胃の壁(胃壁)は、3層構造をしている。胃壁は内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜から成る。筋層の外側は腹膜で覆われている。なお、胃癌は胃壁のどの部位まで浸潤したかで進行度が判断される。
粘膜には、胃小窩(いしょうか)と呼ばれる微細な穴が無数に並んでいる。胃小窩の底には、胃腺(胃底腺)とよばれる管状の分泌腺が開口し、この腺が粘膜の最下層までのびている[2]。この分泌腺からは、主に、塩酸と消化酵素のペプシノゲンが分泌される(胃液)。胃腺の細胞のうち、壁細胞(傍細胞)は胃酸(塩酸)[3]および内因子を分泌し、主細胞はペプシンの前駆体であるペプシノゲンを分泌する[4]。ペプシノゲンは生理活性が無いが、塩酸に反応することで活性型のペプシンに変化する[4]。
なお、壁細胞から分泌される塩酸(胃酸)は胃の幽門前庭部に存在するG細胞から産生されるガストリン、副交感神経末端から分泌されるアセチルコリン、肥満細胞などから分泌されるヒスタミンによる刺激で内分泌される[5][6]。胃の粘膜の表面をおおう副細胞は、塩酸の酸性とペプシンによる消化から細胞自身を守るため、粘液を分泌している。
機能
蛋白質はペプシンによって、ポリペプチド(ペプトン)と呼ばれる水溶性の分解産物に消化される。
食べ物が入ってくるとガストリンを血管内へ分泌してペプシノゲンの分泌を促進し、胃壁細胞からの胃酸分泌を促進し、胃壁細胞を増殖させる、等の消化活動を活発化する。
食べ物が十二指腸へ出てゆくと、十二指腸から内分泌されるセクレチンによってガストリン分泌が抑制され、消化活動を停止する。
内因子を分泌してビタミンB12の吸収に関与する。
などの機能を持つ。 強酸性の胃液が胃を自ら消化してしまわないのは、胃の副細胞から分泌される粘液で胃が覆われており、さらに胃液を中和する重曹も生成されているからである。また常にプロスタグランジンという活性物質の働きで細胞増殖を活発にして胃壁の損傷を最小限に抑えている。しかしストレスなどで副交感神経のバランスが崩れたりすると、胃液や消化酵素のコントロールが利かず自分自身を消化してしまう、つまり胃に穴が開く状態である「胃潰瘍」を引き起こす。 反芻類の複胃は前胃(第一胃、第二胃、第三胃)と後胃(第四胃)に分けられ、第一胃と第二胃はあわせて反芻胃とも呼ばれる。第四胃だけが消化液を分泌する腺を持つ本来の胃(腺胃)である。第一胃から第三胃までは食道が発達したもので咀嚼した食物を発酵させ、第四胃における消化を容易にすることが主な役割である。 これら家畜の胃は幅広い地域で食材としても用いられる。特にその空洞性から詰め物料理として用いられることも多い。 鳥類の胃は前胃と筋胃に分かれ、前胃が消化腺を持つ腺胃に該当する。筋胃は砂嚢とも呼ばれ、前胃で消化液と混合された食物をすりつぶす機能を持つ。 また、無脊椎動物の食物などが滞留する消化管を「胃」と称することもある。
胃と胃液
胃の疾患
胃炎
胃潰瘍...ストレスだけではなく、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)によって引き起こされる場合もある。
胃癌
胃ポリープ
悪性リンパ腫
消化管間質腫瘍(GIST)
胃カルチノイド
胃粘膜下腫瘍
先天性肥厚性幽門狭窄症
胃静脈瘤
胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia; GAVE, watermelon stomach)
胃アニサキス症
胃内異物
出血
穿孔
動物の胃と呼ぶ。
脚注[脚注の使い方]^ 藤田ら, p.115
^ 藤田ら, pp.116-117
^ 藤田ら, p.119
^ a b 藤田ら, p.117