「絶歌」が公金で購入すべき書籍なのか、購入を逡巡する図書館が多い中で[24]、6月29日、日本図書館協会は「図書館の自由委員会」の西河内靖泰委員長の名義で、「『図書館の自由に関する宣言』は、収集の制限を首肯しない」「本件は[頒布差し止めの司法判断があることなど]の提供制限要件には該当しない」との見解を公表した[25]。また、西河内は「社会的に関心が高く賛否両論のある本。図書館が、あたかもその本が存在しないかのように振る舞ってしまうと、議論自体を覆い隠すことになる」と指摘した[24]。「図書館の自由に関する宣言」は「図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない」とする基本理念を掲げている[24]。
識者の反応
碓井真史(社会心理学・スクールカウンセラー・新潟青陵大学大学院教授)
Yahoo!ショッピングで入手し、一気に読んだ。出版は、「正義」に反する。しかし、読後、しばらくは誰とも話したくないと感じたほど心が揺すぶられた。殺人時、遺体損壊時の凄惨な記述はない。動物虐待のシーンは、ぞっとするほどグロテスクだ。少年時代の異常な性行動も赤裸々に語られるが、これは猟奇的な本ではない[26]。
長谷川豊(元フジテレビアナウンサー)
私は理解をしたい。この本は世に出してよかったと思える内容になっている。少年が当時の体験や心情をしっかり思い出し、過ちから逃げずに向かい合っている。その体験は極めて特異だが、紡ぎ出される心情、考え方は貴重なサンプルだ。被害者遺族に事前連絡をしなかった点については「仁義を通すべきだった」とは思うものの、それを考慮しても読む価値があり、遺族にもいつの日か読んでもらいたい[27]。
武田鉄矢(俳優)
少年が犯す犯罪をひもとく上での貴重な例だ[27]。
上祐史浩(元オウム真理教幹部、「ひかりの輪」代表)
自分自身が過去の反省と共に、精神病理的な犯罪の心理や原因の研究はしたいため、読んでみたい。出版社の収益や著者の印税の一部を被害者賠償にあてる仕組み作りの必要性を感じる[27]。
関連項目
表現の自由
サムの息子法 - ニューヨーク州で制定された犯罪加害者が自らの犯罪物語を出版・販売して利益を得ることを阻止することを目的とする法律。
「少年A」この子を生んで…… - 少年Aの両親による手記。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 太田出版公式サイトでは6月11日発売としている。
^ ホームページ上でも本の内容自体は表示されるが、予約も受け付けていない。
出典^ 太田出版 代表取締役社長 岡聡 (2015年6月17日). "『絶歌』の出版について". 太田出版. 太田出版. 2023年10月29日閲覧。
^ 「神戸事件「絶歌」増刷へ 加害男性の手記、販売自粛の店舗も