罪と罰
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そんなとき、ラスコーリニコフは、マルメラードフが馬車に轢かれたところに出くわす。介抱の甲斐なく、マルメラードフは死んでしまったため、マルメラードフの家に金を置いて立ち去る。下宿に戻ると、郷里から母と妹のドゥーニャが来ていた。ラスコーリニコフは、罪の意識のためにその場に倒れる。母は、息子の無礼にルージンが怒っていることを心配していた。金持ちのルージンが一家の貧窮を救うと期待していたからだ。
中盤
予審判事のポルフィーリーは、ラスコーリニコフが2ヶ月前雑誌に発表した論文の「選ばれた未来の支配者たる者は古い法を乗り越えることができる」というくだりは殺人の肯定であり、あなたはそれを実行したのではないかと探りを入れて来る。なんとかポルフィーリの追及をかわしたラスコーリニコフ。その後、下宿の前で見知らぬ男から「人殺し」と言われ立ちすくむ。しかし「人殺し」という言葉は幻覚で、見知らぬ男はラスコーリニコフに用があったのだった。スヴィドリガイロフと名乗ったその男はドゥーニャが目当てで、「ルージンとドゥーニャの結婚を一緒につぶそう」と持ちかけてくる。ラスコーリニコフはこれを追い返すが、図らずともルージンは「自らの恩着せがましさ」がばれてしまったために、妹の結婚は破談となる。
終盤
ラスコーリニコフは、マルメラードフの娘で娼婦であるソーニャのところへ行き、聖書の朗読を頼んだり君と僕は同類だと言って、ソーニャを不安がらせる。そして、再びポルフィーリーと対決するが、その横で事件当日そこにいたペンキ屋が「自分が犯人だ」とわめき出したので、驚きながらも解放される。ソーニャはマルメラードフの葬式後の会食で、同じアパートに逗留していたルージンの策略により、金銭泥棒に陥れられる。周囲の証言により「ルージンの狂言」であることがわかるが、ソーニャはその場を飛び出して帰宅しまう。ラスコーリニコフは彼女を追いかけ、ついに彼女の部屋で「殺人の罪」を告白する。しかし、隣の部屋に居たスヴィドリガイロフが薄い壁を通して会話を聞いていたのだった。ポルフィーリーが三度現れて「ペンキ屋でなくお前が犯人だ」と主張し、罪が軽くなるので自首することを勧める。一方、スヴィドリガイロフは「ラスコーリニコフの犯罪」をネタに、ドゥーニャに結婚を迫っていた。ドゥーニャはスヴィドリガイロフのところへと現われるが、結局結婚を拒絶したので、スヴィドリガイロフは有り金を周囲に渡したりおごったりしたあと自殺する。
ラスト
とうとう罪の意識に耐えられなくなったラスコーリニコフは、母に別れを告げる。何か恐ろしいことが起こった事だけを悟る母。ドゥーニャの顔はすべてを知っていた。ラスコーリニコフは自殺を考えていたが、ソーニャの力を借りてついに自首する。ラスコーリニコフへの罰は、それまでの善行や自首したこと、取り調べの際の態度などを考慮し、『シベリア流刑8年』という寛刑になる。ラスコーリニコフを追ってソーニャもシベリアに移住し、ラスコーリニコフを見守る。そのことに気づいたラスコーリニコフはソーニャへの愛を確信する。
登場人物
ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ(ロージャ)
孤独な主人公。学費滞納のために大学から除籍され、サンクトペテルブルクの粗末なアパートに下宿している。
ソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードワ (ソーニャ)
マルメラードフの娘。家族を飢餓から救うため、売春婦となった。ラスコーリニコフが犯罪を告白する最初の人物である。
ポルフィーリー・ペトローヴィチ
予審判事。ラスコーリニコフを心理的証拠だけで追い詰め、鬼気迫る論戦を展開する。
アヴドーチヤ・ロマーノヴナ・ラスコーリニコワ (ドゥーネチカ、ドゥーニャ)
ラスコーリニコフの妹。美しく芯の強い、果敢な娘。兄や母の事を考え裕福な結婚をするため、ルージンと婚約するが、ルージンの横柄さに憤慨し、破局する。以前家庭教師をしていた家の主人スヴィドリガイロフに好意を持たれている。
アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフ
ドゥーニャを家庭教師として雇っていた家の主人。ラスコーリニコフのソーニャへの告白を立ち聞きする。マルメラードフの遺児を
孤児院に入れ、ソーニャと自身の婚約者へは金銭を与えている。妻のマルファ・ペトローヴナは3,000ルーブルの遺産を残して他界。
ドミートリイ・プロコーフィチ・ウラズミーヒン
ラスコーリニコフの友人。ラズミーヒンと呼ばれる。変わり者だが誠実な青年。ドゥーニャに好意を抱く。
セミョーン・ザハールイチ・マルメラードフ
居酒屋でラスコーリニコフと知り合う、飲んだくれの九等官の退職官吏。ソーニャの父。仕事を貰ってもすぐに辞めて家の金を飲み代に使ってしまうという悪癖のため、一家を不幸に陥れる。最期は馬車に轢かれ、ソーニャの腕の中で息を引き取る。
カテリーナ・イワーノヴナ・マルメラードワ
マルメラードフの2人目の妻。良家出身で、気位が高い。肺病と極貧にあえぐ。夫の葬儀はラスコーリニコフの援助によって行われた。
ポーリナ・ミハイローヴナ・マルメラードワ (ポーリャ、ポーレンカ)
マルメラードフの娘。ソーニャの妹。
アマリヤ・フョードロヴナ(イワーノヴナ、リュドヴィーゴヴナとも)・リッペヴェフゼル
マルメラードフ一家に部屋を貸している大家。
プリヘーリヤ・アレクサンドロブナ・ラスコーリニコワ
ラスコーリニコフとドゥーニャの母。
ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン
7等文官の弁護士。45歳。ドゥーニャの婚約者。ドゥーニャと結婚しようとするが、ドゥーニャを支配しようとする高慢さが明らかになり、ラスコーリニコフと決裂し、破局する。ラスコーリニコフへの当て付けにソーニャを罠にかけ、窃盗の冤罪をかぶせようとするが失敗する。
アンドレイ・セミョーノヴィチ・レベジャートニコフ
役人。サンクトペテルブルクでルージンを間借りさせている。ルージンのソーニャへの冤罪を晴らした。
アリョーナ・イワーノヴナ
高利貸しの老婆。14等官未亡人。悪徳なことで有名。ラスコーリニコフに殺害され金品を奪われる。
リザヴェータ・イワーノヴナ
アリョーナの義理の妹。気が弱く、義姉の言いなりになっている。ラスコーリニコフに殺害される。ソーニャとは友人であった。
ゾシーモフ
医者。ラズミーヒンの友人。ラスコーリニコフを診察する。
プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナ・ザルニーツィナ (パーシェンカ)
ラスコーリニコフの下宿の大家。8等官未亡人。彼女の娘であるナターリヤ・エゴーロヴナ・ザルニーツィナはラスコーリニコフと婚約していたが、病死している。
ナスターシヤ・ペトローヴナ (ナスチェンカ)
ラスコーリニコフの下宿の女中。
ニコージム・フォミーチ
ラスコーリニコフが住む区の警察署の署長。
イリヤ・ペトローヴィチ
ラスコーリニコフが住む区の警察署の副署長。かんしゃく持ちで、「火薬中尉」とあだ名される。
アレクサンドル・グリゴリーウィチ・ザミョートフ(ザメートフ)
警察署の事務官。ラズミーヒンの友人。
ニコライ
殺人の嫌疑をかけられたペンキ職人。彼の予想外の行動が、この事件をこじらせることとなる。

