肥料
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生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸石灰(炭酸カルシウム)またはケイ酸カルシウム(ケイカルと称される事が多い、ケイ酸肥料を兼ねる)などのカルシウム含有の肥料をいう。「石灰」は文脈によっては、元素のカルシウムのことの場合もある。石灰石牡蠣殻鶏卵殻が原料として使用される。
マグネシウム(苦土)

葉緑素形成に不可欠な物質である。農業・園芸分野では苦土(くど)という。
硫黄

アミノ酸・タンパク質やビタミンの合成に関わる[5]。一方で、強還元状態では植物に有害な硫化水素の発生原因となる[12]

含硫黄肥料の多くは硫酸塩であり[13]、これらは硫酸根肥料[14]と呼ばれ、水溶性[15]や酸性のものが多い。一般的な三要素の肥料である硫酸アンモニウム過リン酸石灰硫酸カリウムも硫酸根肥料であり、副成分として硫黄を含む。これらの特質を利用して、生理的酸性肥料である硫酸アンモニウムがアルカリ性土壌のpH矯正のため利用されたり[16]、生理的中性肥料である硫酸カルシウム(石膏)がアルカリ性土壌を嫌う植物へのカルシウム供給に利用されたりもする[17]

日本においては土壌や水からの天然供給が豊富であり、硫黄欠乏は稀と考えられているが、硫酸根肥料の施用が長年に渡って避けられている水田では欠乏がみられることがある[18][19]
微量要素

鉄、マンガン、ホウ素、モリブデン、亜鉛、銅、塩素、ニッケルは、微量要素という。これらは必要な元素であるが必要な量は微量であり、大抵土壌や肥料に含まれている量で充分で、過剰障害も生じやすいことから、微量要素肥料の施用には十分な配慮が必要である。葉面散布で施用すると効果的な場合がある。
分類
形態的分類

形態的分類では、粒状肥料、固形肥料、粉状肥料、液状肥料、ペレット状肥料に分類される[20]。粉末で流通し使用者が液状肥料にして用いるものもある(粉末液肥)。

液体の肥料は液肥(えきひ)とよばれ、追肥として使用すると即効性がある一方で、効果が切れるのも早いという特性がある[21]。特に夏場の実もの野菜には、追肥として2、3日おきに与えてもよい[21]

なお、粒状肥料の中でも脱窒などを抑え、遅効性にするため泥団子に混ぜて作られた大粒の物を、特に「団子肥料」といい、泥炭に化学肥料各種を混ぜた市販品のものから、硫安や尿素を土と混ぜて作った農家が自作したものまで様々なものがある[22]
生産手段(入手経路)による分類

自家生産の肥料を自給肥料(手間肥)、購入する肥料を販売肥料(金肥、購入肥料)という[1][20]

肥料が市販されるようになったのは19世紀初期からで、それまで堆厩肥などを自前で作る自家用が主流だったが、このころペルーで見つかった海鳥の糞の堆積物をグアノとして世界中で販売されるようになり、その後チリ硝石の発見、骨粉やリン鉱石などからの過リン酸石灰の製造などを経て、1909年の空中窒素固定法の発見で安価で大量に硫安を作れるようになったことで、販売肥料の普及につながっている[23]
生産手段(製造工程)による分類

天然に産するものやそれを原料に加工した天然肥料と、化学的操作で製造した化学肥料(人造肥料)がある[1]。後者は化学肥料、配合肥料、化成肥料といった名称がある[20]

化学肥料の誕生以前は、単位面積あたりの農作物の量に限界があるため、農作物の量が人口増加に追いつかず、人類は常に貧困飢餓に悩まされていた(トマス・ロバート・マルサス人口論[24]。しかしハーバー・ボッシュ法による窒素の化学肥料の誕生や過リン酸石灰によるリンの化学肥料の誕生により、ヨーロッパや北アメリカでは人口爆発にも耐えうる生産量を確保することが可能となった[24]

大部分の化学肥料は無機質肥料である[1]
単肥
肥料の3要素の1つしか含まないものを単肥という[6](ただし、有機、無機に関係なく、1種類の肥料という意味で単肥ということもある)。
複合肥料
肥料の3要素のうち2種類以上を含むようにしたものを複合肥料という。
化成肥料
複数の単肥に化学的操作を加え、肥料の3要素のうち2種類以上、15%以上の量を含むようにしたものを化成肥料という。化成肥料で肥料の3要素の合計が30%以上のものを高度化成といい、それ以外を普通化成という[25]。化成肥料の成分は「窒素-リン酸-カリ」と表記される。例えば「8-8-8」という表記であれば、窒素・リン酸・カリが各8%の普通化成とわかる。
配合肥料
2?3種類の肥料を、一定の割合で機械的に配合したものを配合肥料という[6]
原料の給源による分類

動物質肥料、植物質肥料、鉱物質肥料に分けられる[1]。動物質肥料と植物質肥料をあわせて動植物質肥料ともいう[1]。鉱物質肥料は化学肥料や無機質肥料とほぼ同じである[1]
化学的組成による分類

無機化合物からなる無機質肥料と有機化合物からなる有機質肥料がある[1]。前者は無機物が主であり水に溶けやすいが流出もしやすく、長期間の使用によって土壌障害の原因ともなる。後者は草木灰魚粕、糞など有機物であり、発酵などによって分解され、無機物となって植物に吸収される。2002年には一部は有機物のまま吸収されることが判明している[26]
有機質肥料(有機肥料)1870年代中期のアメリカ合衆国。肥料用に集積されたアメリカバイソンの頭骨の山。詳細は「有機質肥料」を参照

有機物有機資材)を原料とした肥料。植物質または動物質を原料とした肥料である[6]。有機物は時間をかけて分解され、その後植物に吸収されるため即効性は低いが、そのかわり土壌に長期間蓄積され、ゆっくりと効果が持続する[6]。また、有機質の肥料には土壌を柔らかくする性質がある[6]

有機物により土壌内の微生物に栄養分が与えられるため、無機肥料よりも土壌に良いと考える人もいる。ただし農業は肥料だけでおこなうものでないため、一概に有機肥料が無機肥料より優れているとはいえない。例えば、発酵が十分でないと根に悪影響を与える[6]。また、完熟していない有機肥料では、悪臭ガス発生・害虫発生の問題が発生する。肥料を完全発酵させることによって、養分が分解され利用しやすくなり、有害菌が増殖して、病害が起こることを防ぐことができる。

有機質の肥料でも、従来、植物は無機物の形で吸収し栄養としていると考えられてきた。ほとんどの栄養分は無機物として吸収されるが、一部の有機物はエンドサイトーシスにより、養分として取り込まれることもある。タンパク質の場合、細胞内にタンパク質を取り込んでからタンパク質分解酵素で消化して利用する。アミノ酸では直接利用されるものがある。

このため、有機物の肥料としての有効性も研究されてきた。2002年には、独立行政法人農業環境技術研究所が、植物が根から無機質ではない有機質のタンパク質様窒素を吸収することを証明している[26]

植物性肥料

油粕 - ナタネから油を搾り取ったあとの粕からつくられていて、「ナタネ粕」ともいう。窒素分が多く、主に葉や草丈を大きくしたいときの追肥に使う[27]



刈敷

草木灰

ただし、草木灰は、植物由来のため有機肥料とする人が多いが、灰であるため無機物が中心である。


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