本格的な生産が始まったのは1877年(明治10年)10月10日、北海道石狩市で石狩缶詰所が創業したことによる。初期にはアメリカ人Ulysses S.TreatとTrescott Swert[19]の指導の下、サケ缶が製造されていた。このことから日本缶詰協会はこの日、10月10日を缶詰の日と定めている。当初は缶詰は管詰と綴られた。
明治時代には、主に日本国外向けの輸出用、国内向けには軍需用として生産されていたため、庶民には普及しなかった。当時の缶詰の価格は、1缶が20銭から35銭で、白米1升が7.65銭であったことから、いかに高価な食品であったかがわかる[20]。
1905年(明治38年)に大日本缶詰業連合会が設立されて研究が進み、年間5千トンほど輸出するようになり、第一次世界大戦後の1921年から25年にかけては年間生産量も約2万トンから7万トンへ飛躍的に増加した[21]。
国内で本格的に普及するきっかけは、1923年(大正12年)の関東大震災以降で、アメリカから送られた支援物資に缶詰が用いられたことによるものとされる。
満州事変前後からは外貨獲得のための輸出用や軍用に回されるようになり、1939年には生産量約34万2300トン(1712万函、2億8367万円)、輸出量は17万3000トン(867万函、2億5000万円)を記録した [22][注 3]。
特殊な例になるが、第二次世界大戦時の金属供出を受けて開発された陶製代用品には缶詰も含まれており、蓋付きの陶製容器をゴムで密封したものが「防衛食」という名称で当時は多く流通した。だが、缶詰にする食料自体が欠乏し、やがて製造は打ち切られた[23]。なお、戦後60年以上経過したものを開封してみても、中の食品の品質に問題はなかったという[24]。
戦後は大日本缶詰貿易協会が閉鎖機関に指定され缶詰企業の整理統合も行われたが、1970年代には年間生産量約100万トン、年間輸出量約30万トンにもなった [22]。しかしながら、昭和51年(1976年)から昭和52年(1977年)にかけて決定された200海里漁業専管水域の設定により、それら缶詰の輸出は壊滅的な打撃を受け、約60年の歴史を閉じることとなった[25]。
日本での缶詰の消費量は、日本缶詰びん詰レトルト食品協会によれば406万トン(2017年推計)であった。ただし、缶コーヒー、果汁飲料の缶ドリンクを含むが、缶ビールと炭酸飲料、スポーツドリンク類は除かれている。250g缶相当で一人あたり127缶、ドリンク類を除くと33缶である[26]。レトルトパウチなどの売り上げが伸びており、缶詰の消費量は若干減少傾向にある。
表示については品質表示基準や食品衛生法などの規制を受けている[27]。ラベルなどによる一括表示のほか、缶の蓋に3段からなる表示として「缶詰品名記号」(通称缶マーク)等が打刻されている。缶詰品名記号は元々は輸出規制法に基づく海外への缶詰食品輸出のために記載が義務付けられていたが、1997年3月の輸出検査法の廃止に伴い現在は法的義務が無くなっているものの、主に食品缶詰で慣例的に品名記号が打刻されている場合が多い。缶詰品名記号は上段には原料の種類や調理方法など、中段には賞味期限、下段には製造工場が示される。ただし、品名と工場記号については別に記載されていることから、缶ぶたへは賞味期限のみを表示している製品が多くなってきている[27]。 缶詰の品質を判断するための検査法として、外観検査 外観を検査する際はまず、巻締部の変形に注意する必要がある[28]。ボディーフックやカバーフックの長さが適正で、十分なオーバーラップが確保出来ないなどの不適正巻締がある場合、衝撃によって空隙が生じやすくなる[28]。缶詰に空隙が出来ると、その大きさに関わらず、細菌が缶詰内部へ侵入して腐敗に繋がる[30]。缶詰の内容物が腐敗した場合、細菌が生み出すガスによって内部のガス圧が高まり、缶が膨張する場合がある[30]。巻締部に脆弱な部分があると、そこから液汁が漏れ、悪臭がする[30]。 膨張にはいくつかの種類がある。製造の際に脱気が不十分であったことを原因とする蓋底面の突出をフリッパーという[31]。片面膨張(スプリンガー)は、蓋底の片面が突出する現象で、原因は不十分な脱気、缶材と内容物の化学変化により生じる水素ガス、肉詰過多である[32]。また、缶の両側が膨れることをスウェルという[32]。
缶詰における表示
日本の缶詰の場合
原料の品種名(上段左から第1位、第2位の文字を組み合わせた2文字)
BF - 牛肉
BS - タケノコ
BT - マグロ
CP - クリ
CS - サケ
KZ - 福神漬
MO - ミカン
MP - サンマ
OR - パイン
PW - 白桃
SA - イワシ
調理状態(原則として上段左から第3位の1文字、ただし形態、大小または添加副原料の区別を必要としない調理状態のものに限り第3位、第4位の文字を組み合わせた2文字)
A - 佃煮
JM - ジャム
Y - 果実類シラップ漬け
形態・大小・添加副原料(上段左から第4位の1文字)
L - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(大)
M - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(中)
S - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(小)
T - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(特小、四つ割)
・ - たらばがに、くじら肉、サバ、あわび等のフレーク、みかんのブロークン
: - マッシュルーム、果実、たけのこ等のスライス、アスパラガス水煮の頭無カット
賞味期限表示(中段の表示)
3段の文字列のうちの中段が賞味期限の表示で、「041010」は賞味期限が2004年10月10日であることを意味する。表示には日を省略し、「0410」(2004年10月賞味期限の意味)でもよい。1999年(平成11年)3月31日製造分までは、この表示が製造年月(日)表記のものもある。また、非常に古い缶詰の中には、製造年を下1桁のみ表し、10月製造を「0」、11月製造を「Y」、12月製造を「Z」と表した時代もあった(例:1982年11月30日製造=「2Y30」)。これは製缶機の刻印能力に限界があったためであった。
製造工場(下段の表示)
企業、製造所毎にアルファベット、アラビア数字の組み合わせで原則4文字以内で申請した記号を用いる。申請制度であったため、同記号でも別会社・工場の記号が存在する。
缶詰サイズの規格
日本の缶詰の場合
1号缶、2号缶、3号缶、4号缶、5号缶、6号缶、7号缶、8号缶
平2号缶、平3号缶
かに2号缶、かに3号缶
小型1号缶、小型2号缶
マッシュルーム2号缶、マッシュルーム3号缶
コーン4号缶、コーン7号缶
ツナ1号缶、ツナ2号缶、ツナ2キロ缶
ポケット4号缶、携帯缶、など
検査
外観検査