肺炎
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従来は行われていなかったが超音波断層撮影の有用性が報告されている[37][38]

喀痰のグラム染色は有用と考えられ、好中球による貪食像(どんしょくぞう: 好中球が細菌を取り込んでいる像)は起炎菌の同定(原因となる病原体を特定すること)につながることもある(肺炎球菌では特に)。ただし、臨床研究では喀痰グラム染色と起炎菌とは一致しないと結論され、アメリカのガイドラインでは推奨されていない。

近年は迅速診断キットにより肺炎球菌レジオネラについては尿を検体(検査をする対象物)として検査が可能となった (商品名 BinaxNOW肺炎球菌、レジオネラ。溶血連鎖球菌の検査キットBinaxStrepAは咽頭粘液を検体とする)。

なお、肺炎の原因菌の中でも特殊な結核に付いては、常に鑑別にあげなければならない。結核を疑う場合は、チール・ニールセン染色(Ziehl-Neelsen stain)や蛍光塗抹検査、T-SPOTなどを行う。
分類

肺炎の分類としては、いくつかの異なった分類が存在する。
罹患場所による分類

市中肺炎(community-acquired pneumonia; CAP): 普通の生活のなかで発症した肺炎。なお、退院後2週間までに起こった肺炎は院内肺炎と見なす。これは原因菌の想定を妥当なものとするためである。

院内肺炎(hospital-acquired pneumonia; HAP): 医療機関で治療中の患者、他の疾患を持つ患者に発症した肺炎。なお、入院後48時間までに発症した肺炎は市中肺炎と見なす。これも原因菌の想定を妥当なものとするためである。

医療ケア関連肺炎(Healthcare-associated Pneumonia; HCAP): 老人ホームなどの医療・介護施設で発症した肺炎。[39]

病変の形態による分類

肺胞性肺炎

大葉性肺炎

気管支肺炎


間質性肺炎

器質化肺炎[40]

予防

ビタミンCの肺炎予防と治療に対する効果の、2013年のコクランレビューは、特殊な集団における証拠があるがさらなる調査が必要とし、特にビタミンCが少ない場合にどうなるかさらなる研究を求めたが、安く安全性が高いため、血中ビタミンC濃度が低い肺炎患者への使用は妥当だとした[41]

肺炎レンサ球菌による肺炎の場合、肺炎球菌ワクチンの投与によってかなりの程度予防することができる。このワクチンにはいくつかの種類があり、投与の対象も異なる。日本では1988年に成人用の23価不活化ワクチンが承認され[42]、2014年には65歳以上の高齢者に対する定期接種の対象となった[43]。次いで2009年には小児用の7価ワクチンが承認され[44]、2013年4月には定期接種の対象となり、同年11月には13価のワクチンに切り替わった[45]。ハーバード大学医学部は、65 歳以上の人に肺炎球菌ワクチンの接種を強く推奨している[46]
治療

細菌性肺炎が疑われる場合は原因菌に抗力のある抗生物質を投与するが、原因菌特定には、喀痰培養同定・感受性検査など、時間のかかることが多く菌の種類を推定して抗生剤の選択を行うことが多い。

肺真菌症では抗真菌薬、ウイルス性肺炎では対応した抗ウイルス薬を用いる。

施設による違いはあるが、米国式のやり方をとっている施設では、菌の種類は推定せず、市中肺炎であるか院内肺炎であるかによって抗生剤を使い分ける。それは、胸部レントゲン像で菌の種類をみわけることはできないとする臨床研究の結果にしたがったものである。

しかし、日本の一般的な医療機関では、まず広域抗生剤といわれる多くの種類の細菌に効く抗生剤を、患者の状況などから経験的に投与し、培養検査(肺炎の場合喀痰を培養し、原因菌を調べ、またどの抗生剤が有効かを調べる検査)の結果が出た時点で抗生剤を適宜変更するというのが標準である。

