聖戦士ダンバイン
[Wikipedia|▼Menu]
ダンバイン関連の玩具・商品は作ってもあまり売れず、スポンサー企業は業績の低迷に苦しんだ。その玩具の売上不振を打開するため、アニメの物語の中では、ウイング・キャリバーからオーラバトラーへの変形を売りにした新主役メカ「ビルバイン」の投入と、物語の舞台をバイストン・ウェルから現実世界へと移行させ、派手なロボットバトルを前面に打ち出すことなど物語の路線変更が図られた。しかし、そんな努力もむなしく、メインスポンサー企業であるクローバーが倒産してしまった。アニメ本放送のシーズンの途中で、メインスポンサーの企業が倒産するのは前代未聞・異例のことであった。そこで、急遽、本作のプラモデルを販売していたバンダイが「聖戦士ダンバイン」のメインスポンサーとなり、新スポンサーにタカラトミーを迎えて、ビルバインの玩具販売を請け負ってもらうことになった。こうして、「聖戦士ダンバイン」はアニメ番組の打ち切り危機から逃れたのである。

総監督を務めた富野由悠季は、バンダイにメインスポンサーを引き受けさせたサンライズ営業の努力には触れてもトミーの件には触れておらず、「この十数年、ダンバインのメインスポンサーが潰れたことを忘れていた」「バンダイ発じゃなかったから本作が消えていった(ガンダム一辺倒になってしまった)」などと発言している[3]。角川書店『リーンの翼』KADOKAWAノベルズ三巻後書きに富野は当時の忸怩たる思いをしたためている。ダンバインまでのスポンサー・クローバーは、タカラの系列会社タカラ工業に玩具製造をアウトソーシングしていた。クローバーの大口債権者であったタカラは、その気になればガンダムを含めたクローバーの版権資産を接収できた。が、当時の社長の判断で、それをしなかった。これはバンダイが翌々年に『機動戦士Zガンダム』をスタートさせる切っ掛けのひとつになったと思われる。
総監督・富野由悠季自身による評価

制作当時、ガンダムの他にもう1本ヒット作が欲しいという欲があり、ガンダムと似て非なるものとして本作が生まれたと述懐して、ガンダムでシンプルだった人間関係を複雑化して戦国時代の陣取合戦がしたい思惑と、当時のドラマやアニメのテンプレな人物設定に拒否反応があって、それが恋愛要素に留まらない複雑な人間ドラマの展開に発展したと語った上で、劇作家になれない自身の焦りの中で生まれた思い出したくない作品であると明かしている。そして、オーラバトラーを「良い理想」「悪しき理想」に二極化させる踏ん切りがつかず、永井豪の『デビルマン』に嫉妬して、人が何かに変身することに嫌悪感があったことも影響して、オーラバトラーを人の化け物(化生)の象徴として描いてしまい、ファンタジーとして描けなかったことが失敗の理由だったとして、自身が戯作者になれない本質が此処にあると述べている[7]

第1話について、富野由悠季は「そもそもあれが作劇上の失敗で、異世界に召喚されたショウ・ザマを一晩寝かせ(ワンクッション置いて)、翌朝から作品世界の説明をだらだらとやった結果、主人公としての動機付けができず、その後も状況に対し能動的に動けない流されがちなキャラクターになってしまった。あそこで戦火の只中に投げ入れておけば、もっと物語も弾んだことだろう」と悔いている。また、第1話の完成したフィルムを見た時点で、富野は「自身の趣味性のみで作品を制作している」と感じ、番組内容を当初の構想から大幅に変更することを決意した。エピソード「東京上空」を可能な限り前倒しにし、オーラマシンが地上に出た時点で終わる予定だった内容を変更した。同時に自分の趣味性だけで終わらないようにシーラ・ラパーナを男性の老人から美少女に変更(これは脚本の富田祐弘が提案)した。それに伴いエンディングのみの予定だったエル・フィノも本編に登場することとなった。

オーラシップは当初、オーラバトラーを運ぶための小型母艦として設定されていたが、「地上編」近くに来てオーラバトラーを有する各国が巨大なオーラバトルシップを建造、圧倒的な火力で地上を焦土と化す場面も見られた。中でもゴラオンは戦艦然としたデザインになっており、これについて富野は「例えばこういう言い方が出来る。出渕のアホが(笑)」ともしている[8]。ただし、当の出渕によればゴラオンは富野の指示で"ヤマト的にした物であり[9]、巨大戦艦の存在自体にも否定的であった[10]

最終話のシナリオ段階では、命を落とした登場人物達がミ・フェラリオとして生まれ変わることになっていた[11] が、「それでは『伝説巨神イデオン』と同じ結末になってしまう」という富野の演出意図により、完成したフィルムからは削除されている。翌年アメリカのアニメイベントにパネリストとして参加した富野由悠季が、現地のファンから「『聖戦士ダンバイン』のラストは、あなたにとって不本意だったのでは?」との質問を受けた際に前述の返答をしたところ、なおも「それは了解したが、作品全体として考えると、やはりあの終わり方は消化不良なのではないか」と指摘され、富野は「ゴメン!」と謝った。

