脊椎動物亜門
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しかし1990年代に分子系統解析が始まると、この歴史的な意味での後口動物は単系統にならないことが示されたので、毛顎動物有鬚動物などが後口動物から外され、上述の系統樹にあるもののみが後口動物として残された[12]

なお、珍無腸動物 (Xenacoelomorpha) を含むか否かは2016年現在未確定[13][14][15][16][17]
脊索動物

脊索動物は脊椎動物を含む動物門で、(一生のうち少なくとも一時期に)脊索を持つという特徴をもつ[18]。詳細後述。
脊索動物門における脊椎動物の特徴・進化
脊索動物の特徴

脊索動物における脊椎動物の特徴や進化した点を見るため、本節では脊索動物の特徴を簡単に述べる。脊索動物は下記のような特徴を持つ:

消化管と神経管の間に脊索(大きな液胞で満たされた繊維質の組織)というしなやかな棒状の構造を胚の時期に持つ
[19]。成体でも脊索を保持する種も存在する[19]

他の動物門の胚では腹側に神経索ができるのに対し、脊索動物の胚では背側に環状の神経索(神経管)ができ[19]、脳と脊髄からなる中枢神経系に発達する[19]

消化管は口から肛門まで伸び[19]、胚の時期に咽頭(口のすぐ後ろの領域)の両側に溝のような構造(咽頭溝)ができ[19]、そこに咽頭裂という裂け目ができる[19]。脊椎動物以外の脊索動物の咽頭溝は多くの場合懸濁物食の器官として用いられる[19]

他の動物門では消化管が体の後端まで伸びているものが多いのに対し、脊索動物では肛門の後ろに尾が伸びており[19]、水生の種では尾の骨格と筋肉を推進に用いる[19]。ただし胚発生の段階で尾が退化する種も多い[19]
ナメクジウオ

頭索動物(ナメクジウオ)は以下のような特徴を持つ:

ガス交換:咽頭裂では殆ど行われず、体表を通して行われる[19]

採餌:繊毛を使って口から海水を取り込み、咽頭裂の粘膜で海水中の餌を捉えて消化管に送り込む。その際海水は咽頭裂から体外に出る[19]

移動:脊索の両側にある筋肉を収縮させることにより脊索をしならせ、体を左右に振って移動する[19]

体長:成体では6センチメートル程度[19]
ホヤの一種Polycarpa aurata

尾索動物(ホヤ類)は次のような特徴を持つ:

幼生期:脊索動物の特徴が顕著であるが、幼生期が数分しかないものもいる[19]

成体:固着性で、幼生期とは著しく姿を変える[19]。尾と脊索は吸収され、神経系も退化[19]

採餌:咽頭裂から海水を入れ、粘液で海水中の餌を捉える。それを繊毛で食道に運び、水と排泄物が肛門から出水管へと出ていく[19]

ホヤ類はナメクジウオのもつ13のHox遺伝子のうち4つを失っており、幼生期のボディープランが他の脊索動物とは異なる機構で形成される[19]

またホヤ類は「他の脊索動物と分岐した後に、成体で脊索動物の特徴を失ったと考えられる」[19]
初期の脊索動物からの進化
現生種の解析から分かる事実

現生種の遺伝子の解析等から、以下のことが分かっている。

初期の脊索動物は頭索動物の
ナメクジウオのような動物であり、口、脊索、背側神経管、咽頭裂、肛門より後方の尾を持っていたと思われる[20]

「ナメクジウオの脳は十分発達しておらず、単に神経管の先端部がいくらか膨らんでいるだけ」[20]だが、この先端部の構造が複雑性を増して脊椎動物の脳が進化したと考えられる[20]。その根拠は脊椎動物の前脳・中脳・後脳の主要部を制御するホメオボックス遺伝子がナメクジウオでも同じパターンで発現していること[20]

心臓や甲状腺のような脊椎動物特有の構造を制御する遺伝子が脊索動物の祖先にすでに備わっていたことがホヤの全ゲノム解析から示唆されている[20]

脊椎動物特有の構造である神経堤に似た性質のある細胞がホヤから発見されているが、ナメクジウオにはこのような細胞がなく、ホヤは神経堤の進化の中間段階にある可能性がある[20]

進化史ハイコウエラの復元図

まず5億3,000万年前(カンブリア爆発の頃)には、ハイコウエラ(英語版)というナメクジウオのような全長3センチメートルほどの生物の化石が発見されているが[21]、この生物は脊椎動物の特徴を一部持ち合わせている[21]。具体的にはナメクジウオと同様、懸濁物食をしていたと思われる口を持ち合わせている一方[21]、脊椎動物のようなよく発達した脳、小さな眼、魚類に似た筋節構造を持っている[21]ミクロンギアの復元図

ミロクンミンギアは頭部を獲得した最古の脊索動物だと考えられており[21]、脳や眼を備えた頭部の獲得により複雑な動きや摂餌行動ができるようになったが[21]、まだ脊椎は獲得していない[21]コノドントの復元図(右)とその2種類の歯(左)

最古の脊椎動物は5億年ほど前に現れており、その一つであるコノドント類は、軟骨性の内骨格しか持っていない[21]

オルドビス紀からシルル紀の間に脊椎動物はさらに進化して、半規管を持つ内耳の獲得により平衡感覚を保ち[21]対鰭も獲得した[21]。また筋肉質の咽頭を持ち[21]、これにより海底に住む生物や有機堆積物を吸い込んで食べていたと考えられている[21]。またこの頃には硬骨の甲皮で身を守る遊泳性の脊椎動物が数多くいたが、デボン紀末に全て絶滅した[21]

軟骨性の骨格が硬骨化したのは、4億7,000万年ほど前に甲皮が出現したのが始まりで[21]、4億3,000万年前までには軟骨の内骨格を薄い硬骨が覆う種が現れ始め[21]、その後、顎を獲得した脊椎動物で硬骨化が進んだ[21]
脊椎動物の特徴

他の脊索動物では1つしかないHox遺伝子が脊椎動物では2つあるなど[22]、脊椎動物ではシグナル分子や転写因子をコードする重要な遺伝子ファミリーに対して遺伝子重複が起きており[22]、「このことが脊椎動物の骨格系や神経系の革新に結びついた可能性がある」[22]


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