肺癌
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ノギテカンの奏効率は10%前後に過ぎず、再発例におけるアムルビシンの有効性が現在検討されつつある[19]。またPEI療法(CDDP+VP-16+CPT-11)も推奨されている治療の一つであるが、毒性が強いため注意が必要である。難治性再発例についてはアムルビシンが推奨されている。
非小細胞肺癌(NSCLC)

非小細胞肺癌において、Stage IIまでは多くの場合手術療法が選択され、多くの症例で術前あるいは術後(多くの場合は術後)の化学療法が検討される。Stage IIIでは手術が選択されることもあれば、化学療法や放射線療法が選択されることもあり、個々の症例によって治療選択が異なる。Stage IVでは化学療法が治療の主体となり、症状緩和目的の放射線治療も検討される。
手術療法

 肺葉切除+肺門縦郭リンパ節郭清が標準術式であり、個々の症例の肺機能や病気の広がりなどに応じて術式が決定される。
化学療法非小細胞肺癌に対する化学療法は大きく3つに分けられる。術前もしくは術後(多くの場合術後)に行われる再発予防を目的とした化学療法、切除不能な局所進行例に対して根治的な放射線療法と併用して行われる化学療法(化学放射線療法)、遠隔転移を有するなどの理由で根治的放射線照射が不能な症例に対して行われる化学療法である。前2者は根治を目指した治療である。後1者は生存期間延長を目的とした治療であるが、近年の化学療法の進歩は目覚ましく、5年以上の長期生存例もみられるようになってきている。詳細は「転移」を参照
周術期の化学療法周術期に行われる化学療法の有用性は数多くの試験で報告されており、術前化学療法と術後化学療法はともに術後の再発リスクを下げ、生存率を改善するとされている。両者の効果はほぼ同等とされているが、行うべき化学療法が明確である術後化学療法を行うことが多い。術後化学療法として術後病期IA3?IB期の症例にはUFT内服療法、術後病期II?III期にはCDDP(シスプラチン)+VNR(ビノレルビン)併用療法が広く行われる。
化学放射線療法化学放射線療法として、CDDP+DTX(ドセタキセル)療法、CBDCA(カルボプラチン)+PTX(パクリタキセル)療法、CDDP+VNR療法などの化学療法に放射線療法が併用される。これらの治療完遂後の地固め療法として免疫チェックポイント阻害薬であるデュルバルマブ(イミフィンジ)を投与した場合の生存期間の延長効果が確認されている[20]。化学放射線療法は根治を目標とした治療ではあるが、再発することも多く、その場合は進行期に対する化学療法が行われる。
進行期に対する化学療法進行期に対する化学療法は、腫瘍の組織型、PD-L1発現、ドライバー遺伝子(EGFRALK、ROS1、BRAFMET、NTRK)変異の有無などによって大きく異なる。ドライバー遺伝子変異を有する症例についてはそれに対応した阻害薬が投与される。ドライバー遺伝子変異を有さない場合、PD-L1の発現に応じて治療方針が検討され、免疫チェックポイント阻害薬や細胞障害性薬剤を組み合わせた治療が選択される。PD-L1高発現の場合は免疫チェックポイント阻害薬単剤も治療選択肢となる。歴史的には進行非小細胞肺癌の初回治療では歴史的に白金製剤を含む2剤併用化学療法が推奨されてきた。以下に主なレジメンを示す。

CDDP+DTX

CDDP+VNR

CBDCA+PTX

CDDP+GEM(ゲムシタビン

CDDP+CPT-11(イリノテカン
21世紀に入り、分子標的薬が台頭してきた。抗VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブ(アバスチン)はCBDCA+PTX療法に上乗せすることで全生存期間の延長効果が認められている[21]。後述のEGFRに代表されるドライバー遺伝子変異がみられる症例に対してはそれぞれに対応した分子標的薬が投与されるようになってきた。近年は組織亜型に合わせて異なるレジメンを用いることが提唱されており、そのため生検段階での亜型確定診断が強く求められてきている。肺扁平上皮癌は、それ以外の非小細胞肺癌と異なりペメトレキセドなどの葉酸拮抗薬に対する感受性が乏しく[22]、またベバシズマブ(アバスチン)は臨床試験において出血の有害事象が多かったため投与できない[23]。組織型による使い分けがなされるレジメンを以下に示す。

