総合的な学習の時間
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総合的な学習の時間は小学校第3学年から始まるが、この研究指定校では、第1学年、第2学年の生活科の単元を第3学年以上の学年の学習と系統立てて取り組みを進めている。特にB領域の英語に到達するまでの前段階として、近くに住む留学生からのボランティアを招いて、その国に伝わる遊びを教えてもらったり、給食時に歓談したりしながら人と人との交流を行っている。コミュニケーション力の育成は言葉よりも行動といわれる。地域から学校への評議も活発であり、地域住民による教育支援団体の設立が行われるなど、教育が地域交流を円滑にする機動力になっており好ましい例である。
人間の総合的な理解

以上とは別の京都府京都市の学校[どこ?]では、もともと総合的な学習の時間が始まる前から教科外の時間において取り組んできた、人権を考える学習などを総合的な学習の時間におきかえている。かつては、授業時間のやりくりに苦労があったが、総合的な学習の時間として確保されてからは、教育活動を行いやすくなった。人権教育、国際理解教育、性教育などを学校独自に年間10校時の教育課程を組んで行っている。視覚的な資料を使って導入を試み、最終的には教員の考えを参考にして、子供自身が人間としてあるべき姿を模索していくことが望ましい。

性教育の分野は子供が帰宅後、その日の学習を元に保護者と色々なことを話すことが期待されるが、分野的に未開発であり、低学年から生殖生物学的に教えることなどについて保護者から驚きの声があがることもあり、十分に普及していない。性教育分野の学習目標は、子供たちが自分がどれだけ大切に育てられてきたか(一例として、子供たちの家庭事情に十分配慮した上で、子供に対して保護者に話してもらうなど)、そして自分が将来保護者になることを想定して男女がいたわりを持って家庭を築き、生活を構築することができるような社会の一員となることの大切さが分かることである。
地域の産業の理解

生徒の祖母のほとんどが海女をしており[4]カキ養殖が盛んな地域にある鳥羽市立鏡浦中学校では、1999年(平成11年)からカキの養殖体験を始めたが、2001年(平成13年)から総合的な学習の時間(THE KAGAMIURAと称する)を利用するようになった[5]。これにより漁業体験・干物やカキ料理作り・カキ販売など活動の幅が広がり、2010年(平成22年)には年間を通してさまざまな実習・調査活動を組み込んだ[4]。同年からは地元の漁師が行っている生浦湾のアマモ場の保存・再生事業に、環境教育と絡めて積極的に関わり始めた[6][7]。この活動には、学校の近くにある海の博物館との連携も重要な役割を果たしている[4]

2011年(平成23年)2月17日に、「アマモ場の再生を目指して?漁業者と参加中学生の交流」が海の博物館で開かれ、参加した[6][8]。この会には、的矢湾で同じくアマモ場再生を行っている志摩市立的矢中学校や漁業関係者、三重大学生物資源学部教授ら約120名が参加し、地域間・世代間を越えた交流が行われたほか、鏡浦中学校の生徒が調査結果を大人の前で発表した[6][8]
各教科との連携例

各教科では、予め学習指導要領に学習目標や学習内容が定められているため、扱える教材の範囲には限界がある。例えば、人類文化を知るために世界の多様な文化遺産について触れようとしても、授業内で扱えるのは一部のみである。総合的な学習の時間では、各学校が学習目標や学習内容を定めるため、学習者の実態に応じた教材を扱うことが可能であり、学習者は各教科で学習したことをさらに探求できる。

国語科との連携国語の授業自体も読み取りに何時間もかけるやり方は現在は行われず、話の大筋を理解させた後は、登場人物の会話を学級内で考えたり、物語をペープサートや紙芝居などを使って演じたりする。最近は、絵を描くこともあるが、丁寧に指導しないと描けなかったり、嫌になると描くのをやめたりすることが少なくない。国語の物語の発展的な扱いとして、物語の英語版を読み、まず音声に親しむ。次に英文を簡単に翻訳するが、登場人物の心情などは、学習者の年齢に合わせて、状況に応じた親しみやすい子供らしい訳にした方が良いとされている。例えば、小学校第2学年の教科書に掲載が多い、アーノルド・ローベルの『お手紙』では、2匹のかえるの友情について、「がまくんとかえるくんが7歳だったとしたら」の訳を考えて、訳者としての創造性の可能性を吟味して行う。


社会科との連携検地刀狩や関所などが税制の基礎と安全社会の樹立に寄与したかを調べ学習などを通じて学習することで、日本社会とその安全性について考える。また、宗教による価値観の相違を知ることは、現代社会で異文化を理解していくのに必要なことであるが、このようなことも、国際理解教育などで調べたことをもとに学習者が考えることで、特定の宗教のための宗教教育を行うことなしに学習することができる。


家庭科との連携ボヘミアンビーズとヴェネツィアンビーズを見比べて色の発色の違いは温度と資材の声質(石英のまざりぐあい)、女性熟練工の存在から結婚してからも働き続けることの魅力を小さいうちから知る。

学習内容の停滞

総合的な学習の時間における学習内容に停滞が見られることがある。

総合的な学習の時間で多様な内容を扱うことは、高度な学習に対する指導力の不足、各領域の趣旨に対する理解不足、学習目標の設定に対する意見の違いなどが運営する教員にあり難しい。また、総合的な学習の時間が持つ特徴は、教科の時間とは異なる概念の特別な時間であること、さまざまな教育活動で学んだことを総合的に生かすこと、主体的な活動が行われるよう学習者の興味・関心に応じた内容とすることなどがある。このため、教員には高度な技量が必要とされ、また学習者も十分な指導が必要とされている。そのため、学習内容を簡素化することで教員の負担を減らしてその分を学習者へのきめ細かい充実した学習指導に充てようとする考え方もあるが、内容を簡単にし過ぎると学習者を飽きさせ、総合的な学習の時間の魅力をなくしてしまう恐れもある。

総合的な学習の時間を行う上で、教員の自己探求力と高度な技術を培う自己研修は常に必要である。高度な教材研究と社会における課題を探る力は、教員自身が積極的に研修や社会見学などに参加することから生じるともいわれている。
学力低下論との関わり

一定数の保護者[誰?]は、子供の学力が低下した原因は教育を行う学校にあると主張している。このような立場からは、総合的な学習の時間にも批判的な意見が唱えられ、総合的な学習の時間の方向性を考える上での混乱も生じている。端的に言うならば、総合的な学習の時間は教科学力の向上には寄与しないので廃止すべきであるというのがこうした立場の代表的な主張である。

一方、こうした主張への反論として、教科学力にしか興味を示さない(テストの点数の多寡にしか興味が無い)風潮が強まっている昨今、総合的な学習の時間が担うべき役割は増しているという意見もある。
総合的な学習の効果

総合的な学習の時間が具体的にどのような効果を上げるのかという問題には、以下のような議論がある。総合的な学習に肯定的な意見は、「総合的な学習において教科で学んだことを発展させた内容を学ぶ」「総合的な学習の時間で概要を学んだ後に各教科で詳しく学ぶ」などの形態によって、さまざまな活動を有機的に結びつけることが可能である。また、「課題学習では、個人の力と集団内の総合的なフィードバックがあり、学習の意義を非常に高め合うことができる」「子供の学力は、今後の各教員や保護者の取り組み次第で上昇する余地があり、総合的な学習の時間は、教員や保護者が子供に必要なものを考える上での意義がある」という意見もある。

一方、総合的な学習に批判的な立場からは、「教科学力は客観的評価が可能であるのに対し、総合的な学習の効果は測定不可能である。単なるお遊びの時間ではないか」「学校・教員の違いによる効果の幅が大きすぎる」というような意見が提出されている[誰によって?]。
アクティブ・ラーニング

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2020年度から実施する予定である学習指導要領では、アクティブ・ラーニングという学習方法の取入れが検討されている[9]。この教育方法は、「何ができるようになるか」という点に注目して教育する方法であり、従来の「何を教えるか」という教育方法とは異なる教育方法となっている。この教育方法は総合的な学習の時間に近い考えであるため、総合的な学習の時間を強化する形で導入される可能性が指摘されている[10]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 高等学校学習指導要領の改訂(2018年告示)により、これまでの「総合的な学習の時間」の名称が「総合的な探究の時間」に改められたとともに、総合的な見方・考え方を養いながら生徒自ら主体性をもって問いかけをし課題解決の答えを探究していくことに配慮がなされている。2022年度から実施された。

出典^ a b c d 『なぜ「ゆとり教育」は失敗したのか??学校は「有限」の資源である【後編】』2007年11月30日付配信 日経ビジネスオンライン
^ 岡崎2006、「いま教育現場で何が起きているのか」『世界』2007年2月号等


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