肺癌
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VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブ(アバスチン)はCBDCA+PTX療法に上乗せすることで全生存期間の延長効果が認められている[21]。後述のEGFRに代表されるドライバー遺伝子変異がみられる症例に対してはそれぞれに対応した分子標的薬が投与されるようになってきた。近年は組織亜型に合わせて異なるレジメンを用いることが提唱されており、そのため生検段階での亜型確定診断が強く求められてきている。肺扁平上皮癌は、それ以外の非小細胞肺癌と異なりペメトレキセドなどの葉酸拮抗薬に対する感受性が乏しく[22]、またベバシズマブ(アバスチン)は臨床試験において出血の有害事象が多かったため投与できない[23]。組織型による使い分けがなされるレジメンを以下に示す。

CDDP or CBCDA+PEM(ペメトレキセド):非扁平上皮癌のみ

CBDCA+PTX+ベバシズマブ:非扁平上皮癌のみ

CDGP(ネダプラチン)+DTX:扁平上皮癌でCDDP+DTX療法と比較して生存延長効果が証明されている

CDDP+GEM+ネシツムマブ
2015年以降、免疫チェックポイント阻害薬が台頭し、2015年12月にニボルマブ(オプジーボ)が二次治療以降に用いることができるようになった。またPD-L1≧50%の症例に限定してではあるが一次治療としてペムブロリズマブ(キイトルーダ)の有用性が報告され(KEYNOTE-024試験[24])、2016年に認可された。2018年にはPD-L1発現を問わず、白金製剤併用化学療法に免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブもしくはアテゾリズマブ(テセントリク))を上乗せした併用療法の有用性が報告され(KEYNOTE-189試験[25]、KEYNOTE-407試験[26]、IMpower150試験[27])、2019年4月現在では標準治療となっている。また、非小細胞肺癌のうち上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子変異エクソン19 21等)がある症例(多くは 女性・非喫煙者・腺癌)では、腫瘍細胞がEGFRからのシグナルに依存した増殖をしているため、分子標的治療薬のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬で高い奏効率が報告されており、第一選択で施行される。現在までにゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、アファチニブ(ジオトリフ)、ダコミチニブ(ビジンプロ)、オシメルチニブ(タグリッソ)が認可されている。EGFR以外にもALK、ROS1、BRAF、MET、NTRKといった遺伝子変異を有する症例があり、それぞれに対応した分子標的薬が認可されている。肺癌に対する分子標的薬の先駆けとなったゲフィチニブについては間質性肺炎症例が出たことから社会問題になったが(イレッサ訴訟)、ゲフィチニブに限らず肺癌の薬物治療を行う際には、間質性肺炎等の重篤な副作用があり、時に致死的な転帰となりうることに注意する必要がある。
放射線療法本来なら手術適応だが、高齢、内科的合併症などにより手術不能な非小細胞肺癌に対しては、放射線治療が標準治療として行われてきた。また局所進行例に対しても放射線療法単独もしくは化学療法との併用で放射線療法が行われる。骨転移による疼痛緩和などの緩和医療目的での放射線療法が行われることもある。また一般に脳転移には化学療法が奏効しにくいため、局所治療として放射線療法が行われる。合併症による手術不能I期非小細胞肺癌に対し、先端医療技術としてラジオ波焼灼術 (Radiofrequency Ablation) や定位手術的放射線治療 (Stereotactic Radiotherapy)、粒子線治療 (Ion Beam Therapy) を施行する施設もある。一部の報告では、低侵襲で、手術療法に匹敵する成績が報告されている。しかし、長期成績や、臨床試験の成績報告は乏しく、今後の手術療法との比較の臨床試験の結果が待たれる。
カテーテル治療(血管内治療)手術・放射線・抗癌剤治療などの標準治療を終了したが、それ以上の効果が見込めず疼痛コントロールなどの対症療法しか残されていない肺癌患者に対し、一部の施設でカテーテル治療が実施されている。腫瘍の栄養血管に対し、マイクロカテーテルを用いて超選択的に少量の抗癌剤を注入したり、塞栓物質を注入ないし留置したりする方法である。十分なエビデンスはまだ蓄積されていないが、著効例も報告されており今後の発展と症例の蓄積が望まれる。治療対象は、非小細胞癌・小細胞癌を問わず、また転移性肺腫瘍も治療可能である。以下、重複する点があるがまとめると、この治療法の利点は、低侵襲であること、短期入院で済むこと、標準治療を終えた方でも治療できる可能性があることである。また欠点はエビデンスが確立していないこと、実施施設が少ないことなどである。
予防

費用対効果の高い肺癌対処法として、予防計画が地域単位さらには地球規模で策定されている。少なからぬ国家において、喫煙が許される場所を制限しているが、それでもなお様々な場所で喫煙が行われている。喫煙の除去は肺癌予防のための闘いの第一目標であり、おそらく受動喫煙防止はこのプロセスにおいて最も重要な予防策である。

検診は重要でありかつ実施も容易なことから、肺癌予防の2番目の目標として検診の種々の試みがなされている。単純胸部X線撮影と喀痰検査は肺癌の早期発見には効果がなく、癌死を減らす結果につながらない。

しかし、2003年9月にLancet誌には期待される検診が掲載された。スパイラルCT(ヘリカルCTの項に詳しい)はヘビースモーカーなど高リスク群の早期肺癌発見に効果がある[28]。またNew England Journal of Medicineにも低線量CTの有用性を示唆する報告があった[29]
肺癌になった人物

(アイウエオ順)

愛川欽也

青木さやか 2017年と19年に肺がんに罹患し2度の手術

芥川隆行

渥美清

市川左團次 (4代目)

井上ひさし

ウ・タント

ジョン・ウェイン 1964年に肺癌を克服、79年に胃癌で死去

宇野宗佑

小倉一郎 2022年にステージ4の肺がんを克服

大泉滉

川谷拓三

バスター・キートン

三遊亭圓楽 (5代目)

三遊亭円楽 (6代目)

シルヴィア (歌手)

高畑勲

高松宮宣仁親王

ウォルト・ディズニー

冨田功

中村獅童 (2代目) 2017年、初期の肺腺癌を克服

ポール・ニューマン

間宮勇

峰岸徹

米澤嘉博

参考 Category:肺癌で亡くなった人物
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 一般には転移性肺癌 (: metastatic lung cancer) とも呼ばれるが、原発性肺癌とは異なる疾患概念である。

出典^ 国際肺癌学会らせんCT検診声明 (PDF)
^ a bWHO Fact sheet N°297
^ Fujita, Masaki; Nakanishi, Yoichi; Shigematsu, Nobuaki (1992). “A Case of Hypertrophic Pulmonary Osteoarthropathy with Bronchogenic Carcinoma.”. Haigan 32 (3): 415?419. doi:10.2482/haigan.32.415. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 1348-9992. 
^ a b c d 西條 2011, p. 16.
^ a b c d e f g “肺がん|がんの種類について|がん研究会”. web.archive.org (2011年5月20日). 2021年9月17日閲覧。


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