線維の通る部分で、ここを固有束という。(主な伝導路については後述する)

脊髄は髄膜と呼ばれる三層の膜に包まれており、外側から硬膜(脊髄硬膜)、クモ膜(脊髄クモ膜)、軟膜(脊髄軟膜)と呼ぶ。すべての髄膜は大脳半球および脳幹を包むそれぞれの膜と一体になっている。脳と同様、クモ膜下腔には脳脊髄液が存在する。神経根の間の軟膜の外側は歯状靱帯となって硬膜に付着し、脊髄を固定している。硬膜は第二仙髄の高位で閉じている。
脊髄の分節
頸髄胸髄腰髄仙髄画像ファイル(環境により文字がずれることもあります)

ヒトの脊髄は31の分節に分かれており(これを髄節と呼ぶ)、それぞれの髄節の左右の腹側から運動神経根が、背側から感覚神経根が末梢に出ている。腹側神経根と背側神経根はやがて合わさって脊髄神経となる。

31対の脊髄髄節はヒトでは以下に分類される。

8対の頸髄(第一頸神経は後頭骨と第一頸椎(環椎)の間から、第二頸神経以下はそれぞれ一つ上の高位の頸椎の下(椎間孔)から出る)

12対の胸髄(第一?第十二胸神経は、それぞれ第一胸椎?第十二胸椎の下から出る)

5対の腰髄(第一?第五腰神経は、それぞれ第一腰椎?第五腰椎の下から出る)

5対の仙髄(第一?第五仙骨神経は、それぞれ第一仙椎?第五仙椎の下から出る)

1対の尾髄(尾骨神経は尾椎から出る)

ただし、第一頸髄と尾髄では、背側神経根はなく運動神経根だけが出る。

脊椎は脊髄に比べて成長が早く、最終的に長くなるため、成人では下位の脊髄髄節になるほど、対応する高位の脊椎骨に比べて高い位置にある。発生のはじめ(胎生3ヶ月まで)では脊椎と脊髄の高さは一致しているが、成人の脊髄の終わり(脊髄円錐)はだいたい第一腰椎と第二腰椎の間になる。腰仙髄は第九胸椎から第二腰椎の間にあり、例えば第四仙髄の神経根は胸腰椎移行部のあたりで脊髄から出て脊柱管内を下行し、第四仙椎の下から出る。脊髄円錐より下は馬尾と呼ばれる。

脊髄の径は、次の二つの部位で大きくなっている。

頸膨大 - 大体腕神経叢を構成する神経が出る髄節に一致し、上肢を支配する。第四頸髄から第一胸髄であり、椎骨の高さもほぼ一致している。

腰膨大 - 腰仙骨神経叢(腰神経叢仙骨神経叢)を構成する神経が出る髄節に一致し、第二腰髄から第三仙髄にあたる。脊椎高位は第九から第十二胸椎の高さである。
図5 翼板と基板での脊髄神経の発生。
発生

脊髄は神経管の一部から作られる。神経管が形成され始めると、脊索ソニック・ヘッジホッグ (SHH) を分泌する。これによって底板(神経管の腹側正中にできる部分)が誘導され、さらに底板からもSHHが分泌されて基板(神経管腹側の主に運動神経となるもとの部分)が誘導される。一方外胚葉からは骨形成タンパク質 (BMP) が分泌され、これは蓋板(背側正中にあり、翼板を左右に分ける)を誘導し、さらに蓋板もBMPを分泌して翼板(神経管背側の主に感覚神経となるもとの部分)が誘導される。翼板と基板は境界溝で区切られている。

また底板はネトリンタンパク質も分泌する。ネトリンは翼板の神経細胞のうち、温痛覚ニューロン(後述)に正の走化性を起こす誘引物質として働き、この神経の軸索を中心管の前(脊髄白前交連という)で交叉して反対側の腹側を上行し、視床まで進ませる(前脊髄視床路という、後述)働きをする。

神経系が正しく組み立てられるには、神経細胞でもプログラム細胞死 (programmed cell death, PCD) によって細胞が削ぎ落とされる必要があり、これはかつてヴィクトル・ハンブルガー(英語版)とリータ・レーヴィ=モンタルチーニによってニワトリで研究されたが、最近の研究でも証明されている。図6 脊髄伝導路。
感覚系伝導路

体性感覚性神経系には、触覚固有覚位置覚と振動覚)を伝える後索・内側毛帯路と、温痛覚(温度覚と痛覚)を伝える脊髄視床路の二つの伝導路がある。

どちらの伝導路も、感覚受容器から大脳皮質に情報が伝わるまでに3種類のニューロンがかかわっている。このニューロンを末梢から順に一次・二次・三次ニューロンという。一次ニューロンは脊髄後根神経節に細胞体があり、そこから末梢の感覚受容器と脊髄の両側に軸索を伸ばしている。

触覚・固有覚の経路(後索・内側毛帯路)では、一次ニューロンは脊髄に入ると同側の後索を上行する。第六胸髄以下のニューロンは後索の内側寄りにある薄束を通る。それより上のニューロンは後索の外側にある楔状束を通る。一次ニューロンは延髄に入るとそれぞれ薄束核、楔状束核と呼ばれる神経核でシナプスを形成しニューロンを交代する。二次ニューロンは延髄で交叉(左右のニューロンが入れ替わる)し、内側毛帯と呼ばれる束になってさらに上行して視床の後外側腹側核(VPL核)に入り、三次ニューロンとシナプスを形成する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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