名前単語ロシア語の意味
ロジオン・ロマヌーイチ・ラスコーリニコフraskol分割 反対 分離
ピョートル・ペトローヴィチ・ルージンluzha水たまり
ドミートリィ・プロコーフィチ・ウラズミーヒンrazum合理性、心、知能
アンドレイ・セミョーノヴィチ・レベジャートニコフlebezit追従
セミョーン・ザハールイチ・マルメラードフmarmeladマーマレード
アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフSvidrigailoリトアニア公爵

ロシア人のフルネームは、名+父称+姓で成り立っている。英語のミスターなどに相当するロシア語: Господин(ガスパジン)等の語もあるが、ロシア人が「◯◯さん」と他人に呼びかける時は「名+父称」で呼びかけることがほとんどで、親しい人への呼び掛けは他のヨーロッパ諸語と同様に愛称形が使われる。そのため人物名の記述は他のロシア文学と同様、会話以外で人物名を述べる時は主に姓だけで書かれ、親しい人からの呼び掛け時は愛称形で、あまり親しくない人からの呼び掛けは名と父称で、その他、フルネームや名だけで記述されることもあり、慣れないうちは人物名の把握が難しい。主人公「ラスコーリニコフ」で例示するなら、愛称形なら「ロージャ」と、名と父称なら「ロジオン・ロマヌーイチ」と、名だけなら「ロジオン」と記述されているが、すべて「ロジオン・ロマヌーイチ・ラスコーリニコフ」その人である。愛称形の呼び名が2つ以上ある人物もいる。主要人物はすべてこの調子であるが、呼び掛けの形によって話し手の立場がわかるため、一部の日本語訳のように名称を姓で統一してしまうと、微妙なニュアンスが失われてしまう。逆に原文通りの人名の記述だと微妙なニュアンスはわかるが、人名の複雑さはロシア文学の初心者を苦しめることになる。そのため読書の際に人名の対照表を用意する者もいる。
文献

最初期の原典訳は新潮社版『世界文學全集 罪と罰』(
中村白葉訳、昭和3年刊)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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