入院を必要としない市中肺炎では、肺炎球菌インフルエンザ菌クラミジアマイコプラズマ黄色ブドウ球菌モラクセラレジオネラを主なターゲットとしてマクロライド系抗生剤 (クラリスロマイシンアジスロマイシン) や新世代ニューキノロン (レボフロキサシンガレノキサシン) を用いるが、肺炎球菌に対するクラリスロマイシンの感性が低下(効果が不十分)していることを初め、ここ数年では顕著な変化は見られないものの、風邪に対する抗菌薬の乱用が一因と考えられる各種の抗菌薬に対する耐性化が深刻な問題となっている。入院が必要とされる市中肺炎では、βラクタマーゼ阻害剤を含むペニシリン製剤であるアンピシリン・スルバクタム配合剤の高容量投与や、ピペラシリン・タゾバクタム配合剤が用いられることが多い。

細菌性市中肺炎の原因となる頻度としては肺炎球菌が最も多く、特に65歳以上では28.1 %を占めていた。[47]また65歳以上ではクレブシエラなどのグラム陰性桿菌による肺炎も4.4 %ほどみられている。
近年では肺炎球菌のペニシリン耐性化が進んでおりPISP/PRSPは2003年の調査では59.8 %にも及んだ。[48]


入院を必要とする市中肺炎では、抗菌剤の投与は5日に留めることが推奨されている[49][50](治療が上手くいっていない場合は薬剤を変更して、延長される)。

院内肺炎ではグラム陰性桿菌、たとえば緑膿菌セラチア菌をターゲットとして第3世代セフェム (セフォタキシム等) を用いる。

過敏性肺炎では、原因抗体からの隔離[51][52]

小児の肺炎

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出典検索?: "肺炎" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2015年10月)

小児の肺炎では、経験的治療は大きく異なってくる。その違いは肺炎の起炎菌の違いによるものである。

新生児を除く乳幼児では、肺炎の3大起炎菌といえるのはインフルエンザ桿菌、肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリスである。成人と異なりクレブシエラ属や緑膿菌は少ないため、第3世代セフェムよりも抗菌スペクトラムの狭いペニシリン系抗生物質を選択するのが一般的である (施設によってはセフェムを選択するところもある)。

モラクセラ (モラキセラ、ブランハメラともいう) はほぼ100 %の株でβラクタム分解酵素 (β-ラクタマーゼ) を有するため、ベータラクタム分解酵素阻害薬を配合した抗菌薬製剤 (スルバクタム・アンピシリン、タゾバクタム・ピペラシリンなど) を選択することが多い。喀痰塗抹グラム染色を参考にできるような施設では、肺炎球菌が疑わしい場合にはアンピシリンなどより狭いスペクトラムを持つ薬剤を選択する。

特に乳児では誤嚥性の肺炎も少なからず見られるが、高齢者と異なり誤嚥性肺炎でも緑膿菌感染症は少ないため、スルバクタム・アンピシリン (嫌気性菌にも有効であるため) を選択する。誤嚥性肺炎が疑わしい場合には、気道症状が治まるまで経口哺乳の禁止が必要となることもある。

学童以上の年齢ではマイコプラズマによる肺炎が多くなる。細菌性肺炎との鑑別はX線像ではまず不可能であり、血液所見 (好中球増加の有無、C反応性蛋白(CRP)上昇の有無、マイコプラズマIgM迅速検査など) や全身状態、気道症状の程度などが参考となる。

マイコプラズマにはβラクタム系の抗菌薬が無効であるが、テトラサイクリン系抗生物質 (ミノサイクリンなど) やニューキノロン系抗菌薬は副作用の問題で小児には投与しにくい、あるいはできないため、マクロライド系抗生物質を選択する (永久歯が生えていない小児にテトラサイクリンを投与すると、後に生えた永久歯に黄色く色素沈着することがある。また骨成長障害が副作用としてみられることも知られている[53]

ニューキノロン系多くではの小児への投与は、動物実験で関節障害が見られたために日本では禁忌となっている。トスフロキサシン (商品名:オゼックス小児用細粒) は例外で小児への適応症をもつ)。

基礎疾患や障害のある患児では、その疾患によって肺炎の起炎菌に特徴がある。また、過去の細菌検査の結果も起炎菌推定の助けになる。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ なお、2020年の「新型コロナウイルス感染症」の死亡数は3,466人である[28]


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