肛門性交
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肛門性交における性感染症は基本的に膣性交における性感染症と同じであるが、診療にあたる医師の念頭に肛門性交の可能性がない場合、しばしば診断の遅れや誤診に繋がる危険性がある。適切な治療を受けるためには、肛門性交の有無を医師にも伝えることが望ましい。
歴史と文化

肛門性交はその体位が動物的な場合が多いこと・子孫繁栄とは無関係の性行為であること・排泄を行う箇所を性交に使うことへの抵抗など、宗教文化や習俗と合わせて行為に不快感を抱く者が現在でも存在する。

特に男性同士の同性愛行為をソドミーと呼び、中東などのイスラム圏、アフリカ諸国、中央アジアなど、世界のいくつかの地域、文化圏ではいまだにタブー視したり、法により禁止しているところさえ残っている。

男性同性愛者の間においても、女性との性行為の模倣に過ぎないという考えや、痛みや出血を伴うことや準備や片付けに手間を要することから肛門性交を嫌う者も多い。

マルキ・ド・サド(サディストの語源)の著書には、自分が捕らえられた時、妻へ差し入れを頼んだ際に自分の肛門に入れる張り型を持って来るように指示し、これを独房内で自慰のために使用した記録がある。
欧米およびキリスト教文化圏

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出典検索?: "肛門性交" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2011年7月)
男性同士の肛門性交(ハドリアヌスアンティノウスエドゥアール=アンリ・アヴリル画)

キリスト教が広まる前のヨーロッパや地中海世界では、キリスト教の教義による禁令がなかったため、男性同士及び異性間の肛門性交は普遍的に行われていた。

基本的にはカトリックでは子供を作る目的以外の性行為は認めておらず、快楽の追求のための性行為は否定されているため、肛門性交も禁じている。

また法律での禁止例として、アメリカ合衆国で施行されていた、いわゆる「ソドミー法」がある。この法律は同性愛を禁じるための法律であるが、頭の中を規制することは出来ないため、その行為である肛門性交を禁じるものである(異性同士の肛門性交も含まれる)。これは、かつては50州すべてに存在していたが、2004年現在では13州までに減少している。また、テキサス州の法律は、2003年6月26日にアメリカ最高裁により違憲との判決を下された。
イスラム教文化圏詳しくは「イスラーム世界の少年愛」を参照19世紀のオスマン帝国時代の絵画
日本

肛門のことを性的な俗語やゲイのスラングで、菊門・菊座という他、女性の名器になぞらえて男性の場合のこれを名門と呼ぶ。また江戸時代にはおいどおかまともいい、男色家の間では後庭華・牛蒡(ゴボウ)の切り口ということもあった。

肛門性交はおかまを掘る(略して「掘られる」「掘る」と表現することがある)とも言い、転じて交通事故での後部への追突を表すスラングとしても用いられる。江戸時代には「おかまを割る」とも言った。

江戸時代の呼称には上記のものの他にも「けつ取り」や「大悦」などがある。大悦は主に僧侶が用いた隠語で、通常の性交を「天悦」とも呼び、これは「天」という漢字を分解すると「二人」となり2人で悦楽が得られることを表すのに対して、大は分解すると「一人」となり、挿入される側は痛みを伴って悦楽が得られないことが多く、挿入する側1人のみが悦楽を得られる事を表している。なお、大悦は自慰の隠語でもあった。

日本の強姦罪は男性器を女性器に挿入する事を前提としているため肛門性交でのレイプは強姦罪にあたらず、傷害罪猥褻物陳列罪等が適用されていた。しかし肛門性交、口腔性交等の準性交も強姦罪の対象となるよう法改正が検討され、2017年(平成29年)7月13日に、男性が被害者の場合を含む強制性交等罪の規定が設けられたことに伴い、強姦罪は廃止され強制性交等罪がその役割を引き継ぐとともに準性交も法の対象となった。
女色における肛門性交

江戸時代の性の指南書では、女性器が怪我などで使用できないときの為の肛門性交の方法を指南したものがある。遊女屋の客の中には遊女と「尻取り」(けつとり)をしたがる人もいるため、遊女たちは肛門での受け入れ準備もしていた[11]陰間の盛りが短かったことから、陰間茶屋は高額なため[12][13]、自分の妻や遊女で試そうという好色家も存在した。

