罰金
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古い刑罰法規の中には、インフレーションにより罰金刑の額が現在の物価からすると、かなり金銭価値が安くなってしまった規定もある。そのような事情に対応するために、罰金等臨時措置法が定められ、罰金刑の額が個々の刑罰規定における額に関わらず、一定額に引き上げられており、実際の法定刑は個々の刑罰法規に罰金等臨時措置法を適用したものになる。なお、一部法では「罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律 [1]」により金額などが直接改正された。

対象となる犯罪は、刑法暴力行為等処罰に関する法律経済関係罰則の整備に関する法律の3つの法律の罪以外の罪(条例の罪を除く)(罰金等臨時措置法第1条)。

罰金刑の最高額が2万円未満の場合は、最高額を2万円とする(同法2条1項本文前段)。

罰金刑の最低額が1万円未満の場合は、最低額を1万円とする(同法2条1項本文後段)。

罰金額が一定の額の倍数で定められている場合は、この限りではない(同法2条1項但書)が、罰金額が1万円に満たない場合は1万円とする(同法2条2項)。

科料で特に額の定めがある場合は、額の定めがないものとする(一定の額の倍数で定められている場合を除く)(同法2条3項)。

法律で命令に罰金刑の規定を委任している場合で、規定できるとする罰金の最高限度額が2万円に満たないときは、2万円とする(同法3条)。

前科となる刑罰

罰金を科す有罪判決または、略式手続が確定すると、前科として扱われる。

具体的には、罰金以上の刑を受けた者は、一定期間、市町村役場に備置される犯罪人名簿戸籍住民基本台帳ではない)に登載される。また、検察庁の犯歴記録は、道路交通法違反による罰金以下の刑に処された者についても、記録の対象となる。

前科は、一定期間(罰金の場合5年)を経過することにより消滅する(刑の消滅、前科抹消)。前科ありの場合、たとえ不起訴処分となるような小額の窃盗事件や傷害事件であっても、刑事訴追され有罪(これも刑が重くなる)となる。

前科者として登載・記録されると、結果として海外移住ができなくなるといわれることがあるが、諸外国の入国や査証申請の取り扱いにおいて、犯罪経歴証明書(無犯罪証明)の提出を求められることがあり、犯罪経歴があると申請が拒否される場合があるためである。
労役場留置

罰金を完納できない場合は、労役場に留置され、判決で決められた一日あたりの金額が罰金の総額に達するまでの日数の間、例えば略式命令の場合だと、日給5,000円の労務(封書貼りなどの軽作業)に服することになる。労役場留置の期間は、1日以上2年以下である(罰金を併科した場合は3年以下)(刑法18条)また、2年(罰金併科の場合3年)分の日給以上の罰金を滞納している場合は日給が増額される。
未決勾留日数の算入

未決勾留されていた被告人が罰金刑を言い渡された場合に、主文において未決勾留日数を金額換算(1日当たり5,000円が多い)して刑に算入することがある。この場合、算入されなかった罰金の残額のみ納付すればよい。換算した金額が言い渡された罰金額を上回れば、罰金を納付しなくて済む(罰金刑の事実が消えるわけではなく即日納付同等になる)。この手法は実務上、身柄事件で明らかに被疑者の資力が乏しく罰金の支払いが困難とされる事例において、事実関係を被疑者が認めており通常であれば略式命令請求により処理される場合であってもあえて起訴して罰金刑を求刑し、判決時に未決勾留日数を金額換算して刑に算入することにより実際の罰金の納付を求めることなく刑の執行を終えたものとするために用いられることがある[4]
執行猶予

50万円以下の罰金刑が言い渡された場合においては、情状によってその刑の執行を猶予することができる(刑法25条)。もっとも、罰金に執行猶予が付されることは滅多にない。2002年以降では、年間数十万人が罰金判決を言い渡されているが、執行を猶予されたのは年間10人に満たない。
科刑状況

罰金判決が確定した件数は次のとおりである[5]

年総数執行猶予
2000年906,947
2001年884,088
2002年837,1447
2003年784,5152
2004年743,5532
2005年689,9724
2006年650,1415
2007年533,9497
2008年453,0656
2009年427,6005
2010年401,3825
2011年365,4749
2012年344,1214
2013年306,3166
2014年279,2212
2015年274,1994
2016年263,0991
2017年244,7013
2018年222,8417
2019年194,4043
2020年172,3264
2021年165,2742
2022年157,3941

1990年代には年間100 - 120万件で推移していたが、2000年以降は大幅な減少が続いている。2018年に言い渡された第一審判決では、通常第一審(通常手続)が2,503件、簡易裁判所での略式手続が221,992件であり、後者が大半を占めている。罪名別では、交通事犯(道路交通法違反、自動車運転過失致死傷罪等)で81%を占めており、次いで窃盗罪、公務執行妨害罪傷害罪などである[6]
資格制限

医師歯科医師看護師薬剤師などの資格を必要とする医療従事者については罰金以上の刑罰を科せられると免許はく奪(停止あるいは取り消し)および取り消された場合における欠格期間が定められている。
韓国における罰金
刑の内容

韓国の罰金は5万ウォン以上の金銭を徴収する財産刑である(韓国刑法45条)。ただし、刑を減軽する場合は5万ウォン未満とすることができる(韓国刑法45条但書)。なお、5万ウォン未満2000ウォン以上の財産刑は科料にあたる(韓国刑法47条)。

罰金を宣告するときは納入しない場合の留置期間を定めて同時に宣告しなければならない(韓国刑法70条)。
労役場留置

罰金は、判決確定日から30日以内に納入しなければならない(韓国刑法69条1項)。また、罰金の宣告と同時に労役場に留置することを命じることもできる(韓国刑法69条1項但書)。

罰金を納めていない者は、1日以上3年以下の期間労役場に留置して、作業に服務にする(韓国刑法69条2項)。
未決勾留日数の算入

罰金の宣告を受けた者がその一部を納入したときの罰金額と留置期間の日数に比例して納入金額に相当する日数を除く(韓国刑法71条)。
米国における罰金

アメリカ合衆国では有罪と認定された自然人や組織体に対して罰金(Fine)が科されることがある[7]。自然人の場合は保護観察(Probation)や禁錮(Imprisonment)といった刑罰と併科になることもある[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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