多岐川魔矢は街で出会った行きずりのプレイボーイの青木健太と娑婆の最後の一夜を過ごした朝、セントクロア修道院に入る。そこは姦淫、殺傷、盗みを禁ずるなど73の戒律をもつが、18年前かつてそこの修道女で院長を約束されていた副院長の母篠原美智子の死に纏わる謎を探るためだ。修道院の厳しい戒律に嫌気が差した摩矢は青木健太達と接触し彼らに副院長を犯させ裸に薔薇の枝縛りの刑を受けるが、嫌疑不十分で拘束を解かれる。その修道院で魔矢は母を知る年老いた使用人の女性に、母が院長による責めで苦しんで首を括った折に自分が産み落ち、助けられた事を知る。さらに院長から父は滝沼司祭だと知らされ愕然とする。司祭は影で何人もの修道女に手を付け、身籠った者は戒律違反者として修道女らの拷問の果に殺されていたのだ。原爆の長崎、アウシュビッツにも現れなかった神を怨み裏切りながら待ち続ける滝沼司祭と、学生時代から篠原美智子の才能に嫉妬し続け遂に葬る事で満たされた院長。知り過ぎた彼女を追放出来ず躊躇う院長に司祭は魔矢殺害の命を下す。失敗し落命した院長の後を受け、すでにローマから戒律回復目的のため院長補佐に派遣されたナタリーに聖ミサの夜を待ち毒殺されかけるが辛くも逃れる。落命した彼女に成り済まし復讐のため司祭に抱かれるが全ての真相を知った彼には摩矢が罰を下した神の到来に見えていた。十字架の剣で彼は刺し貫かれ倒れるが、背後には母らしい見知らぬ女性の幽霊が立ち、絶命した彼のはだけた肌には長崎原爆の火傷の痕が深く遺っていた。 1974年2月26日、渡瀬恒彦主演『学生(セイガク)やくざ』との二本立てで公開された[1]。『学生やくざ』の方がA面であったが宣伝はフィフティフィフティであった[1]。「東映ポルノ路線」は1973年頃から営業成績が急落してはいたが『聖獣学園』は「想像できないほどの不入り」だった[20]。これを見た岡田社長は「ストリップ映画は所詮キワモノだよ!」と宣言し[16][21]「東映ポルノ路線」撤退の切っ掛けとなった[16][21](実際はこの後も細々と製作は続く)[22]。 多岐川のヌードがあまりにも有名であるが、作品自体も欧米でカルトムービー化しているといわれる[23]。日本におけるナンスプロイテーション映画の古典と評されている[24]。 監督の鈴木則文は1973年11月、東映京都撮影所から東京撮影所に転じて最初の作品であったが、封切り時の大惨敗で岡田社長からの指示で、ヒット作を作るまでは東京撮影所に残れと命じられる[25]。しかし翌1974年、岡田社長の企画『緋牡丹博徒』のカラテ版『女必殺拳』を製作(脚本を共作)[25]。同作は志穂美悦子主演で4本シリーズ化されたが、これは吹き替えなしの女性アクションシリーズとしては日本では元祖であり、また今日まで唯一となっている[25]。1975年からは『トラック野郎』シリーズで大いに当てる。
興行成績
評価
1980年5月24日、石井聰亙監督の『狂い咲きサンダーロード』が全国公開された際、同作がニュープリントでリバイバル同時上映され興行成績は健闘したといわれる[1]。
逸話
主演の多岐川裕美は本作以降、脱ぐことを拒否し東映作品を敬遠した[22]。1976年放送されたNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』で主役の加藤剛が演じる平将門の恋人・小督役を演じて以降テレビを主とし、1970年代後半に清純派スターとして売れっ子になったが[19][26]、本作でヌードになっていることが当時のメディアに報じられ、また所属事務所移籍問題などが出て世間を騒がせた[3]。
スタッフ
原作・監督・脚本:鈴木則文
漫画:沢田竜治
企画:高村賢治
脚本:掛札昌裕
撮影:清水政夫
音楽:八木正生
キャスト
多岐川魔矢:多岐川裕美
石田松子:山内えみこ
青木健太:谷隼人
北野久子:渡辺やよい
中上ミカ:大谷アヤ
渡辺洋子:城恵美
丘珠枝:田島晴美
中川道代:石田なおみ
玉木季子:美和じゅん子
水城良子:大堀早苗
村越清江:村松美枝子
冬木めぐみ:謝秀客
小島紀久:竹村清女
高波美恵:早乙女りえ
上坂冬江:谷本小代子
小笠原綾:森秋子
菅野さち:山本緑
ナタリー・グリーン:衣麻遼子
ジャネット:マリー・アントワネット
北野恵子:木村弓美
天野君子:木挽輝香
太田淳子:鈴木サチ
篠原美智子:根岸京子
松村定子:三原葉子
村川神父:山田甲一
田中:田中小実昌
政美:小林千枝
みどり:章文栄
亀田辰平:太古八郎
柿沼信之:渡辺文雄
脚注^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 鈴木則文『東映ゲリラ戦記』筑摩書房、2012年、129-141頁。