聖書正典の範囲について、いつの時代にも異論を唱える者の存在はある[9]。
ヘブル語聖書・旧約聖書詳細は「ヘブライ語聖書」、「タナハ」、および「旧約聖書」を参照
旧約聖書はキリスト教徒の名称であるため、ユダヤ教では旧約聖書と呼ばない。また、ユダヤ教では2区分または3区分にわけられる。そのためこの区分をめぐって複数の説が唱えられてきた。
三大区分説 重要度の高い順に配列され、モーセの律法にもっとも高い権威が与えられているとする。ラビ・アイモニデス 聖書の内容によって区分する。 段階的に正典化されたというもので、文書仮説、高等批評で認められている説である。日本キリスト教協議会(NCC)の『キリスト教大辞典』ではこの説のみが紹介されている。 聖書信仰の教会で受けいれられている説[10]である。ロバート・ディック・ウィルソンの論文で上記の3大区分が正典化の順序であったとする説が否定されている[11]。 トリエント公会議はラテン語のヴルガータに含まれるものを聖書正典と定めた。カトリック教会はプロテスタントが第二正典を取り除いたとするが、プロテスタントはトレント公会議が旧約聖書と外典の区別を取り除いたとしている[12]。カトリック教会が教会の権威によって聖書が正典になったとするのに対し、歴史的なプロテスタントは聖書の権威を教会が確認したに過ぎないと見なしてきた[13][14][15]。ただし、今日の自由主義神学の聖書学者は、人間的な基準によって聖書が決定されたとしている[16]。 ウェストミンスター信仰告白等歴史的なプロテスタントの信仰告白は、聖書を66巻としているが、現代のエキュメニカル運動による『新共同訳』は続編として第二正典を収録するものと、プロテスタントの伝統的な巻数の二種類を出版した。これをめぐって聖書信仰の立場では、「旧約外典を「旧約続編」として付加したもの」には、「カトリック教会も受け入れられない外典が付け加えられている」とし[17]、泉田昭は「外典を続編として加え、聖書の正典論に一石を投じた」が、続編付きと正典の区別が読者にはわからないと指摘している[18]。
律法(トーラー)5巻。創、出、レビ、民数、申命記。
預言者(ネヴィイーム)8巻。
前預言者4巻。ヨシュア、士師、サムエル、列王
後預言者4巻。イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、12小預言書(ホセア書、他)
諸書(ケトビーム)11巻。
真理(エメト)3巻。詩編、箴言、ヨブ記
巻物(メギロート)5巻。雅歌、ルツ記、哀歌、伝、エステル
その他3巻。ダニ、エズラ、ネヘ、歴
霊感の重要性による区分
内容による区分
聖書の正典化詳細は「正典化」および「3段階正典化説」を参照
著者の身分による区分
第一区分:モーセ
第二区分:預言の賜物を持ち、公けの預言者の地位にあった。
第三区分:預言の賜物を持ち、公けの預言者の地位になかった。
正典と外典詳細は「第二正典」および「外典」を参照
脚注^ ⇒教会における聖書の解釈?教皇庁聖書委員会?1993年4月15日
^ 『カトリック大辞典 1』(422頁、上智大学編纂、冨山房、昭和42年第七刷)
^ The Rastafari Movement: A North American and Caribbean Perspective. Routledge. (2017). ISBN 978-1138682153.
^ “List of books in the Orthodox Tewahedo Bible
^ “正教会版ロシア語訳旧新約聖書
^ “賢者の道 Vol.902”. melma.com. 2019年1月11日閲覧。
^ 和田幹男著『私たちにとって聖書とは何なのか』p.188
^ マーティン・ロイドジョンズ『教会の権威』KGK新書
^ ヘンリー・シーセン『組織神学』p.171
^ 尾山令仁『聖書の権威』羊群社 p.96
^ R. D. Wilson, The Rule of Faith and Life, in The Princeton Theological Review
^ アリスター・マクグラス『キリスト教神学入門』p.224
^ 『キリスト教神学入門』p.224
^ 『聖書の権威』
^ 『新聖書辞典』