縦書きと横書き
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朝日新聞社が1950年(昭和25年)頃に1ページのみの横組みの内部テスト版を作ったことがあるが、実際に発行されることはなかった[17]。雑誌でも、自然科学や工学、社会学や経済学、言語学・人類学などの分野を除き、本文に縦組みを採用する例がほとんどである。一般向け科学雑誌の『科学朝日』のように、1941年(昭和16年)の創刊時には縦組みで、その後横書き(横組み)に変えながら、1989年(平成元年)に縦組みに戻した例もある。写真やイラストの多いレイアウトに向いていたからだという[18]

文芸書の横組みは、1984年(昭和59年)刊の小峰元『クレオパトラの黒い溜息』が初めてと見られる[19]が、小峰のこれ以外の作品は出版社の要望により、すべて縦組みとなっている[20]1992年刊の吉村達也の『黒白の十字架』も横組みの推理小説で、これはコンテンツと連動してあえての横組みである。今日でも、文芸作品が横組みとされることはまれである。
縦書きと横書きの字体、書体

日本語において縦書きと横書きで字形や組版が異なることがある。
漢字

漢字は、活字体の場合は縦書きのときも横書きのときもその字体に変わりはないが、手書きの字形の場合は異なるケースがある。
仮名

小書き仮名は、縦書きと横書きで書く位置が異なる。縦書きの場合は、通常の文字に比べ右側に書き、多くの場合は右上に書く。以前は前の文字の右下に書くこともあった。横書きの場合は、下に書き、左下にすることも多い。下付き文字のように枠外になることはない。

音引き(ー)は、縦書き時は縦線で、横書き時は横線で書かれる。波ダッシュを用いる場合は、通常縦書きの場合と横書きの場合は90度回転させた上で鏡像にした字形になる。

??のような合略仮名は縦書きのときにのみに用いられる。

くの字点は縦書きのときに主に用いられ通常横書きでは用いないが、への字のように書いたりダッシュで代用することもある。
約物

約物は、縦書きと横書きとで字体が異なるものがある。

句読点は、縦書きの場合は全角枡の右上、横書きの場合には全角枡の左下に書く。

括弧は縦書きの場合と横書きの場合は90度回転させる。

使用する約物を変える場合もあり、横書き時には句読点の代わりにピリオドコンマを用いることがある。また、ダブルクオートを横書きで用いるが、縦書きでは鍵括弧に変更する場合もある。

小数点は、横書きではピリオドを用いるが、縦書きでは中黒を用いる。

ダッシュは、縦書きは縦線、横書きは横線になる。

リーダーは縦書き時には中黒を縦に並べるが、横書きは中黒を横に並べたり、ピリオドを横に並べたりする。
英数字
数字

数字に関しては、横書きでは算用数字を、縦書きでは漢数字を用いることが多いという違いがある。ただし、縦書きでも2?3桁程度の算用数字は漢字・かな1文字分のスペースに横に並べて詰め込むことがあり、これを組数字という。

新聞社や通信社の一部では、縦書きの算用数字化を進める動きもあるという[21]
ローマ字

縦書きの中のローマ字は仮名のようにそのまま書かれることも多いが、90度回転して文字の下が左に向くように書くこともある。
特殊な例としてみられる右横書きバスの右側面の表記例。「貸切」「岩手県北自動車株式会社」「八幡平号」の文字が右横書きで書かれている

自動車船舶など明瞭に前後の概念を持つ対象に文字を書く場合、進行中の読み取りを考慮して右側面に右横書きが用いられることがある。むろん反対側では左横書きであり、左右で書字方向が逆行することになる。しかしながら、レタリング表示がロゴタイプの概念に置き換えられるにつけ、この慣例も廃れつつある。例を挙げると、名古屋製酪株式会社ではトラックの右側面の表記を2018年1月から導入の新型車両には従来の「ターャジス」から「スジャータ」に置き換えるとしている[22]
縦書きと横書きの使い分け

現代日本においては、縦書きも横書きもともに用いられる。

縦書き(縦組み)は、書道作品のほとんど、国語の教科書、文芸小説詩歌戯曲など)、新聞などで用いられる。漫画もその戦前からの伝統を踏襲しており、コマ運びは右横進行、吹出しの台詞は縦書きが標準であるが、左開きに製本された場合、コマ運びだけは、右横進行のことも左横進行のこともある。また、基本的に台詞は縦書きであるが、一部の外国語が話されているというシーンでは、その台詞の吹き出しだけ横書きにする、という漫画作品もある。この場合、一つのページに縦書きと横書きが混在する。

自然科学関連の書籍でも、数式などを用いない啓蒙書では、縦書きの例が依然として多い。社会科学系の書物も、数理経済学、会計学の専門書を除くと縦書きが多い。公文書においては法令や法案、官報、あるいは国会での決議と決議案が縦書きにされる。縦書きおよび右横書き基調の綴じ本は、右開きに製本される。

横書き(横組み)は、例えば、外国語数学科学音楽になどに関する専門書、つまり、横書きの言語数式楽譜を含むような文書のほとんどで使われる。コンピュータ出力もほとんど横書きである。映画・ゲーム情報誌なども、横長の画面写真を扱うレイアウトの性質上、横書きが主流である。左横書き基調の綴本は、左開きに製本される。

シナリオも縦書きで出版されるのが普通であるが、日本のテレビドラマのシナリオ『ケイゾク』(西荻弓絵)は、角川書店から横書きの体裁で刊行された。英語学習用の洋画の対訳つきシナリオ書などは横書きである。

社会科学系の書物では、副島隆彦の『アメリカ政治思想の大研究』は、人名や専門用語などに正式な英語表記が併記されるために横書きで出版された。しかし、文庫化されたときに縦書きになった。

数式を多用する経済学の場合、専門書は横書きの場合も多いが、経済評論などの場合は縦が普通である。『資本論』も縦書きで出版されることが多い。小室直樹の経済学の啓蒙書は、数式を使うが縦書きである。トム・ピーターズの経営書の訳書も縦書きで出版されていたが、「マニフェスト・シリーズ」は横書きである。

学校教育教科書では、国語に属する分野以外はほぼ横書きが用いられる。社会科が縦書きだった時期も1980年代まであったが、その後は横書きになった。

横書き基調の書面の左右端などのスペースに縦書きが用いられたり、逆に縦書き基調の書面の上下端に横書きが用いられることも珍しくなく、こういったことは縦横両用の日本語組版の強みといえる。新聞では、見出しにおいてデザインやレイアウトの都合または強調のために、横書きを使うこともある。またテレビラジオ番組予定欄(ラテ欄)は、原則として横書きである。
文芸作品

文芸作品のほとんどは縦書きだが、ネット小説はデフォルトが横書きであるために横書きで発表されることが多い(なお多くのプラットフォームでは縦書きを選択できる)。またケータイ小説はその性質上ほとんどが横書きとなっている。純文学大衆小説などでも、帰国子女が著者である英語混じりの作品(水村美苗の『私小説from left to right』、黒田晶『メイド・イン・ジャパン』)は、横書きである。そのような事情が無い横書きの純文学小説には、篠原一の『誰がこまどり殺したの?』や福永信の『アクロバット前夜』がある。英語のような横書き言語の訳書であっても縦書きが普通であるが、バロウズの『内なるネコ』(山形浩生・訳)は横書きで出版された。

絲山秋子の『スモールトーク』は、単行本では横書き、文庫版は縦書きだった。

岡井隆の歌集『伊太利亜』は表紙は縦書き、作品は横書きで出版された。

2013年前期の芥川賞(第148回)を横書き小説『abさんご』が受賞した。同賞において、石黒達昌の横書き小説が候補に挙がったことはあったが、受賞したのは本作が初めて。
アジアにおける縦書きと横書き
東アジア

東アジアにおける文字の主流は、漢字の系統、ブラーフミー文字の系統、アラビア文字の系統、ウイグル文字の系統、および近代以降のラテン文字キリル文字に分かれる。


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