羽ばたき振戦
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門脈圧亢進症により食道、胃、直腸静脈瘤からの消化管出血や門脈圧亢進性胃症腹水、急性腎障害などの症状が現れる[4]
詳細は「門脈圧亢進症」を参照

心血管系合併症により、血管拡張、肺内右左短絡、低酸素症(肝肺症候群)[4]

肺高血圧症
詳細は「肺高血圧症」を参照

血液疾患により、貧血、脾機能亢進症、慢性消化管出血、葉酸欠乏症[4]

治療

肝硬変に至った肝臓を元に戻すことは不可能なため、その治療は基本的に対症療法が行われ、合併症の発生を避けるといったことが主に行われる。また、食事制限を行うことによって、肝硬変の進行を少しでも遅らせたり、合併症を防ぐといったことも行われる。これらによって肝硬変患者の延命を図る。なお、肝硬変に至った原因によっては、それに応じた治療が行われることもある。
一般的な治療肝不全用のアミノ酸製剤の例

肝硬変は、一般に飲酒によって悪化するため、食事制限の1つとして、節酒ではなく一切の飲酒を禁ずる断酒が含まれることが通常である。他にも、肝臓において尿素回路が充分に機能しないために高アンモニア血症(英語版)を生じないように、体内でのアンモニアの発生を減らす処置が行われる場合がある。よって、タンパク質がエネルギーとして利用された時に生ずるアンモニアを減らすための食事制限も行われ得る。さらに、ラクツロースを経口投与することで、これが腸内で分解されて腸内のpHを低下させることによって、腸内のアンモニアをイオン化させて吸収されにくくするといったことも行われる。他に、腸管内で腸内細菌によってアンモニアが遊離されることを防ぐために、経口投与してもほとんど吸収されない抗菌薬を経口投与して腸内細菌を殺菌するといったことが行われる場合もある。

また、肝硬変に伴う高アンモニア血症の他に、肝臓でのアミノ酸代謝能力が低下したことによって、芳香族性の側鎖を持ったアミノ酸が蓄積したことなども合わさって発症する肝性脳症を防ぐために、上記の他に、分岐鎖アミノ酸を多く含み、芳香族アミノ酸の含量が少ない、肝不全用のアミノ酸製剤が投与される場合もある。

肝硬変に伴って発生した門脈圧亢進症によって発生した脾腫などの結果として生ずる、貧血の改善のためには、鉄剤を用いることもあるものの、肝硬変の原因によっては鉄過剰によって肝細胞が打撃を受ける可能性があるため、慎重さが求められる。また、脾腫による血小板減少と、肝臓による血液凝固因子合成量の減少に伴う出血傾向については、軽度であればビタミンKの補充によって肝臓での血液凝固因子合成を促進する方法もあるものの、もはや肝臓による血液凝固因子合成が望めない場合は、血液凝固因子を補充するために新鮮凍結血漿の輸血が行われることもある。新鮮凍結血漿の輸血によって、肝硬変の肝臓では合成が不足しがちになるアルブミンも補充できる。ただし、この治療を行うと、輸血に伴う感染症のリスクを患者は負うことになる。

肝硬変による門脈圧亢進症の結果、脾腫以外にも様々な合併症が現れるために、それらの対処が求められる場合もある。門脈の流れが悪くなったことなどによって発生する腹水については、体液貯留を防ぐためにも塩分制限を患者に課し、利尿薬の投与が試みられるものの、効果が不充分であれば、腹部に針を刺して直接腹水を抜き取る場合もある。門脈に溜まった血液が無理に心臓に戻ろうとした結果、しばしば痔核や食道静脈瘤を形成する。このうち食道静脈瘤破裂による出血は、致死的である場合もあるために、食道静脈瘤破裂を防止する処置が試みられる場合もある。これらのように、門脈圧亢進は様々な合併症を引き起こすため、TIPS(経頚静脈的肝内静脈短絡術)が試みられる場合もある。この他、肝硬変に伴って肝がんが発生した場合は、その治療が試みられることもある。

ただし、いずれの治療も肝硬変の病期の進行に伴って治療は困難になりがちであり、死亡に至ることもある。これを避けるために、肝移植が行われる場合もあるものの、仮に肝移植が成功したとしても、拒絶反応を防止するために生涯にわたって免疫抑制剤を使用し続ける必要があるため、患者は日和見感染症を含めて感染症全般に注意せねばならない。また移植後の長期経過の中で、移植された肝臓の機能低下など更なる問題が出てくる場合もある。
原因別の治療

以上に加えて、肝硬変が発生した原因によって、以下の治療が試みられたり、特に患者に強い食事制限を課したりする場合がある。
アルコール性肝硬変では、まず禁酒こそが最も重要であり、患者は直ちに断酒をしなければならない。例えば、
アルコール性脂肪肝であれば可逆的なので、一時的な禁酒によって脂肪肝が解消されれば、適量の飲酒ならば許されるようになる場合があるのに対して、肝硬変に至った肝臓は不可逆的であるために生涯の断酒が求められる。残存している肝機能を可能な限り長く維持しておくために、断酒は避けられない。なお、その他の原因による肝硬変であっても禁酒は予後を改善するため、いずれにしても肝硬変になった場合は断酒が求められる。

B型肝炎の結果発生した肝硬変では、HBV-DNA陽性の場合にはエンテカビルなどによる、抗B型肝炎ウイルス治療が試みられる[15]。なお、5年間にわたるテノフォビル投与により、HBVによる肝硬変患者の約75%は、肝硬変が改善していた[16]

他の病気の治療への影響

肝硬変に陥った患者は、肝機能が低下するために、もしも、肝硬変患者が肝臓以外にも疾患を抱えていて、何らかの治療を行っていた場合には、その治療にまで影響を及ぼす場合がある。例えば、その疾患の治療のために使用していた薬物が、肝臓で代謝されたり、胆汁へと排泄されることが必要な薬物であった場合、その薬物が使用不能になる可能性があるといった具合である。
予後

肝硬変は、肝臓の不可逆病変であり、治癒しない。そして肝不全に陥った場合、死を避けることは難しい。したがって、残存している肝機能をどれだけ維持できるか、いかに代償性肝硬変の状態を長く維持できるかによって、予後は左右される。この他に、腎機能が低下した患者や、肺機能が低下した患者では予後が極めて悪い。さらに、肝硬変は肝がんを発症しやすい状態であるため、肝がんを発症して死亡に至るケースもある。また、肝硬変に伴う出血傾向によって、消化管出血、特に、食道静脈瘤の破裂によって急死する場合もある。なお、非代償性肝硬変に至ったとしても、肝移植が成功した患者の生命予後は改善される。しかしながら、肝移植を行った場合、HLAが完全に一致しない限り拒絶反応を抑えるための免疫抑制を生涯行う必要が出てくるなど、問題もある。
出典・脚注[脚注の使い方]^ ヘモクロマトーシス 慶應義塾大学病院 KOMPAS
^ 肝疾患診療実践マニュアル 文光堂 1995
^ 新臨床内科学 第8版
^ a b c d 肝硬変 - 02. 肝胆道疾患 MSDマニュアル プロフェッショナル版
^ 内科学第10版アプリケーション版 朝倉書店
^ 河田真由子, 川中美和, 石井克憲, 勝又諒, 谷川朋弘, 浦田矩代, 西野謙, 末廣満彦, 春間賢, 河本博文「6回の肝生検によりNASH肝硬変への進展を血液検査と肝組織像で対比できた1例」『日本消化器病学会雑誌』第119巻第12号、日本消化器病学会、2022年12月、1103-1111頁、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}CRID 1390575882595340800、doi:10.11405/nisshoshi.119.1103、ISSN 0446-6586。 
^10.肝臓 (12)肝細胞癌(肝硬変と肝臓がんを併発した肝臓の写真)
^ 今日の診断指針第6版 医学書院 2010
^ 小林伸行, 都築隆, 萬造時知子 ほか、「【原著】脂肪肝症例における肝線維化指標FIB4 Indexの経時的変化」 『人間ドック (Ningen Dock)』 2014年 29巻 1号 p.34-41, doi:10.11320/ningendock.29.34
^ FIB-4 index計算サイトのご案内(EAファーマ 提供)(医療従事者向け) 日本肝臓学会
^ a b 非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)の 拾い上げ第 2 弾 “Fib-4 index” (PDF) 福井県済生会病院
^ 脂肪肝の肝硬変・肝細胞癌への進展 Web医事新報 日本医事新報社
^ 肝がんとともに 日経メディカル
^一般向け がん情報サービス 肝細胞がん 国立がんセンター
^ 今日の治療指針 医学書院 2009
^ Lancet 2012 Dec 10; [e-pub ahead of print].

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、肝硬変に関連するカテゴリがあります。


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