義務教育
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教育基本法学校教育法の規定によって、子供を保護する日本国民(保護者)の義務については、15歳までの最長9年間は教育段階に応じる一条校就学させなければならない[21]とされ、義務履行の督促を受けてもなお履行しない者は10万円以下の罰金に処する[22]とされている。しかし、督促について定めた学校教育法施行令第20条・第21条[23]の運用によっては、保護者に対して督促が行われず、保護者は処罰されない。保護者が催促を受けない具体例としては、保護者が子供が学校に就学できるよう充分な便宜を図った上にもかかわらず、子供自身が登校しない不登校の場合などである[9]。これについては、いじめ・校内暴力などの教育問題との関係もある。

ただし、保護者が就学させなければならない子で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、保護者の義務を猶予又は免除することができる[24]
沿革

1871年明治4年)、文部省が設置された(大学ヲ廃シ文部省ヲ置ク。)。1872年(明治5年)、学制公布。しかし、学制から始まった義務教育推進運動は、当初は授業料徴収があったために中々効果を上げなかった。

1879年(明治12年)、教育令が公布され、翌1880年(明治13年)に改正された。1886年(明治19年)には学校令が公布された。

1890年(明治23年)の小学校令改正で、尋常小学校の授業料を無償化にした。尋常小学校修了または学齢超過のどちらか早い方が義務教育の終期であった。尋常小学校の修業年限は3年間または4年間で[注 1]、学齢期は8年間であったため、義務教育期間は3年間から8年間である。1900年(明治33年)の小学校令全面改正で尋常小学校の修業年限が4年間となったため、義務教育期間は4年間から8年間となり、さらに1907年(明治40年)の小学校令改正で尋常小学校の修業年限が6年間となったため、義務教育期間は6年間から8年間となった[注 2]。内務省や大蔵省を折衝した牧野伸顕文相の努力があった[25]1903年(明治36年)には国定教科書制度が導入された。

1915年(大正4年)には通学率が90%を超えるなど、学齢期の国民の就学が普遍化していった。

1879年(明治12年)の教育令施行から1941年(昭和16年)の国民学校令の制定までは、保護者は市町村長の許可を得るなどして義務教育として「家庭又ハ其ノ他」における教育を選択することができた(第3次小学校令では、第36条第1項但書の規定による)。

1936年(昭和11年)、廣田弘毅内閣で文部大臣を務めた平生釟三郎が、義務教育年限6年を8年に延長する案を閣議に提出。内閣調査室などの反対に会うが1938年(昭和14年)から実施されることとなった[26]。さらに1939年(昭和14年)から、中等学校高等小学校などに在籍していない男子は、14歳から19歳まで青年学校への就学義務があるとされ、年間210時間の定時制教育を受けることとなった。これは第二次世界大戦下の国家総力戦のための軍事教練的な性格も強かったが、形の上では男性のみ13年間の義務教育期間が定められていたことになる。1941年(昭和16年)国民学校令公布。実質的には、尋常小学校に代わって国民学校初等科(修業年限は6年間)が義務教育課程となったため、義務教育期間は6年間?8年間のままである。

1944年(昭和19年)からは国民学校令改正によって昼間の授業による義務教育が8年間に延長される予定であったが、戦況悪化のため実施されなかった。とはいえ、これら義務教育が時代の背景や情勢に左右されることはあっても、当時の日本は世界的にみて識字率の高い国となっていた。なお、国民学校令では義務教育年限は8年間であり、義務教育の終期は国民学校の修了とは関係なく、完全に年齢によって定められていたが、施行当初の3年間は6年制のままにするとの規定があり、また1944年(昭和19年)以降の国民学校令等戦時特例により国民学校8年制化が先送りされたため、義務教育の終期は従来通り年齢主義と課程主義の併用のままであった。なお、6年制予定期間と戦時特例を合わせた期間は、国民学校令の施行から廃止までの全期間に渡っていたため、実際には法令通りの運用になったことはない。

第二次世界大戦敗戦後GHQ占領下の1947年(昭和22年)の学制改革学校教育法公布により、現在まで70年以上続いている義務教育制度が施行された。これは(4月1日時点で)6歳から15歳までの9年間を義務教育期間とし、課程の修了と義務教育の終了が無関係な、完全な年齢主義で運用するようにしたものである。なお移行のため、1947年度は7年間、1948年度は8年間が義務教育期間である。これまでは尋常小学校もしくは国民学校という単一校種が就学先学校であったが、この改革では小学校6年間・中学校3年間をその期間に該当させるという二段階のシステムがとられた。この時点で特殊教育諸学校への就学義務も定められたが、盲学校・聾学校については早い時期に対応できたものの、実際に養護学校の義務教育化は1979年からとなる。

1998年(平成10年)に中等教育学校が学校種として定められたため、これの前期課程も義務教育を実施できる課程となった。
目的

教育基本法(平成18年法律第120号)の第5条2項で「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家および社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。」と規定している。
義務教育として行われる普通教育の目標

学校教育法に「義務教育として行われる普通教育」については次のように定められる。

第21条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成18年法律第120号)第5条第2項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。

我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。

読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。

生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。

生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。

健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。

生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。

職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

保護者が就学させなければならない子

日本において、「保護者が就学させなければならない子」は次の3条件を満たしている子である。なお、ここでいう保護者とは「子に対して親権を行う者」であり、親権を行う者のない時は「未成年後見人」である。
満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまでにある子。(学校教育法第17条)学校教育法施行規則および年齢計算ニ関スル法律に基づけば、4月1日内までに満6歳となった子から4月1日内までに満14歳となった子が該当する。この9年間の義務教育に該当する年齢は、(法律上の)学齢とも呼ばれる。

日本国内に在住している子。学校教育法施行令において「学齢簿の編製は、当該市町村の住民基本台帳に基づいて行なうものとする」とされている。学齢簿に基づいて、就学先の学校が指定される。

保護者が日本国民である子。日本国憲法の第26条第2項、教育基本法の第5条第1項においては、義務を負うのは「国民」であるので、保護者に日本国民が含まれない子は、該当しない。

このうちどれかが欠けても、「保護者が就学させなければならない子」とはならない。「保護者が就学させなければならない子」の場合とそうでない場合では、入学の可否、退学の可否、授業料の徴収の可否、停学などの懲戒処分の可否、出席停止の運用などに違いが生じることもある。

なお、制度について詳しく知っていない人の中には、学齢を超過している者や、外国人の子などの任意就学者に対する教育であっても、小中学校教育のことを「義務教育」と呼んでいる人もいる[27]。これは就学義務などよりも教育内容に着目した呼び方であると思われるが、法律上は正式な表現ではないので、できるだけ使用を避けるべきである。#誤用の節も参照のこと。
義務教育の段階に該当する学校

これを具体化する法律教育基本法および学校教育法)により、その内容は、以下の学校で実施するように定められている。

小学校特別支援学校小学部修業年限: 6年)


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