絶歌
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6月22日、兵庫県知事の井戸敏三は、定例会見にて兵庫県立図書館が「遺族感情人権に配慮する」などの理由から、学術研究を目的とした[14]館内の閲覧のみとし貸し出しを行わない制限を決めたことについて「慎重を期したやむを得ない措置」との見解を示したが、「被害者の遺族が抗議していることは知っているが行政機関が主体的にタッチする話ではなく、良識ある読者が個々に判断すべきこと」とした[15]
神戸市
神戸市立中央図書館は過去の対応に参照し、「今回も事件があった市の図書館として判断したい」としており、この書籍の購入や閲覧に関する方針を協議していたが[11][16]、6月23日に神戸市長の久元喜造神戸市立図書館11館で手記を購入しないことを発表した[17]
明石市
神戸市の隣市である、明石市市長の泉房穂は、6月19日、手記の出版を「遺族を傷つける許されない行為だ」と指摘し、同市の犯罪被害者等支援条例に基づき、市内の書店や住民に手記の販売・購入について「配慮をお願いする」と述べ[18]明石市立図書館では手記を購入しない方針を明らかにした[18]。これに対し、憲法学が専門の神戸学院大学教授の上脇博之は、被害者遺族に知らせずに出版した経緯には問題点があるが、「出版後の検閲との誤解を与えないよう、市は要請に強制力がないことを強調すべきだ」と強く非難した[19]
滋賀県
滋賀県立図書館では、6月18日の購入から制限なしに貸出を行っていたが、6月24日から20歳未満の利用者への貸出を制限している[20]。本書について、滋賀県教育委員長は利用者からのリクエストがあったことを挙げ、「図書館で収集、保存すべき書籍」との判断を示した[20]
大阪府
大阪府立中央図書館は、資料提供が図書館の役割であると主張し、年齢制限なしに貸し出している[13]
大阪市
9月8日、大阪市教育委員会は、大阪市立図書館での本書の扱いについて、青少年への影響を考慮し、閉架書庫に置いたうえで、18歳未満の利用者への閲覧・貸出を制限することに決めたと明らかにした[14]
徳島県
徳島県立図書館では、館内の「資料収集委員会」で検討した結果、「選定基準」等に反する事項がないことから購入した[21]
徳島市
徳島市立図書館では、徳島市教育委員会社会教育課と協議の上、所蔵しないことに決定した[22]
愛媛県
愛媛県立図書館では、図書の選定基準に基づき手記を購入しないと明らかにした[23]
日本図書館協会の見解

「絶歌」が公金で購入すべき書籍なのか、購入を逡巡する図書館が多い中で[24]6月29日日本図書館協会は「図書館の自由委員会」の西河内靖泰委員長の名義で、「『図書館の自由に関する宣言』は、収集の制限を首肯しない」「本件は[頒布差し止めの司法判断があることなど]の提供制限要件には該当しない」との見解を公表した[25]。また、西河内は「社会的に関心が高く賛否両論のある本。図書館が、あたかもその本が存在しないかのように振る舞ってしまうと、議論自体を覆い隠すことになる」と指摘した[24]。「図書館の自由に関する宣言」は「図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない」とする基本理念を掲げている[24]
識者の反応

碓井真史(社会心理学・スクールカウンセラー・新潟青陵大学大学院教授)
Yahoo!ショッピングで入手し、一気に読んだ。出版は、「正義」に反する。しかし、読後、しばらくは誰とも話したくないと感じたほど心が揺すぶられた。殺人時、遺体損壊時の凄惨な記述はない。動物虐待のシーンは、ぞっとするほどグロテスクだ。少年時代の異常な性行動も赤裸々に語られるが、これは猟奇的な本ではない[26]

長谷川豊(元フジテレビアナウンサー
私は理解をしたい。この本は世に出してよかったと思える内容になっている。少年が当時の体験や心情をしっかり思い出し、過ちから逃げずに向かい合っている。その体験は極めて特異だが、紡ぎ出される心情、考え方は貴重なサンプルだ。被害者遺族に事前連絡をしなかった点については「仁義を通すべきだった」とは思うものの、それを考慮しても読む価値があり、遺族にもいつの日か読んでもらいたい[27]

武田鉄矢(俳優)
少年が犯す犯罪をひもとく上での貴重な例だ[27]

上祐史浩(元オウム真理教幹部、「ひかりの輪」代表)
自分自身が過去の反省と共に、精神病理的な犯罪心理原因の研究はしたいため、読んでみたい。出版社の収益著者の印税の一部を被害者賠償にあてる仕組み作りの必要性を感じる[27]
関連項目

表現の自由

サムの息子法 - ニューヨーク州で制定された犯罪加害者が自らの犯罪物語を出版・販売して利益を得ることを阻止することを目的とする法律。

「少年A」この子を生んで…… - 少年Aの両親による手記。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 太田出版公式サイトでは6月11日発売としている。
^ ホームページ上でも本の内容自体は表示されるが、予約も受け付けていない。

出典^ 太田出版 代表取締役社長 岡聡 (2015年6月17日). "『絶歌』の出版について". 太田出版. 太田出版. 2023年10月29日閲覧。
^ 「神戸事件「絶歌」増刷へ 加害男性の手記、販売自粛の店舗も」『日本経済新聞』、2015年6月18日。2023年10月29日閲覧。
^ a b c d e f g h i j k l m 「被害者遺族への2億円賠償はどうなっているのか?少年A「手記」出版 禁断の全真相」『週刊文春』第57巻第24号、2015年6月18日、22-29頁、ASIN B00Z7LP43U。 2015年6月25日号。
^ a b 「加害男性から遺族に「絶歌」 神戸殺傷手記 読まず受け取らず」『読売新聞』、2015年6月23日、東京夕刊、12面。
^ 「加害男性から手紙 ○○さんも拒否 神戸殺傷」『読売新聞(東京朝刊)』、2015年6月24日、34面。記事名に遺族の実名が含まれているため、この箇所を伏字とした。
^ 「「手記出版、素性明かさないのは卑怯」 神戸連続殺傷、被害女児の母親語る」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年7月10日、東京朝刊、38面。
^ a b c 栗原裕一郎「元少年A『絶歌』について」『文學界』第69巻第8号、2015年8月、196-199頁。 
^ 「 ⇒神戸児童連続殺傷:遺族の抗議文全文」『毎日新聞』毎日新聞社、2015年6月13日。[リンク切れ]
^ 「「GLAY」HISASHI、「元少年A手記」の表紙写真投稿 コメント欄に批判が相次ぎ、画像削除」『J-CAST』、2015年6月11日。


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