2017年、Blu-ray BOXの発売に際しては(『ガンダムに負けている』と相変わらずキツメの評価もしつつ)「『ダンバイン』も頑張ってたんだねえ」とのコメントを寄せている。
あらすじ

バイストン・ウェルは、輪廻する魂の休息と修錬の場。海と陸の間に存在し、生体エネルギー「オーラ力(ちから)」によって支えられている。コモンと呼ばれる種族は中世ヨーロッパ的な封建制国家群を形成し、妖精の姿をしたミ・フェラリオ、その上位種族であるエ・フェラリオ、蛮族ガロウ・ランなどがそれぞれの勢力圏で互いに影響(ガロウ・ランが、自らの超人的な能力をコモンに提供することで対価を得るなど)し合いながら暮らしている。エ・フェラリオは、バイストン・ウェルの天井部分に当たる水の天界「ウォ・ランドン」に棲息しているが、下級妖精のミ・フェラリオは30センチ前後の大きさで背中に2対のを持ちコモンの世界にも現れる。本来、生死以外にバイストン・ウェルと地上界を往来することは不可能だが、エ・フェラリオの力や偶発的な事故などによって開かれる「オーラ・ロード」を通ることで、稀にそれは発生する。

ある日、コモン界にある「アの国」の地方領主ドレイク・ルフトは、捕獲し水牢に幽閉したエ・フェラリオのシルキー・マウを脅し、地上人(ちじょうびと=我々の住む地上界の人間)ショット・ウェポンとゼット・ライトをバイストン・ウェルに召喚する。ロボット工学に明るいショットはバイストン・ウェル固有のオーラ力に着目し、それをエネルギー源とする「オーラマシン」を開発、バイストン・ウェルに初めて「機械」をもたらした。当初はユニコン・ウー(馬に似た動物)に代わる移動手段程度の物だったが、やがて飛行兵器オーラ・ボム、さらには巨獣の甲殻を外装にまとい、内蔵された人工筋肉を電子制御によって駆動する人型兵器「オーラバトラー」(「巨人騎士」とも呼ばれる)へと発展した。

ドレイクはオーラマシンの圧倒的な力を手に入れたことでバイストン・ウェル全土を掌握するという野望を抱き、既に旧式となったオーラマシンやその技術を他国に輸出することで莫大な資金を得た。さらには強力なオーラ力を持った地上人を戦士として利用するため、再びシルキー・マウに「オーラ・ロード」を開かせ、試作オーラバトラー・ダンバインのパイロットとしてショウ・ザマトッド・ギネストカマク・ロブスキーの3人を召喚した。ショウは突然の異世界に戸惑いながらも、ただ言われるままにドレイクの対抗勢力である同じアの国の地方領主「ギブン家」との戦いを重ねていたが、ドレイクの娘でギブン家の長男ニー・ギブンと恋仲のリムル・ルフト、ギブン家に味方する地上人マーベル・フローズンの説得によりドレイクの真意を悟り、ダンバインと共に出奔。ニーの指揮するオーラシップ「ゼラーナ」に身を寄せる。

各国はオーラマシンの開発競争にしのぎを削り、戦乱は拡大の一途をたどると共に混迷の様相を呈していった。オーラ増幅器によりオーラバトラーを扱えるようになったコモンの騎士の登場やドレイクの新たな地上人の召喚を経て、遂には主要各国が巨大なオーラ・バトル・シップを持つまでに至った。フェラリオの長であるジャコバ・アオンは、目に余るコモンの蛮行に業を煮やし、その意志と力により全てのオーラマシンとそれに関わる全ての者をバイストン・ウェルから放逐した。これにより、世界各地にオーラマシンが出現し戦いの舞台は地上界へと移る。オーラマシンの圧倒的な力で地上をも我が物にせんとするドレイク率いるアの国とビショット・ハッタが治めるクの国、その野望を阻止せんとするナの国の若き女王シーラ・ラパーナとラウの国のエレ・ハンムの下に集う連合軍は、世界各国を巻き込んだ全面戦争へと突き進んで行く。

激化する戦いの果て、マーベルとトッドは戦死し、ショウは宿敵の黒騎士と刺し違えて命を落とす。これ以上の戦火の拡大と犠牲の増加を危惧したシーラは、戦争を終結させるため、持てる全てのオーラ力を開放して全ての悪しきオーラを浄化し、バイストンウェル関係者の全ての魂を元いた世界に送り返すことで戦いを終結させる。

ただ独り地上に取り残されたチャムは海上を漂っていたころを救出してくれたアメリカ軍にこれまでに起きた出来事の全てを「バイストン・ウェルの物語」として語り、いずこかへと姿を消すのだった。
登場人物
聖戦士
ショウ・ザマ
- 中原茂本作の主人公で地上人。東京都武蔵野市東吉祥寺の一角に父シュンカと母チヨと共に住んでいる日本人[ep 1]。18歳。仕事一辺倒で家庭を省みない両親に反発し、モトクロスに熱中していた。愛車はホンダGL1000ゴールドウィング・アスペンケイド


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:228 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef