繁体字
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台湾の国字標準字体とは大部分で共通する。
新字形
中国大陸の印刷標準字体の通称。印刷通用漢字字形表(1965年)、現代漢語通用字表(1988年)、通用規範漢字表(2013年)に基づく。権威ある字書・辞書とされる『新華字典』・『現代漢語詞典』に見える繁体字・異体字にも原則としてこの新字形が適用されている。
コンピュータと繁体字
文字セット
Big5
1984年に台湾で制定された文字セット。繁体字圏のデファクトスタンダード。オリジナルである基本セットを特にBig5-1984と称する。
CNS 11643
中華民国の国家規格で、Big5をベースにした文字セット。
GB 12345-90
中華人民共和国の国家規格で、簡体字中国語の基本文字セットGB 2312の繁体字版といえる文字セット。
CJK統合漢字
UnicodeUCSの策定にあたり、中国 (China)・日本 (Japan)・韓国 (Korea) の漢字を統合した文字セット。
GBK
中華人民共和国の文字セットで、GB 2312を拡張し当時のCJK統合漢字をすべて取り込んだもの。繁体字をも含む。
香港増補字符集
香港政府によってBig5の拡張セットとして制定された文字セット。方言字や香港で常用される異体字を中心とする。HKSCS。
GB 18030
中華人民共和国の国家規格で、GBKをさらに拡張したもの。
フォント

繁体字中国語フォントは、Big5-1984を基本文字セットとしてきた。日本で市販される商品は、Big5-1984の範囲にとどまる場合が多い。香港などではフォントメーカーが独自の拡張を施した製品を販売した。Unicodeの浸透とともに、Big5を主としてCJK統合漢字をカバーするものやHKSCSやBig5拡張規格に対応したものもオペレーティングシステムのパッケージやアップデート・拡張機能、市販品、オープンソースソフトウェアとしての流通などを通じて普及している。

一方、簡体字中国語フォントも準拠する文字セットがGBK、GB 18030と拡張を重ねたことにより繁体字をカバーするようになった。中国の国家規格には字体についても規定したものがあり、簡体字フォントは、ビットマップフォントとGB 2312しかなかった時代から中国大陸の字体規範に沿ってデザインされている。GB 18030対応フォントも規格に適合することが求められ、収録されている繁体字の大部分は「新字形」に沿ったデザインになっている(新字形の「奥」「?」が別に含まれている「奧」「?」といった文字には適用されない)。

台湾・香港の両政府とも字体に関する規範に準拠することを積極的に求めることがなかったため、Big5系のフォントが規範に完全に適合することはまれであった。とはいえ、楷書の要素を取り入れる例があり、日本で「明治以来行われてきた活字の字体」よりも、台湾・香港の規範に近いことが多い。

特に2005年ごろから、特に台湾の字体規範に適合したフォントの普及の動きが見られる。Windows Vista以降のMicrosoft Windows微軟正K體新細明體)、OS X 10.11 El Capitan以降のmacOSやiOS 9以降のiOS蘋方-繁〈PingFang TC〉)といったオペレーティングシステムの繁体字中国語標準フォントが国字標準字体に準拠した。AdobeGoogleなどと共同開発したオープンソースフォントの繁体字版思源K體 (Source Han Sans TC)と明朝体に当たる思源宋體 (Source Han Serif TC)は、国字標準字体に対応している。

蘋方には「蘋方-港 (PingFang HK)」、思源K體バージョン2.00以降には「思源K體 香港 (Source Han Sans HC)」という香港字形のバリエーションもある。
対照例示

台湾、香港における標準字体、中国大陸における新字形による繁体字、簡体字のほか、韓国における漢字、日本の旧字体・新字体も参考のために掲げた。日本語では当用漢字以前、必ずしも標準字体が定まっていたわけではない。ここでは日本語において使われることがまれな漢字について、日本語フォントに見られる字体を便宜上新字体として扱っている。

使用ウェブブラウザの仕様やインストール・設定されているフォントなどといった閲覧条件により、正確な字体が再現されない場合がある。以下の条件に適合する場合、意図に沿った表示となる。

日本語・簡体字中国語・韓国語のフォントのほか、繁体字は台湾・香港の標準字体に準拠したフォントがインストールされ有効になっている。

ウェブブラウザが指定された言語属性に従い、言語に適したフォントで表示でき、適切なフォントが設定されている。

特に繁体字中国語で台湾のもの(zh-TW、zh-Hant-TW)と香港のもの(zh-HK、zh-Hant-HK)を区別していること。

上記を満たさない場合はISO/IEC 10646Unicodeで符号位置が区別される?-温・群-羣・衛-衞・?-鋭などの一部を除き、台湾と香港の字体との区別ができない。

