群集劇
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2000年代以降の映画批評家は、アンサンブル映画やそれと関連する形式を説明するために、ハイパーリンク映画(英語版)やフラクタル映画などの用語を提唱した[7]
ハイパーリンク映画
2005年にアリッサ・クォート(英語版)は、複雑または多重線形の物語構造を特徴とする映画を「ハイパーリンク映画」と呼び、その要素のひとつとして、複数の登場人物のストーリーが織り交ぜられていることを挙げている[16]ロジャー・イーバートも、ハイパーリンク映画は登場人物が別々の物語に存在する映画で、それらの異なる物語の登場人物間のつながりは観客に徐々に明かされると説明しており、その例として『ナッシュビル』や『ショート・カッツ』、『シリアナ』(2005年)などを挙げている[17]
フラクタル映画
2005年にウェンディ・エベレットは、カオス理論の原則に沿って、それぞれの物語が完全にランダムでありながら、「複雑さ、同時性、暴力的な遭遇によって構造化」された1990年代から2000年代の欧米映画を「フラクタル映画」と呼んだ。エベレットは、一見すると無関係なストーリーが交差し、「ランダムで不安定で、予測できない方法」で相互に作用する点で、『ショート・カッツ』『マグノリア』などの作品をフラクタル映画の例に挙げている[7]

次の用語は、アンサンブル映画とほぼ同義または類似する用語として説明されている。
群像劇
『現代映画用語事典』は、群像劇を「複数の登場人物のエピソードが交互に展開する」手法と説明している[18]。文芸評論家の榎本秋は、「絶対的な主人公キャラクターがいない、複数の主人公格キャラクターが相互に絡み合って深みのある物語を展開する」タイプの物語形式であると説明している[19]。映画研究者の桑原圭裕は、アンサンブル映画は一般的には群像劇に大別されると指摘している[3]
群集劇
群集劇は群像劇の類義語で、アンサンブル・キャストのように主役を設けず、不特定多数の登場人物で物語を展開する劇のことを指す。その例としては、ゲアハルト・ハウプトマンの戯曲『織工(ドイツ語版)』(1892年)が挙げられる[20]

そのほかのアンサンブル・キャストと関連する用語は次の通り。
グランド・ホテル形式
詳細は「グランド・ホテル形式」を参照ホテルや船などの特定の場所を舞台にして、アンサンブル・キャストのように特定の主人公を設けず、その場所に出入りしたり集まったりする複数の人々の人間模様を並行的に描く、群像劇による物語形式は「グランド・ホテル形式」と呼ばれる[18][21][22][23]
メリ・ゴオ・ラウンド方式
田中西二郎は、ある関わり合いを持った複数の同格の登場人物が、それぞれあまり絡み合うことなく、交互に並行的に物語が進んでいく構成を、これと同じ試みをしたサマセット・モームの小説『The Merry-go-round』にちなんで、「メリ・ゴオ・ラウンド方式」と呼んでいる[24]。この方式の主な作品には、三島由紀夫の『鏡子の家』(1959年)や、深沢七郎の『東京のプリンスたち』(1959年)が挙げられる[25]
主なアンサンブル・キャストの作品
映画

イントレランス(1916年、D・W・グリフィス監督)[7]

グランド・ホテル(1932年、エドマンド・グールディング監督)[26]

晩餐八時(1933年、ジョージ・キューカー監督)[27]

ナッシュビル(1975年、ロバート・アルトマン監督)[4]

ウエディング(1978年、ロバート・アルトマン監督)[6]

わが街(1991年、ローレンス・カスダン監督)[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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