缶詰
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ビン詰めの欠点を改善するため、1810年イギリスのピーター・デュランド (Peter Durand) が、金属製容器(ブリキ缶)に食品を入れる「缶詰」を発明した[15][16]。これにより、食品を長期間保存・携行することが容易になった。ただし、初期のものは殺菌に問題があり、たびたび中身が発酵して缶が破裂するという事故を起こしている(これは後に改良された)。また、密封用のはんだが多量に含まれており、食べた人が鉛中毒で死亡する事故もあった。

1812年には、ブライアン・ドンキン(Bryan Donkin)とジョン・ホール(John Hall)がデュランドの特許を基にイギリスに世界初の缶詰工場を建設、翌1813年から陸海軍に納入を開始した[17]。当初は手作業によって封をはんだ付けしていたため、一人当たり1日に60?70個しか生産できなかった[17]1833年にはフランスのアンシルベールによって、缶の蓋の周りをはんだ付けし、熱で溶かして缶を開ける方式が考案された。

缶詰は、初期には主に探検家の携行食や船舶用の非常食軍用食として活用された。特にアメリカ合衆国南北戦争で多く利用された。後に一般向けにも製造されるようになり、現在では、災害対策用の備蓄用食品(非常食)としても利用されている。
缶切りの発明

当初、缶切りは発明されず、開封には金鎚(のみ)が用いられ[注 2]、戦場では斧で切ったり銃剣でこじ開けたり、銃で撃って開けたりした[16]。そのため、内容物が固形物に限られ、液状のドリンク類は入れられなかった。1858年、アメリカのエズラ・J・ワーナーにより缶切りが発明されると、液体なども入れられるようになり、内容物のバリエーションが広がった。さらに、その後、缶切りが無くても開けられる様にイージーオープンエンドが発明された。

19世紀の末に缶詰の生産が軌道に乗り、キャンベルハインツのスープのように日常食となり得る品質の製品が現れ始めると、缶詰食は一種のステータスシンボルとなった[18]
日本の缶詰陸上自衛隊の缶詰食(戦闘糧食I型、通称「缶飯」)

日本での初めての製造は、明治4年(1871年)に長崎県で、松田雅典(まつだ・がてん)によってフランス人レオン・デュリー(Leon Dury)[19]の指導の下、イワシ油漬の缶詰の試作が行なわれたとされている[13](この段階では缶詰という言葉は存在していない)。

本格的な生産が始まったのは1877年(明治10年)10月10日北海道石狩市で石狩缶詰所が創業したことによる。初期にはアメリカ人Ulysses S.TreatとTrescott Swert[19]の指導の下、サケ缶が製造されていた。このことから日本缶詰協会はこの日、10月10日を缶詰の日と定めている。当初は缶詰は管詰と綴られた。

明治時代には、主に日本国外向けの輸出用、国内向けには軍需用として生産されていたため、庶民には普及しなかった。当時の缶詰の価格は、1缶が20から35銭で、白米1が7.65銭であったことから、いかに高価な食品であったかがわかる[20]

1905年(明治38年)に大日本缶詰業連合会が設立されて研究が進み、年間5千トンほど輸出するようになり、第一次世界大戦後の1921年から25年にかけては年間生産量も約2万トンから7万トンへ飛躍的に増加した[21]

国内で本格的に普及するきっかけは、1923年大正12年)の関東大震災以降で、アメリカから送られた支援物資に缶詰が用いられたことによるものとされる。

満州事変前後からは外貨獲得のための輸出用や軍用に回されるようになり、1939年には生産量約34万2300トン(1712万函、2億8367万円)、輸出量は17万3000トン(867万函、2億5000万円)を記録した [22][注 3]

特殊な例になるが、第二次世界大戦時の金属供出を受けて開発された陶製代用品には缶詰も含まれており、蓋付きの陶製容器をゴムで密封したものが「防衛食」という名称で当時は多く流通した。だが、缶詰にする食料自体が欠乏し、やがて製造は打ち切られた[23]。なお、戦後60年以上経過したものを開封してみても、中の食品の品質に問題はなかったという[24]

戦後は大日本缶詰貿易協会が閉鎖機関に指定され缶詰企業の整理統合も行われたが、1970年代には年間生産量約100万トン、年間輸出量約30万トンにもなった [22]。しかしながら、昭和51年(1976年)から昭和52年(1977年)にかけて決定された200海里漁業専管水域の設定により、それら缶詰の輸出は壊滅的な打撃を受け、約60年の歴史を閉じることとなった[25]

日本での缶詰の消費量は、日本缶詰びん詰レトルト食品協会によれば406万トン(2017年推計)であった。ただし、缶コーヒー、果汁飲料の缶ドリンクを含むが、缶ビール炭酸飲料スポーツドリンク類は除かれている。250g缶相当で一人あたり127缶、ドリンク類を除くと33缶である[26]レトルトパウチなどの売り上げが伸びており、缶詰の消費量は若干減少傾向にある。


缶詰における表示
日本の缶詰の場合

表示については品質表示基準や食品衛生法などの規制を受けている[27]。ラベルなどによる一括表示のほか、缶の蓋に3段からなる表示として「缶詰品名記号」(通称缶マーク)等が打刻されている。缶詰品名記号は元々は輸出規制法に基づく海外への缶詰食品輸出のために記載が義務付けられていたが、1997年3月の輸出検査法の廃止に伴い現在は法的義務が無くなっているものの、主に食品缶詰で慣例的に品名記号が打刻されている場合が多い。缶詰品名記号は上段には原料の種類や調理方法など、中段には賞味期限、下段には製造工場が示される。ただし、品名と工場記号については別に記載されていることから、缶ぶたへは賞味期限のみを表示している製品が多くなってきている[27]

原料の品種名(上段左から第1位、第2位の文字を組み合わせた2文字)

BF - 牛肉

BS - タケノコ

BT - マグロ

CP - クリ

CS - サケ

KZ - 福神漬

MO - ミカン

MP - サンマ

OR - パイン

PW - 白桃

SA - イワシ


調理状態(原則として上段左から第3位の1文字、ただし形態、大小または添加副原料の区別を必要としない調理状態のものに限り第3位、第4位の文字を組み合わせた2文字)

A - 佃煮

JM - ジャム

Y - 果実類シラップ漬け


形態・大小・添加副原料(上段左から第4位の1文字)

L - かきグリーンピースミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(大)

M - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(中)

S - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(小)

T - かき、グリーンピース、ミカン、桃、さくらんぼ等の大きさ(特小、四つ割)

・ - たらばがに、くじら肉、サバあわび等のフレーク、みかんのブロークン

: - マッシュルーム、果実、たけのこ等のスライス、アスパラガス水煮の頭無カット


賞味期限表示(中段の表示)
3段の文字列のうちの中段が賞味期限の表示で、「041010」は賞味期限が2004年10月10日であることを意味する。表示には日を省略し、「0410」(2004年10月賞味期限の意味)でもよい。1999年(平成11年)3月31日製造分までは、この表示が製造年月(日)表記のものもある。


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