現在の売春防止法は男性器を女性器に挿入する事を前提としているため、法律上は肛門性交は売春行為にはあたらない。そのためデリバリーヘルス等の男性器を女性器に挿入する行為(いわゆる「本番」)が禁止されている風俗業でも特別料金を払って行えるプレイとして提示されていることがある。しかし風俗嬢が個人として行えない行為に肛門性交を掲示している場合が多く、店側としては行えるプレイとして提示されていても勤務している風俗嬢全員が行っていない場合も珍しくない。逆に肛門性交が可能な女性を集めた専門店も存在する。

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男色における肛門性交「日本における同性愛」も参照袋井宿を描いた春画(1840年代)

日本でも、僧侶と稚児の男色武士の世界の衆道陰間茶屋など男色文化の歴史が存在する。奈良時代平安時代頃からは、天台宗などでは僧と稚児の初夜の直前に行われる「稚児灌頂(ちごかんじょう)」という儀式があり、稲垣足穂『少年愛の美学』にはそのやり方が詳しく書かれている。灌頂を受けた稚児は観音菩薩の化身とされ、僧は灌頂を受けた稚児とのみ性交が許された。

衆道においては先述の「大悦」の字が示すように若衆が自身は痛みに耐え、年長者や主君の為に身を捧げるという意味合いも持つ。相手が僧侶の場合は功徳になるとされた。

江戸時代には、夢中庵魯鈍作の『男色四十八手指南』(文化6年)などに男色(肛門性交)のやり方が指南されていて、挿入する時には「通和散」または「練(り)木」と称したトロロアオイの根・ふのりなどで製した白い粉の粘滑剤[14]が市販されており、それを用いた。江戸時代には性に関して多くの指南書が出版されたが、中には男色相手の少年や陰間を肛門のヒダの数で品評した本も出版されている。

また江戸時代には「小僧は脚気の薬」と言われ、若い男児と肛門性交をすると脚気の治癒に効果があるという俗信が存在し、「お住持の脚気は治り小僧は痔」といった川柳も残されている[15]

日本では西欧社会の影響で、明治時代の一時期肛門性交が禁止されたが(鶏姦罪)、直ぐにこの規定は撤廃された(日本における同性愛#幕末・明治初期:男色文化衰退、地方レベルではなく全国で初の違法化(一時的)も参照)。この頃から日本では肛門性交を鶏姦と呼ぶことがある。

現行法では女性の場合と同じく肛門性交、加えて男性同士の場合は売春防止法上の売春行為には当たらないため、売り専などのゲイ向け風俗店でサービスとして行われていることが多い。その際の隠語では挿入される側を「受け」「バック受け」などと呼び、挿入する側を「タチ」「バックタチ」などと呼ぶ。(ゲイ用語を参照)

年が明けて初めてのセックスを「姫始め」と呼ぶが、男性同士の性交の場合、「殿始め」と呼ばれる。

ラブホテルを利用する場合、肛門性交により設備が汚れ清掃に手間がかかることが多いため、男性同士での利用は断られる場合がある。
その他

パプアニューギニアザンビアの一部地域では、男性の成人の儀式として実施されている。これらの地域では、精液が男性を男性たらしめる根源と見なされており、充分な精液を持たない不完全な男性であるとされる少年を真の男性に転換させるため、肛門性交や口交によって成人の精液を摂取させるという[16]
性感染症リスクの高さ・直腸粘膜

直腸粘膜は薄いため、肛門挿入等で傷付き出血しやすく、感染症に感染しやすい。そのため、肛門性交はさまざまな性感染症の感染を広げるリスクが高く[17][18]、性行為は(男性同士の)肛門性行為となる男性同性愛者両性愛男性献血は禁じられてきた[17]。HIV感染者のほとんどはゲイ・バイ男性であり、感染経路にはコンドーム無しの肛門性交経由感染が占める[18]。2023年には米国赤十字社は「直近3ヶ月以内の肛門性行為無し」なら献血可に緩和した[17]


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