本当に絶滅したかどうかを確認することは難しい。
絶滅と判断された生物がのちに発見される例がある。有名な例ではオーストラリアのフクロオオカミは1930年に野生個体と飼育個体の死が確認された時点で絶滅したと判断されたが、1933年に野生個体が捕獲され、3年後に死亡している。それ以降確実な記録はなく絶滅したと考えられてはいるものの、不確実な目撃報告などは断続的にある。ニホンオオカミも、絶滅していると考えられてはいるが、時折目撃例が発表される。
また、実際に生息が確認される例がある。ロードハウナナフシはその最も顕著な事例である。小笠原諸島の固有亜種であるカドエンザガイ
(貝類)は長らく絶滅したと考えられており、環境省のレッドリストでも初版(1991年発行)及び改訂版(2000年発行)でもカテゴリー「絶滅(種)」で掲載されていた[4]。しかしながら、後に生息が確認され、2007年に発行されたレッドリストではカテゴリー「絶滅危惧I類」に修正されている[5]。一方、最初からその種が存在しなかったのではないか、とされるケースもある。ミヤコショウビンは1887年に宮古島で一羽捕獲され、それを元に新種記載されたが、その後一切の捕獲例がなく、絶滅したものといわれているが、実はミクロネシア産のアカハラショウビンが迷鳥としてたまたま飛来したもの、あるいは標本の保存中の事故で混乱した結果ではないかとの説がある。クマムシ類のオンセンクマムシは温泉から発見されたこと、単独で一綱を立てられている等、特異な種であるが、これもその後個体が確認されていない上、標本の現物も残っておらず、近年類似種が見つかってはいるものの、現状では疑問視されている。また近年、絶滅したと考えられていたタスマンアオツラカツオドリのDNAが、近縁種と考えられていたアオツラカツオドリのDNAと一致し、同一種であると判明した。これは、考古学者が雌の化石と雄の骨を区別せずに比較していたために起こったことである。 地球の歴史を調べれば、時代によってさまざまな生物が生存していたことがわかる。これは言い換えれば、さまざまな生物が過去に絶滅してきたことを意味する。地質時代の時代区分は、基本的に化石資料によって決まっているので、時代区分でそういった生物の絶滅が起こっているわけである。ただし、それがその個体群の絶滅を意味するのか、進化によって形が変わったことを意味するのかは判断の難しいところではある。 さまざまな化石資料によると、そういった散発的な絶滅とは異なり、多くの分類群にまたがる、大規模な絶滅が起こった時代があることがわかっている。中生代白亜紀の末に恐竜が全滅したことは有名だが(K-T境界)、このとき、海中でもアンモナイト・イクチオサウルス・プレシオサウルスなど、多数の分類群が絶滅している。理由として、小惑星衝突説、被子植物繁茂説など諸説紛々としている。また、古生代ペルム紀末の大絶滅(P-T境界)は、それよりも規模の大きいものだったと言われる。原因は気候の大きな変動とも言われるが、詳細は不明な点が多い。 多くの動物化石に見られる傾向として、時間を追って次第に多様化し、たいていは大型化し、角があればそれも立派になり、その頂点でその系統がほとんど死滅するような型がいくつもの分類群に見られる。テオドール・アイマーはこれを生物自身に一定方向へ進化する性質が生まれると、自分でも止められなくなり、絶滅に向かうのだと考え、「定向進化説」を唱えた。 有史以降の生物の絶滅は、人間の活動が原因となる場合が多い。特に大航海時代以降、人や物品の移動が大きくなってからは世界的な規模で起こるようになった。もっとも、西洋人の影響のないところでも、ニュージーランドでジャイアントモアなどの鳥類が絶滅している。 絶滅に至る過程やその原因はさまざまである。直接の狩猟の対象となって全滅に至ったもの(ステラーダイカイギュウ・リョコウバト・オオウミガラスなど)、害獣駆除などの名目で殺されたもの(フクロオオカミ、ニホンオオカミなど)、ペット用に乱獲されたもの(ゴクラクインコ、ミイロコンゴウインコなど)人間が持ち込んだ他種の生物の影響によるもの(ドードー・スティーブンイワサザイなど)、人間の影響で生息環境を壊されたもの(クニマスの田沢湖個体群・ガルハタネズミ・ブランブルケイメロミスなど)などその理由はさまざまであり、また複合した原因によることも少なくない。もちろん原因不明のものも数多く存在する。野生ウマの一種ターパンは、生息地近くの牧場から家畜の雌ウマを連れて行き自分のものにした結果、害獣として殺されるとともに家畜ウマとの混血が進んで絶滅した。 海洋島や独立した水系では、環境に特化した固有種により安定した生態系が維持されていることがあり、些細なきっかけで生態系のバランスが崩れる場合がある。他の場所から生物(特にネコ・ネズミなど)が持ち込まれることで、在来の固有種がほとんど全滅に近い被害を受ける(あるいは本当に全滅する)場合があり、注意を要する。
地質時代の絶滅
有史以降における絶滅