表の(青色)の部分は、香港の標準字体が台湾の標準字体との間に相違点が基本的にないことを示す。

以下の世界人権宣言第1条の表示例が一致すれば、台湾欄の漢字は台湾の規範に沿った表示となっている。

国字標準字体使用中のフォント
人人生來自由,
在尊嚴和權利上一律平等。
他們有理性和良心,
請以手足關係的精神相對待。

台湾香港新字形簡体字韓国旧字体新字体
乘(乘)乘乘乘乘乗
亞(亞)亞?亞亞亜
假(假)假假假假仮
冷(冷)冷冷冷冷冷
別(別)??別別別
畫(畫)畫画?畫画
劃(劃)劃?劃劃劃
()?勳勳勲
?(?)????呉
??啓?啓啓啓
圈(圈)圈圈圈圈圏
圖(圖)圖?圖圖図
塵(塵)塵?塵塵塵
()曉曉曉搗
壞(壞)壞坏壞壞壊
奧奧奥奥奧奧奥
廠(廠)廠厂廠廠廠
廣廣廣广廣廣広
強(強)????強
從(從)從从從從従
感感感感感感感
憲憲憲?憲憲憲
??????戸
臺台臺台臺臺台
抬(抬)抬抬擡擡擡
效(效)效效效效効
敘敍叙叙敍敍叙
於於於于於於於
東(東)東?東東東
樂樂樂?樂樂楽
次次次次次次次
?温温温??温
澀(澀)澀?澁澁渋
為(為)為?爲爲為
煙(煙)烟烟煙煙煙
獅(獅)獅?獅獅獅
發(發)發?發發発
益(益)益益益益益
真(真)真真眞眞真
?(?)衆?衆衆衆
祕(祕)秘秘祕祕秘
窗窗窗窗窓窓窓
經(經)經?經經経
群羣群群群群群
肅肅肅?肅肅粛
腦(腦)腦?腦腦脳
?(?)脚脚脚脚脚
臥???臥臥臥
與與與与與與与
舉舉舉?擧擧挙
花花花花花花花
華(華)華?華華華
???烟???
藥藥藥?藥藥薬
處處處?處處処
衛衞衛?衛衞衛
裡裏裏里裏裏裏
見(見)見?見見見
?説説???説
讓(讓)讓?讓讓譲
貝(貝)貝?貝貝貝
車(車)車?車車車
轉(轉)轉?轉轉転
選選選?選選選
錢(錢)錢?錢錢銭
長(長)長?長長長
門(門)門?門門門
雜(雜)雜?雜雜雑
?(?)鷄?鷄鷄鶏
靜靜静静靜靜静
馬(馬)馬?馬馬馬
骨骨骨骨骨骨骨
體體體体體體体
髮(髮)髮?髮髮髪
鬥(鬥)鬥斗鬪鬪闘
鳥(鳥)鳥?鳥鳥鳥
鹽(鹽)鹽?鹽鹽塩
麥麥麥麦麥麥麦
?麪?面??麺
麻麻麻麻麻麻麻
麼麼??麼麼麼
??黄黄??黄
鼻(鼻)鼻鼻鼻鼻鼻
齊齊齊?齊齊斉
齋齋齋?齋齋斎
龍龍龍?龍龍竜
龜龜龜?龜龜亀

朝鮮漢字

独立以来ハングル専用政策がとられた韓国では、漢字の簡略化は公式には行われていない。このことから朝鮮漢字朝鮮語で「??〈漢字〉」)を「繁体字」と呼ぶことがある。Ken Lunde著『CJKV 日中韓越情報処理』(小松章・逆井克己訳、オライリー・ジャパン、2002年)は110ページで「KS X 1001:1992に規定されている漢字は繁体字と考えられる」と述べているほか、共同通信社編著『記者ハンドブック』(共同通信社)第6版(1990年、578ページ)以降第11版(2008年、714ページ)までのように、日本で当用漢字以後一般的には使われなくなった「旧字体」と同様の字体のものを「繁体字」と呼んだ例もある。ただし本項で扱う中国語における繁体字の規範とは用字法や字体に違いがある。字体については康熙字典体を基本としており、中国語の現行規範よりも日本の「旧字体」に近い。
中国大陸と繁体字「簡体字#見直し論」も参照江沢民揮毫:「発展現代化郵政、満足社会需要」。「?(発・發)」は簡体字で、「現(?)・郵(?)・滿(?)・會(会)・澤(?)」は繁体字である。

中華人民共和国統治下の中国大陸では、1955年以降「文字改革」政策の柱として漢字の簡化を進め、簡体字を「規範漢字」としている。例えば、天安門毛沢東の肖像画の両側に建国当初掲げられた有名な「中華人民共和國萬?」「世界人民大團結萬?」の文字は1964年に「中?人民共和国万?」「世界人民大??万?」となった。2000年成立・2001年施行の「国家通用語言文字法(中国語版)」において、繁体字および異体字の使用が認められるのは、文物古跡、姓名中の異体字、書道・篆刻などの芸術作品、揮毫題辞・看板の手書き文字、出版・教育・研究上必要な場合、国務院の関係部門が認めた特別な場合に限定されている[2]

1980年、漢字の長所を科学的に見直すとする「漢字現代化研究会」が北京で発足し、数年後「北京国際漢字研究会」と改称した。メンバーに華僑が多く、漢字をおくれたものと見なす漢字落後論を基調とする従来の文字改革の流れに批判的な立場をとった。研究会は『漢字文化』誌を発行し、手書きは簡体字でよいが印刷は視認性に優れた繁体字により行うのがよいとする「識繁写簡」を主張した。これにより文字改革に肯定的な学者らとの論争が起こった[3]


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