CDDP or CBCDA+PEM(ペメトレキセド):非扁平上皮癌のみ

CBDCA+PTX+ベバシズマブ:非扁平上皮癌のみ

CDGP(ネダプラチン)+DTX:扁平上皮癌でCDDP+DTX療法と比較して生存延長効果が証明されている

CDDP+GEM+ネシツムマブ
2015年以降、免疫チェックポイント阻害薬が台頭し、2015年12月にニボルマブ(オプジーボ)が二次治療以降に用いることができるようになった。またPD-L1≧50%の症例に限定してではあるが一次治療としてペムブロリズマブ(キイトルーダ)の有用性が報告され(KEYNOTE-024試験[24])、2016年に認可された。2018年にはPD-L1発現を問わず、白金製剤併用化学療法に免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブもしくはアテゾリズマブ(テセントリク))を上乗せした併用療法の有用性が報告され(KEYNOTE-189試験[25]、KEYNOTE-407試験[26]、IMpower150試験[27])、2019年4月現在では標準治療となっている。また、非小細胞肺癌のうち上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子変異エクソン19 21等)がある症例(多くは 女性・非喫煙者・腺癌)では、腫瘍細胞がEGFRからのシグナルに依存した増殖をしているため、分子標的治療薬のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬で高い奏効率が報告されており、第一選択で施行される。現在までにゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、アファチニブ(ジオトリフ)、ダコミチニブ(ビジンプロ)、オシメルチニブ(タグリッソ)が認可されている。EGFR以外にもALK、ROS1、BRAF、MET、NTRKといった遺伝子変異を有する症例があり、それぞれに対応した分子標的薬が認可されている。肺癌に対する分子標的薬の先駆けとなったゲフィチニブについては間質性肺炎症例が出たことから社会問題になったが(イレッサ訴訟)、ゲフィチニブに限らず肺癌の薬物治療を行う際には、間質性肺炎等の重篤な副作用があり、時に致死的な転帰となりうることに注意する必要がある。
放射線療法本来なら手術適応だが、高齢、内科的合併症などにより手術不能な非小細胞肺癌に対しては、放射線治療が標準治療として行われてきた。また局所進行例に対しても放射線療法単独もしくは化学療法との併用で放射線療法が行われる。骨転移による疼痛緩和などの緩和医療目的での放射線療法が行われることもある。また一般に脳転移には化学療法が奏効しにくいため、局所治療として放射線療法が行われる。合併症による手術不能I期非小細胞肺癌に対し、先端医療技術としてラジオ波焼灼術 (Radiofrequency Ablation) や定位手術的放射線治療 (Stereotactic Radiotherapy)、粒子線治療 (Ion Beam Therapy) を施行する施設もある。一部の報告では、低侵襲で、手術療法に匹敵する成績が報告されている。しかし、長期成績や、臨床試験の成績報告は乏しく、今後の手術療法との比較の臨床試験の結果が待たれる。
カテーテル治療(血管内治療)手術・放射線・抗癌剤治療などの標準治療を終了したが、それ以上の効果が見込めず疼痛コントロールなどの対症療法しか残されていない肺癌患者に対し、一部の施設でカテーテル治療が実施されている。腫瘍の栄養血管に対し、マイクロカテーテルを用いて超選択的に少量の抗癌剤を注入したり、塞栓物質を注入ないし留置したりする方法である。十分なエビデンスはまだ蓄積されていないが、著効例も報告されており今後の発展と症例の蓄積が望まれる。治療対象は、非小細胞癌・小細胞癌を問わず、また転移性肺腫瘍も治療可能である。以下、重複する点があるがまとめると、この治療法の利点は、低侵襲であること、短期入院で済むこと、標準治療を終えた方でも治療できる可能性があることである。また欠点はエビデンスが確立していないこと、実施施設が少ないことなどである。
予防

費用対効果の高い肺癌対処法として、予防計画が地域単位さらには地球規模で策定されている。少なからぬ国家において、喫煙が許される場所を制限しているが、それでもなお様々な場所で喫煙が行われている。喫煙の除去は肺癌予防のための闘いの第一目標であり、おそらく受動喫煙防止はこのプロセスにおいて最も重要な予防策である。

検診は重要でありかつ実施も容易なことから、肺癌予防の2番目の目標として検診の種々の試みがなされている。単純胸部X線撮影と喀痰検査は肺癌の早期発見には効果がなく、癌死を減らす結果につながらない。

しかし、2003年9月にLancet誌には期待される検診が掲載された。スパイラルCT(ヘリカルCTの項に詳しい)はヘビースモーカーなど高リスク群の早期肺癌発見に効果がある[28]。またNew England Journal of Medicineにも低線量CTの有用性を示唆する報告があった[29]
肺癌になった人物

(アイウエオ順)

愛川欽也

青木さやか 2017年と19年に肺がんに罹患し2度の手術

芥川隆行

渥美清

市川左團次 (4代目)

井上ひさし

ウ・タント

ジョン・ウェイン 1964年に肺癌を克服、79年に胃癌で死去

宇野宗佑

小倉一郎 2022年にステージ4の肺がんを克服

大泉滉

川谷拓三

バスター・キートン


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