網膜
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ヒトを含む旧世界霊長類狭鼻下目)の祖先は、約3000万年前、X染色体にL錐体から変異した緑を中心に感知する新たなタイプの錐体(M錐体)視物質の遺伝子が出現し、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスのみが3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異が起こり、同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚は果実等の発見に有利だったと考えられる[2][3][4]

中心窩と呼ばれる部位には受容野が小さい錐体が数多く集まり、最も視力が高い領域を形成している。
水平細胞

水平細胞(horizontal cell)は、視細胞とシナプス結合をする神経細胞である。名前のとおり、網膜に水平に軸索が伸び、広い受容野を持つ。視細胞から双極細胞への信号伝達経路に対して水平細胞は抑制的に結合しており、視細胞の興奮活動の空間的な差異が双極細胞で強調されるように抑制的に働く。錐体と水平細胞は選択的なシナプス結合が形成されており、3原色信号を反対色信号に色情報を変換している。
医学
網膜の障害
網膜剥離詳細は「網膜剥離」を参照
網膜振盪

網膜振盪(症)(: concussion of retina、: commotio retinae)は、ベルリン混濁(: Berlin's edema)、外傷性網膜浮腫(: traumatic retinal edema)とも呼ばれ、前方から眼球に強い打撲が加わることにより生じる、眼底後極部における境界不鮮明な乳白色の一過性網膜浮腫をいう。打撲の程度によっては周辺部にも起こるが、通常は黄斑部、視神経乳頭周囲に現れる。

症状として視力の低下があるが、外傷後24時間を経過する頃から始まる浮腫の消退とともに次第に改善する。打撲の程度によっては一過性の浮腫にとどまらず組織損傷が進行して視力低下が回復しないことがあり、その場合には振盪壊死(: concussion necrosis)という。
メタノール中毒

メタノール中毒による症状としては、目の網膜を損傷することによる失明がよく知られている。
黒内障

眼球の機能には異常がないにもかかわらず、網膜が機能しないため重篤な視力障害または失明状態となる黒内障が知られている。遺伝的な原因のほか、網膜への栄養血管の栓塞によるものがある。
人工網膜

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)技術の一環として、眼鏡型などのカメラで撮影した画像情報を、側頭部に取り付けた装置や網膜近くに置いた電極チップで脳に伝える「人工網膜」が開発されている[5]
フィクションの法医学における描写「en:Optography#Optography in fiction」を参照

網膜に見た光景が残るという考えはかつて法医学などの研究対象にもなっていたことから、リラダンが怪奇小説『クレール・ルノワール』(1867年)で初めて使用して以来、ミステリSFなどのフィクション作品ではしばしば実際にある現象のように描かれることがある(例:『4匹の蝿』『永劫より』)[注 2]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 脊椎動物の中でもヤツメウナギ類やトカゲ類の一部は通常の両眼の他に頭頂部に頭頂眼と呼ばれる皮下の奥まった位置に光受容器を持っており、外界の光刺激を検知していると考えられている。頭頂眼と普通の眼はかなり異なる構造を持つ。このため、脊椎動物の通常の眼は頭頂眼と区別するために外側眼と呼ばれる[1]
^ 漫画『ブラック・ジャック』のエピソード「春一番」では、像が残るのは、他人に移植された角膜とされている。

出典^ 岩堀修明『図解 感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ』講談社ブルーバックス、2011年1月20日第1刷発行、ISBN 9784062577
^ 岡部正隆、伊藤啓「 ⇒なぜ赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子が並んで配置しているのか」『細胞工学』第21巻第7号、2002年7月。 
^ 三上章允 (2004年9月18日). “ ⇒霊長類の色覚と進化” (PDF). 公開講座「遺伝子から社会まで」. 京都大学霊長類研究所. 2013年9月20日閲覧。
^ Surridge, A. K., and D. Osorio (2003). “Evolution and selection of trichromatic vision in primates”. Trends in Ecol. And Evol. 18 (4): 198?205. doi:10.1016/S0169-5347(03)00012-0. 
^ 【拡張する脳】第1部 広がる医療応用(4)生き残った神経細胞に機器接続/人工網膜 進む臨床研究:全盲者「光が見えた」『毎日新聞』朝刊2022年6月3日6面(2022年8月25日閲覧)

参考文献

福原武彦・入来正躬 訳『生理学アトラス第2版』(文光堂、1982年)300-315頁

R. W. Rodieck, The First Steps in Seeing, Sunderland, Massachusetts: Sinauer Associates, Inc., (1998)

郷康広・颯田葉子「五感の遺伝子からみたヒトの進化」『
日経サイエンス』2006年03月号

T.H.ゴールドスミス「鳥たちが見る色あざやかな世界」『日経サイエンス』2006年10月号

河村正二「サルの色覚が教えてくれること」『日経サイエンス』2006年10月号

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、網膜に関連するメディアがあります。

網膜スキャン

残像効果

外部リンク

網膜における情報伝達‐双極細胞からの神経伝達物質放出‐[リンク切れ]

網膜 - 脳科学辞典

Retina (英語) - スカラーペディア百科事典「網膜」の項目。

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