聖母マリア
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この記事ではキリスト教におけるマリアのみについて取り上げる。
全教派に共通する概説

日本語以外では、英語: Holy Mother(聖母)よりむしろthe Virgin Mary(処女マリア・童女マリア)、Saint Mary(聖女マリア)、Our Lady(我らが貴婦人)などと呼ぶことが多い。フランスノートルダム大聖堂のNotre Dame(ノートルダム)もフランス語で「我らが貴婦人」という意味である。他にもスペイン語: Madre de Dios(神の母)やLa Virgen(聖処女)という表現もある。ギリシア語: Θεοτ?κο?・ロシア語: Богородицаは「神を生みし者」である。

なお、漢語としての「聖母」は人格の優れた尊崇される人の母を意味し、また漢文においては人徳を極めた女性に対する敬称である。

新約聖書の『ルカによる福音書』にはマリア自身に、『マタイによる福音書』には夫ヨセフのもとに天使ガブリエル受胎告知に現れたという記述があり(ルカ 1:26?38,マタイ 1:18?21)、聖霊によりヤハウェの子ロゴスであるイエスを身篭ったとされている。

聖母マリアについての教義、崇敬には西方教会東方教会それぞれ教派ごとに違いがある。この項目では「西方教会(カトリック教会聖公会プロテスタント)」、「東方教会(正教会東方諸教会)」の順に説明する。大半のプロテスタントでは、マリアは崇敬の対象になっていない。
西方教会
カトリック教会における聖母マリア
呼称

カトリック教会における聖母マリアの呼び名としては、他に「無原罪の御宿り[3](この呼び方はルルドの奇跡にも登場する)や、Maris Stella(ラテン語:マリス・ステラ=海の星)などがある。なお、日本のカトリック教会では「マリヤ」と呼んだり表記されることはない。
概説ボッティチェッリ画・受胎告知

カトリック教会でも正教会と同様、聖母マリアに神への執り成しを求める祈りが捧げられる(ロザリオ等)。その誕生から死(聖母の被昇天ラテン語: assumptio)まで生涯の各場面が記憶され、「聖マリアの誕生」(9月8日)や「聖母の被昇天」[4](8月15日)などを祝日としている。

カトリック教会では、正教会にもプロテスタントにもない教義として、マリアの無原罪の御宿り1854年教皇ピウス9世の回勅により教義決定)や、地上の生活を終わった後、霊魂も肉体も共に栄光にあげられた聖母の被昇天(1950年に教皇ピウス12世により教義決定)が信じられている。また、世界各地での聖母マリアの出現もある。(聖母の出現を参照)
聖書の中の聖母

観想(ルカ1:29,2:51)

神の御心を生きる「お言葉通り、この身になりますように (Let it be to me)」(ルカ1:38)

とりなしを求める(ヨハネ2:1?11)

受難の時をじっと静かに耐え、救いの時を待つ。静かに一緒にいる。(ルカ2:45?51,
ヨハネ19:25)

人類の母(ヨハネ19:26)

聖母への祈り

アヴェ・マリア (Ave Maria)

ロザリオ

サルヴェ・レジナ

アヴェ・マリス・ステラ

聖マリアの連祷

記念する聖堂

東京カテドラル聖マリア大聖堂(
カトリック関口教会東京都文京区

大阪カテドラル聖マリア大聖堂(カトリック玉造教会・大阪市中央区

他にも、「無原罪の聖母」を教会の保護者とする浦上天主堂長崎県長崎市)など、多数
カトリック教会の美術における聖母ロッホナー画・薔薇垣の聖母

キリスト教文化圏(主にヨーロッパ)の芸術作品のモチーフとして、聖母、あるいは聖母子、受胎告知の場面などは頻繁に描かれる。これらの美術作品においてマリアは青い服を着ることが多いが、青色は聖母マリアの象徴の色であるためである(海星)。同時に処女の象徴である白百合、神の慈愛を示す赤色が共に用いられることが多い。

マリア像

聖母子像

受胎告知

聖公会における聖母マリア

この節の加筆が望まれています。

聖公会には神の母としての特別な位置付けを聖母マリアに対して認める見解が存在する。聖公会の教会堂、および聖公会関連の施設には「聖母」の名を冠したものが多数存在する。
プロテスタントにおけるマリア詳細は「プロテスタントにおけるマリア観」を参照

プロテスタント教会では、マリアを全く尊敬しないというわけではないが、カトリック教会や正教会のように特別視しないことが多い。マリアがパウロやヨハネ等と同じ普通の人間で特別な意味がなく、人間イエスの母親という役割であるだけと理解されているからである。
東方教会
正教会における生神女マリヤエレウサ型」と呼ばれるイコン。16世紀のもの。マリアが頬を寄せている姿がその特徴であり、生神女の慈憐と、子を襲う苦難(十字架)への忍耐を表しているとされる。
呼称

一般に「日本正教会では聖母マリアという表現は用いられない」と言われるが、厳密には正しくない。聖堂名や出版物に「聖母」の語が用いられているケースは戦前・終戦直後の時期までは、僅かながら散見された。ただし、現在の日本正教会では日常的には聖母の語が用いられることは皆無であり、出版物での表記は「生神女」の呼称が最も多用されている。祈祷書では、「生神女」「神の母」「永貞童女」「童女」「童貞女」が多用される。「聖母」をあまり用いない理由としては、

亜使徒聖ニコライの訳を尊重すべきである。

教会における「聖なる母」は1人ではない(例は多数あるが、例えば生神女の母アンナも聖人であり、「神の祖母」と正教会では呼ばれる)。

イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の母マリヤの称号「Θεοτ?κο?」:「神の母」は第三全地公会議での確認事項であり、これを尊重して精確な訳語を用いるべきである。

海外正教会でも「Theotokos」(セオトコス:生神女)・「the Virgin Mary」(童女マリヤ)と呼ばれており、「Holy Mother」(聖母)とは、まず呼ばれておらず、全正教会の標準的呼称に則るべきである。

等が挙げられている。本節では生神女マリヤを基本的に用いることとする(※日本正教会では、カトリックとは対照的に「マリア」ではなく「マリヤ」と表記する)。
概説「生神童貞女と神の子」1901年。画:ヴィクトル・ヴァスネツォフ。イコンではない、世俗絵画としての生神女像の傑作のひとつ。

正教会では、生神女マリヤに神への転達(執り成し)を求める祈りが頻繁に捧げられる。女宰(じょさい)・女王(にょおう)などとも呼ばれる。

また、数ある転達者(てんたつしゃ・聖人)の中でも、直接「救いたまえ」と祈祷文で呼びかけられるのは、生神女マリヤのみである。生神女マリヤの転達は「母の勇み」と形容され、神への祈りに際して特別な恩寵が与えられていると正教会では考えられている。

現在は聖母マリア墳墓教会となっている、エルサレムのケデロンの谷の一画に墓所があると考えられている。


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