バロック時代のフランスの画家ニコラ・プッサンの代表作『アルカディアの牧人たち
』では、墓石にラテン語で"Et In Arcadia Ego"(我はアルカディアにもある)と書かれているのを牧人たちが覗き込んで想いにふける様子を描いている。"Et In Arcadia Ego"(我はアルカディアにもある)は、並び替えると"I Tego Arcana Dei"(立ち去れ!私は神の秘密を隠した!)となるとして、リンカーンらは、これをイエス・キリストの血脈に関する秘密と解釈した。リチャード・アンドルーズとポール・シェレンバーガーは多くの単語がレンヌ=ル=シャトー地域の目印になっていて、彼らはその目印の場所を特定することができたと述べた。例えば"LA CROIX"はアレ・レ・バン北部で交差する鉄道である。これらの場所を羊皮紙文書の通りに訪ねると、正方形を横切る形になる。これを受け、問題の絵はイエスの墓の位置を示しているとして、南フランスの山中『Rennes-le-Chateau(レンヌ=ル=シャトー)』にその位置を推定した。(→キリストの墓)テンプル騎士団がスコットランドに逃れて100年後に、テンプル騎士団の子孫『ヘンリー・シンクレア』が大西洋を西に向かって謎の航海をしたという記録がある。サン・ベルナールの調査によるとテンプル騎士団は財産をカナダの東海岸(大西洋側)に位置するノバスコシアなどに隠したとされ、一部はアメリカにも渡ったともされている。また、『聖杯はヘラクレスの柱の向こうに眠っている』という記述もあり、カナダ説を裏付けているとされるが、『ヘラクレスの柱』の位置問題はアトランティスの研究過程でも問題となっている。
トレヴァ・レヴンズクロフトは1962年に20年の研究の末に、スコットランドのミドロシアン州ロズリンにある『ロズリン・チャペル』の螺旋柱の中にあると発表した。しかし柱という柱、建物内のすべてが金属探知機で調べられたが、結果は得られなかった。つまり、その情報は誤っていたか、『ロズリン・チャペル』に一時的に保管され、その後に『ロズリン・チャペル』以外の場所に移動された可能性もある。
イングランド、スタンフォードシアにあるリッチフィールド家の庭園にあった記念石碑にも、その鍵があるという。ニコラ・プッサンの『アルカディアの牧人たち』をもとにした鏡像である。また、この石碑には"D.O.V.O.S.V.A.V.V.M"と、刻まれている。イギリスのブレッチリー・パークの政府暗号学校の元解読班員であり、ナチス・ドイツが第二次世界大戦中に開発した暗号機『エニグマ』を破った男、オリヴァー・ローンが、2004年この暗号解読を試み、「Jesus (As Deity) Defy」(イエスの神性を受け入れない)という異端の立場を示したものと発表した。
脚注^ ミレイユ・セギー(Mirelle Seguy)「罠としてのロマン――『グラアルの物語』の『続篇』群(13世紀)をめぐって ――」(渡邉浩司訳):中央大学仏語仏文学研究会『仏語仏文学研究』52号 2020 39-65頁、特に40頁
^ フランスで12世紀まで〔大皿、深皿〕の意味で使われた「グラアル」は、13世紀初めにロベール・ド・ボロンによってキリスト教化された。フィリップ・ヴァルテール『アーサー王神話大事典』〔Philippe Walter, Dictionnaire de mythologie arthurienne. Paris: Imago 2014〕(渡邉浩司・渡邉裕美子訳)原書房 2018 230-232頁参照
^ J・キャンベル&B・モイヤーズ『神話の力』ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2019年、410-412頁。
参考文献
「聖杯伝説?その起源と展開を再考する(フォーラム・オン)」『ケルティック・フォーラム』(日本ケルト学会)第8号(2005年)
渡邉浩司編著『アーサー王伝説研究 中世から現代まで』(中央大学出版部、2019)ISBN 978-4-8057-5355-2
フィリップ・ヴァルテール『アーサー王神話大事典』渡邉浩司・渡邉裕美子訳(原書房、2018)ISBN 978-4-562-05446-6
Philippe Walter, Dictionnaire de mythologie arthurienne. Paris: Imago, 2014