肺炎
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単純ヘルペスウイルスではめったに起こらないが、例外として新生児、癌患者、臓器移植受容者、重度熱傷が挙げられる[33]

サイトメガロウイルスは、臓器移植患者や免疫不全患者に起こり得る[31][33]
菌類クリプトコッカス

ヒストプラスマ・カプスラーツム、ブラストミセス、クリプトコッカスニューモシスチスコクシジオイデスなどが挙げられる。
寄生虫

トキソプラズマ、糞線虫、回虫マラリア原虫など。以前原虫とされていたニューモシスチス肺炎は現在は真菌に分類される。
非感染性誤嚥性肺炎(右側下葉)

機械的肺炎

誤嚥性肺炎 (嚥下性肺炎)

閉塞性肺炎

吸入性肺炎


薬剤性肺炎[34]

インターフェロン - 間質性肺炎をきたすことがある。

抗がん剤

漢方薬


症候性肺炎

膠原病性肺炎 (関節リウマチにおけるリウマチ肺が代表)


その他

好酸球性肺炎、過敏性肺炎

化学性肺炎

フッ素化合物(防水スプレー)の吸引[35]



症状

発熱呼吸困難、全身倦怠感、胸部痛など。初期はのどの痛みはあまりないが、痰を排出しようと咳を繰り返すことで炎症を起こす場合がある。

しかし、高齢者の場合、発熱がみられないなど非典型的な症状を呈することが多く、食欲低下、何となく元気がない、といったちょっとした体調の変化をきっかけとして肺炎の診断につながる例も少なくないので注意が必要である。

症状の頻度[36]症状頻度
咳79?91%
疲労90%
熱71?75%
息切れ67?75%
喀痰60?65%
胸痛39?49%

診断画像診断にて見られる影

身体所見 (聴診所見など体の症状)、胸部X線写真、胸部CT、採血 (白血球数、CRP値、KL-6LDH)、喀痰培養など。従来は行われていなかったが超音波断層撮影の有用性が報告されている[37][38]

喀痰のグラム染色は有用と考えられ、好中球による貪食像(どんしょくぞう: 好中球が細菌を取り込んでいる像)は起炎菌の同定(原因となる病原体を特定すること)につながることもある(肺炎球菌では特に)。ただし、臨床研究では喀痰グラム染色と起炎菌とは一致しないと結論され、アメリカのガイドラインでは推奨されていない。

近年は迅速診断キットにより肺炎球菌レジオネラについては尿を検体(検査をする対象物)として検査が可能となった (商品名 BinaxNOW肺炎球菌、レジオネラ。溶血連鎖球菌の検査キットBinaxStrepAは咽頭粘液を検体とする)。

なお、肺炎の原因菌の中でも特殊な結核に付いては、常に鑑別にあげなければならない。結核を疑う場合は、チール・ニールセン染色(Ziehl-Neelsen stain)や蛍光塗抹検査、T-SPOTなどを行う。
分類

肺炎の分類としては、いくつかの異なった分類が存在する。
罹患場所による分類

市中肺炎(community-acquired pneumonia; CAP): 普通の生活のなかで発症した肺炎。なお、退院後2週間までに起こった肺炎は院内肺炎と見なす。これは原因菌の想定を妥当なものとするためである。

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia; HAP): 医療機関で治療中の患者、他の疾患を持つ患者に発症した肺炎。なお、入院後48時間までに発症した肺炎は市中肺炎と見なす。これも原因菌の想定を妥当なものとするためである。

医療ケア関連肺炎(Healthcare-associated Pneumonia; HCAP): 老人ホームなどの医療・介護施設で発症した肺炎。[39]

病変の形態による分類

肺胞性肺炎

大葉性肺炎

気管支肺炎


間質性肺炎

器質化肺炎[40]

予防

ビタミンCの肺炎予防と治療に対する効果の、2013年のコクランレビューは、特殊な集団における証拠があるがさらなる調査が必要とし、特にビタミンCが少ない場合にどうなるかさらなる研究を求めたが、安く安全性が高いため、血中ビタミンC濃度が低い肺炎患者への使用は妥当だとした[41]

肺炎レンサ球菌による肺炎の場合、肺炎球菌ワクチンの投与によってかなりの程度予防することができる。このワクチンにはいくつかの種類があり、投与の対象も異なる。日本では1988年に成人用の23価不活化ワクチンが承認され[42]、2014年には65歳以上の高齢者に対する定期接種の対象となった[43]。次いで2009年には小児用の7価ワクチンが承認され[44]、2013年4月には定期接種の対象となり、同年11月には13価のワクチンに切り替わった[45]。ハーバード大学医学部は、65 歳以上の人に肺炎球菌ワクチンの接種を強く推奨している[46]
治療

細菌性肺炎が疑われる場合は原因菌に抗力のある抗生物質を投与するが、原因菌特定には、喀痰培養同定・感受性検査など、時間のかかることが多く菌の種類を推定して抗生剤の選択を行うことが多い。

肺真菌症では抗真菌薬、ウイルス性肺炎では対応した抗ウイルス薬を用いる。

施設による違いはあるが、米国式のやり方をとっている施設では、菌の種類は推定せず、市中肺炎であるか院内肺炎であるかによって抗生剤を使い分ける。それは、胸部レントゲン像で菌の種類をみわけることはできないとする臨床研究の結果にしたがったものである。

しかし、日本の一般的な医療機関では、まず広域抗生剤といわれる多くの種類の細菌に効く抗生剤を、患者の状況などから経験的に投与し、培養検査(肺炎の場合喀痰を培養し、原因菌を調べ、またどの抗生剤が有効かを調べる検査)の結果が出た時点で抗生剤を適宜変更するというのが標準である。

入院を必要としない市中肺炎では、肺炎球菌インフルエンザ菌クラミジアマイコプラズマ黄色ブドウ球菌モラクセラレジオネラを主なターゲットとしてマクロライド系抗生剤 (クラリスロマイシンアジスロマイシン) や新世代ニューキノロン (レボフロキサシンガレノキサシン) を用いるが、肺炎球菌に対するクラリスロマイシンの感性が低下(効果が不十分)していることを初め、ここ数年では顕著な変化は見られないものの、風邪に対する抗菌薬の乱用が一因と考えられる各種の抗菌薬に対する耐性化が深刻な問題となっている。入院が必要とされる市中肺炎では、βラクタマーゼ阻害剤を含むペニシリン製剤であるアンピシリン・スルバクタム配合剤の高容量投与や、ピペラシリン・タゾバクタム配合剤が用いられることが多い。

細菌性市中肺炎の原因となる頻度としては肺炎球菌が最も多く、特に65歳以上では28.1 %を占めていた。[47]また65歳以上ではクレブシエラなどのグラム陰性桿菌による肺炎も4.4 %ほどみられている。
近年では肺炎球菌のペニシリン耐性化が進んでおりPISP/PRSPは2003年の調査では59.8 %にも及んだ。[48]


入院を必要とする市中肺炎では、抗菌剤の投与は5日に留めることが推奨されている[49][50](治療が上手くいっていない場合は薬剤を変更して、延長される)。

院内肺炎ではグラム陰性桿菌、たとえば緑膿菌セラチア菌をターゲットとして第3世代セフェム (セフォタキシム等) を用いる。

過敏性肺炎では、原因抗体からの隔離[51][52]


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